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十九話 三日目 死ぬまでの経緯と情報収集


〝 30年前のあの日

燃えさかる屋内で俺はナイフの様な物を背後から刺され 死を待つ地獄を味わわされた

運が良かったのは あの子宛ての手紙を玄関近くの棚に入れて置いたことくらいだったな 〟


「その犯人があの榊葉町長……」


〝 今となっては目的も分からなかった…… 貴女に直接聞きに行かせるのも危ない橋だしな 〟


「じゃぁ犯罪の動機も分からず仕舞いなんですね?」


〝 まぁ私の身の上話なんてあの子が言ったので殆どだから 今度は〝谷下先生〟が質問してはどうだ? 〟


「……何故あなたも〝先生〟呼びなんですか?」


〝 数多の時を流れ生きようとも 貴女は必ず誰かからそう呼ばれていた 〟


「……そう なんですか?」


〝 別に今の状況も特殊ではない 記憶がリセットされた時はこうやって

私という〝あらすじ亡霊レジュメゴースト〟から前情報を聞き出していたんだよ 〟


「……それってなんか急展開ですね」


〝 二周目で私から聞き出すのは結構早い方だぞ? 自分を誇ってはどうだ? 〟


「はい…… じゃぁ素直に順を追って質問します!!

まずありったけの思いを込めて一つ目!!

この世界はどうなってるんですか?! なんで私だけ…… 無事ぃ(?)なんですか?!!」


〝 知らん!! 〟


「えぇ……」


〝 はい次! 次の質問! 〟


「……じゃぁ二つ目

あなたの姿を何故私は視認出来るんですか?」


〝 死人だけに視認ってかぁ?! ……失礼

おそらく貴女が野良猫を埋葬したからだろうな そして私を含めて墓の前で手を合わせてくれた

死んだ者は次々忘れられ 成仏か消滅かの二択によりこの世から旅立つ

未練も強い私は怨霊 自分に気付いた誰かに取り憑いて殺してしまうのは存在として宿命なのだろう 〟


「夜ですよぉ! 怖いぉ! ……大家さんは見えていたんですか?」


〝 それこそ昔の話だが ちゃんと見えていたよ 会話もしてた

……ただ結局 あちらからしたら自分が悲壮と妄想で作り上げた幻程度にしか思ってなかったんだろうね 〟


「……今は?」


〝 分からない あの子も歳だからねぇ

近くにいて生気を吸い続けると彼女の身も持たないから 私の方から離れていたんだよ

目を合わせるとより愛おしくなるのであの子の視界に入らない程度にね 〟


「え? え? もしかして私…… 今生気吸われてるの?!」


〝 ハッハッハ!! 当たり前田のクラッカー!! 〟


谷下は膝を摺って徐々に死人から後退した


「じゃぁ三つ目

今までも私はどんな行動をしていたの?」


〝 皆まで覚えてないなぁ……

榊葉に悟らせる前まではハナビを打ち上げていたね

後は…… 自分で言うと照れるのだが……

私とあの子をまた引き合わせてくれる機会を作ってくれた

それとあとは 〝黒猫を一晩中守っていたり〟〝島神から全力で逃げたり〟

様々なイベントを経て思いも寄らぬ協力者が現れたりとイベントは尽きなかったな! 〟


「…………」


〝 ん? どうした? 〟


「四つ目の質問…… 〝記憶が無くなる時〟ってどんな時なの?」


〝 ……まず谷下先生は時間を戻す鍵は何だと思っているんだい? 〟


「あっ…… でもその仕組みは死人さんも分からないんですよね?」


〝 どうしてそんな力が目覚めたのかは分からない

だが発動条件は君自身の観察からの報告で…… ついつい笑ってしまった 〟


「え……?」


〝 君は世界が終わる傍ら 何をしていた? 〟


「えっ…… えっ?!」


谷下は思い出せなかった 死の間際なんてそうそう思い出せもせず


〝 君はその時〝寝落ち〟たのさ 〟


「……まさか 寝ることがループの要因?!!」


〝 もちろん寝ずに死んだら記憶がリセットされる

ホントにどういう仕組みなのか知らないが 君も薄々思っているのではないか?

世界を救えるのは唯一行く末を知る自分だと… 〟


「考えましたけど…… でも何百回もループしてる訳ですから 当然簡単じゃないんですよね?」


〝 そうだ…… 私も何度も終末の日にお前を寝させる事に努力してみた

貴女が死んだその後は 正真正銘の地獄だったよ

苦しみは長く続きはしなかった 自分を忘れてくれない人間がいなくなったら霊は消滅するだけだからな 〟


「……ハァ」


谷下はあぐらを組んで天井を見上げた


「なんか…… 話し合うだけなら全然怖く無いですね」


〝 ……そうだな 故に今は心地良い 〟


「でも実際に目の前で現実になったとき すごく怖かった……」


脳内で映像で出てくる真っ赤な終末

その時は酔っていたとはいえ よく眠れたなと谷下は一人で笑ってしまった


「死人さんも消滅したら二日前に戻るの?」


〝 そうだ…… あのお墓にな 〟


「死人さんは世界の終わりについてどう思っているの?」


〝 それについては今度話す 今と関係あるのか決めつけられない〝領域外の私情〟だからね 〟


夜も更け

谷下は布団に入り 死人は部屋から出て行こうとした


〝 とにかくこれからまた記憶を紡いでいく訳だから 榊葉には気をつけろよ 〟


「はいはい…… お休みなさい」



ーー死人さんも黒猫のカタも

榊葉やえりちゃんに注意しろって言ってるけど……

なんか嫌だなぁ……



〝 ママはさぁ…… 終わりコレを見るの 何回目?  〟



ーー思い過ごし…… だよね?




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