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聖女

ルティーナは、アッシュレとアルテシアのダンスを踊った時のアッシュレは執拗に彼女を捕らえていた事を見逃さなかった。だから、今回の婚約解消も彼の本意とは違うのであろう。アッシュレが一度手放した事はルティーナも見逃さないつもりである。

アッシュレは次にアルテシアを捕まえたらもう2度、手放そうとはしないだろう。


その前にルティーナはアルテシアをアッシュレから遠ざけたかった。

アルテシアの悲しいに溢れた顔が忘れられなかった。


かと言って、ルティーナの保護をアルテシアが望んでいるとはルティーナも思ってはいない。

ルティーナはもう一度、アルテシアと会って話したかった。


そして、今日、アルテシアは国王との謁見で婚約解消を言い渡された。


ルティーナが驚かされたのが、当日中にアルテシアが侯爵家に戻った事だった。例え、短い間でも婚約者としても一切、未練が無かったように去っていった。


「アルテシア令嬢は、ただ嘆くだけの令嬢では無かったみたいね」


と、ルティーナがボヤくとローザがルティーナに人払い願い出た。


「ルティーナ様、お伝えしようか、悩みましたが…実は、明日、アルテシア様はアストラに教皇猊下より聖属性魔力を測られる事になりました。これは、まだ、国王陛下にも内密の話です。明日の朝、ご伝達があるかと…」


「アルテシア令嬢に魔力があったっていう事なの?アッシュレお兄様は何故、気がつかなかったのかしら?」


「勝手な推測なのですが、恐らくアルテシア様は結界を張っていたのかと、アストラ教皇猊下には結界などは通じませんので、本日偶然、教皇猊下が気付かれたようです」


「婚約解消の矢先にねぇ。明日のアッシュレお兄様の嬉しそうな顔が思い浮かぶわ。今日のうちにアルテシア令嬢を保護出来ないのかしら?」


「侯爵令嬢ですので、無理だと思います」


「では、国王陛下に内密にする事は出来ないのかしら?」


「それが……神殿では、聖女様ではないかと明日、神託が下されるのでは、と騒ぎになっていまして…」


「それは、大変な事だわ。そんな神託が下ったら…」


「教皇猊下と国王陛下の元での聖女様の奪い合いになりましょう」


「この事はアルテシア令嬢は知っているの?」


「神殿での内密の話ですから…」


アルテシアが聖女で尚且つ、王太子妃になればあの国王とアッシュレを玉座から引きずり下ろすのは益々、難しくなる。

アルターナの国王は王宮の家臣も国民も力で押さえつけている所があるので表向きは忠誠を誓う者がいても腹の内ではよく思わない者が多い。しかし、アッシュレは内面を隠せる人間なので極近い者しかあの性格は表に出さない。

アッシュレに聖女と言う揺るぎなきものが、妃となれば、もう、アストラ教皇も立ち打ちは出来ない。


教会側もアルテシアを王太子妃にするのは拒むであろうが、侯爵令嬢である。侯爵も派閥は王族派。アルテシアの婚姻は免れないであろう。


「教会側も早急に聖女の誕生を確信し、神殿にお迎えしたいのですが…」


「責めて、アルテシア令嬢が修道院に入ってからだったら私にもチャンスがあったのに…」


ルティーナもローザもなすべき事がなくこれから起きる事を神に託すしか無かった。 


そして翌日、王宮は慌ただしかった。ルティーナはアルテシアの魔力の件で王宮が浮き足立っている事がきみが悪かった。昨日はさっさと追い出すよにアルテシア侯爵家に返して今日は、みな何かを期待している。


ルティーナはクラウドの元へ行った。どうせ、国王もアッシュレも神殿に行って留守だ。クラウドの幽閉されている塔では誰にも邪魔されない。


「クラウドお兄様、ご機嫌よう」


クラウドはいつものように笑顔で出迎えてくれる。今日は見張りと言う名の護衛も少ない。いるのは神殿からの王宮に潜り込んでいる密偵の騎士だけだった。


「今日は、王宮が騒がしい、余程、アッシュレご騒いでいるようだ」


「あら、クラウドお兄様もご存知?」


「あぁ、全く興味ないがな。アッシュレがご令嬢にご執心であるうちは俺も自由だ」


「また、クラウドお兄様は城から抜け出しているのね」


「遊んでいるわけではない。でも、ルティーナが望むなら一度ぐらい連れ出してやるけど……」


ルティーナはクラウドを睨みつけた。


「そんな事しては駄目です!私を外に出した事がもしお父様やアッシュレお兄様しれたら…。そんな事、私は望んでいません!」


「ルティーナ…」


ルティーナは幼い日に自分のせいでクラウドが更に虐げられた日の事を思い出す。


「お兄様、約束して下さい。私の為に自分を犠牲にする事は絶対にしないで下さい」


「急に何を言う?そんな事、約束できるわけないだろう?」


クラウドは何も言わないが国王と王太子の失脚の準備を着々と進めている。ルティーナは幼き日のように自分がクラウドの足手まといになるのを恐れていた。


ルティーナはクラウドの返事は分かっていたが、それでももし、自分を見捨てても恨まない、それどころか喜んで命を差し出してもいい事を知って欲しかった。

クラウドはルティーナに聞く。


「ならばルティーナ、何があっても自分が生きる事だけを考えると約束するなら約束しよう」


「それは…」


「では、俺は約束しない」


ルティーナはクラウドを恨めしそうな顔で見つめる。


そして、その日、アルテシアは神の神託を受けた。



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