政略結婚
結局、その後のクラウドとの押し問答にルティーナは勝てず自分の宮殿に戻った。
部屋でお茶を嗜んでいるとローザが深妙な顔で部屋に入ってきた。悪い知らせだと察しルティーナはメイド達を下がらせ人払いをした。
「ローザのその表情だと予想通りの神託だったのね」
「ええ、神の愛しきた人だと……」
「聖女でなくて、愛しき人?」
「愛しの子とはつまり聖女になる資格のある方の事です。本来、聖女とは功績を残した者の称号の事、神に与えられた聖属性魔力が高いとはいえ、何もしなければ聖女にはなれません。しかし、神の神託を受けた時点で神からの使命を与えられます。神からの指名受ける事で私達、教会では聖女と呼んでいます」
「では、アルテシア令嬢は聖女だと言うのね」
「はい、その通りでございます。神託が下りた後、やはり教会と国王陛下の意見が割れてしまい、そのまま国王陛下に押されてしまい明日にはアルテシアは王宮へ戻られます」
「待って!ローザ、神託が下ったのに神の使命をはたすならば神殿に要るべきよね」
「我々、教会側も反論いたしましたが、国王陛下が主張するのが、アルテシア様のお持ちの力は、神力ではなく聖属性魔力だと言う事です。魔力の持ち主が神殿で使える事は懸念されていますから……」
「魔力は聖なる力を汚すだったかしら?」
「左様でございます」
「魔力と神力を両方を持つ人は今までいないものね。アルテシア令嬢は今は、侯爵家にいらっしゃるの?」
「ええ、王宮に来られると当分、ご実家に戻れませんので、今夜は家族水入らずで過ごされる事をアルテシア様が強くご希望された事です」
ルティーナは眉を潜めた。アルテシアが実家に過ごす事を希望した事に不思議に思った。アルテシアが家族と過ごしたいとは本当の事なのであろうか?
舞踏会でのアルテシアと夜会でのロレーヌ侯爵家を見ているとアルテシアには別の思惑があるような気がする。
王宮に戻れば恐らくアルテシアは以前より厳重に監禁されるであろう。
侯爵家はアルテシアにとって居心地いい場所だったのであろうか?王宮での軟禁生活の際でも実家に帰る要求はなかったと聞いている。
王宮での夜会はアルテシアは次期王太子妃でもあるから出席はしてる。しかし、いつも体調が悪い理由で途中で席を外すが…。ルティーナは、アルテシアがロレーヌ侯爵や夫人、リリアン令嬢と話したところを見た事がない。
「ねぇ、ローザ、アルテシア令嬢は何処かにお逃げになる事はないかしら?」
「侯爵家から逃げる時、言っているのですか?それは無理です。今晩も王宮より騎士がロレーヌ侯爵家に派遣されてますから警備も強化されてますから」
「でも、それは外からの侵入者の為でしょう。ローザもそうだけどアルテシア令嬢が逃げるわけないと思っての警備でしょう?なんだか明日、アルテシア令嬢が王宮に来るか楽しみになってきたわ」
「楽しみなんて…ルティーナ様は悪ふざけは悪い癖ですよ。それより、ご自分のご心配をして下さい」
「私の心配?」
ローザは女性であっても第二神殿騎士、眼光は鋭い。ルティーナも口には出さないが少し反省する。
「実は文官から情報なんですがルティーナに縁談が持ち上がっているようです」
ルティーナは天井に顔向け少し考えてローザの顔見て笑顔で言う。
「恐らく… ラーダス国とサーネル国と、言ったところかしら?」
ローザは言い当てられた事に驚いた。
「左様でございますが何故、それを…」
「あら、それぐらいの事、見当が付くわ。ラーダス国は、軍事力に関して優れているものね。お父様が好きそうな国だわ。バガラル国でも攻め込みたいのでしょう。サーネルはラーダス国の王太子妃、サーネル国王の第三王女を守る為でしょうね」
「ルティーナ様の縁談がラーダス国の王太子妃を守る事になるのですか?」
「ラーダス国の王太子は私に言ったの、私が嫁ぐなら正妃の座を開けるとね。お父様やアッシュレお兄様は私を正妃にさせたいのでしょうね。その方がアルターナが優位に立てるものね」
「ルティーナ様は、それでいいのですか?」
「いいも何も、私が他国へ政略結婚させられる事は、生まれた時から決まってるのよ。今更、慌てないわ。正妃として嫁げばきっとクラウドお兄様の役に立てると思うの。ただ、クラウドお兄様がこの話を聞いてどう思うか心配ね」
ローザは何も言わなかったが、ルティーナを悲しそうな顔で見つめる。
「ローザ、そんな顔しないでこれは王女として生まれたのなら当たり前の事なのよ。アルテシア令嬢も婚約者の時はアッシュレお兄様を受け入れる覚悟できてたと思うわ」
ローザはルティーナに挨拶をし部屋を出る。
「ルティーナ様に神の御加護がありますように」
そして、明日を迎える。