王子を殺した男
ルティーナが目を覚ましたのは、その日の夜だった。
ローザが心配そうに覗き込む。
「ルティーナ様、お加減はいかがですか?」
ルティーナはクラウドが死んだ事の報告を思い出す。
「ローザ…お兄様は本当に死んでしまったの?ねぇ、本当なの?何かの間違いではないの?」
ルティーナは気力を失っていた。それだけを言葉にするのが精一杯だった。泣いてしまえば全てを認めるようで泣くのを我慢した。
「恐れながら、伝達ではクラウド殿下は亡くなられたと確かに言っていました。死因は毒殺だと犯人も捕まっています。その者は間もなくアルターナへ送られる来るかと思われます」
「やっぱり、夢ではないのね…」
ローザは迷った顔して言った。
「ただ…気になる事があるのですが…」
「何?」
藁にもすがるルティーナがローザに問う。
「あまり、期待をしないで聴いてください」
「分かったわ」
「クラウド殿下の遺体が見つかっていないんです」
「毒を持った罪人は捕まっているのよね。その罪人は遺体をどうしたのかは自白していないなかしら?」
「その罪人は毒を盛っただけでクラウド殿下の最期まで見届けていないようです」
「ねぇ、もうすぐその罪人はアルターナに運ばれてくるのよね」
「そうですが…」
「その罪人と話す事はできないかしら?」
「可能ですが…、どんな人物かは分かりません。もし、ルティーナ様に危害を与えるような者なら…私が代わりに会いますが…」
「直接、話したいわ、いいえ、私が話さなければならないの!」
ローザはルティーナの強い意志を感じて説得する事を諦めた。
「分かりました。可能な限り手配で致します」
「それともう一つ、調べて欲しい事があるの」
ルティーナはローザに話すとローザは直ぐに部屋から出て行った。
それから、また、幾日の間はクラウドが死んだ事で王宮の官僚達が慌ただしかったが、結局は遺体が見つかっていない事と王太子が不在の為、クラウドの死は暫くは公にはならない事になった。
「ルティーナ様、今夜ならば罪人と接触が取れます。今日の深夜の見張りが神殿側の使者が担当になるので今夜が良いかと」
「今夜ね、会いに行くわ」
ローザがルティーナに書類を渡すとルティーナはその書類に目を通した。書類はクラウドに毒を盛った男の身辺調査の報告書だった。
「意外だわ。傭兵とかの出身だと思ったら貴族だったのね。しかも男爵なんて…。昔から、お兄様の監視役なのね。どこの派閥でもなさそうねだし、騎士団に属してもいない。護衛でないから騎士でなくてもいいけど…あ、なる程…気配を消す事が得意なのね。お兄様の監視役の前は密偵…」
ルティーナは男の家族構成に目を通す。
娘が一人いるが母親は子供が生まれた後、直ぐに亡くなってしまった。娘も生まれつき目が見えない。
「だからといって、同情は出来ないわ」
深夜になりローザに付き添われて王宮の地下牢に向かった。石壁の階段を下っていった。かなり下って行き最下階まできた。太陽の光など決して届かないのであろう。見張りの兵が立っていた。ローザと兵は顔見知りなのか、声もかけずにそのまま通っていった。この階は牢が一つだけらしい。薄暗い牢の中に男が一人ベッドに横になっていた。
ルティーナ達が牢の鉄格子の近くまで来ると男はゆっくりと起き上がってた。生気のない目でルティーナ達を見る。
「初めてお会いするわね。ロベルト男爵」
「もう、男爵ではない。それに…あなたは?」
ローザがルティーナを守るように前に出て言う。
「無礼だ!このお方は第一王女のルティーナ殿下である」
「ル、ルティーナ殿下ですと王女様が何故、このようなところに来られたのですか?」
ローザは斬るように言う。
「無礼な!お前如きに殿下が、直々にお会い頂けたんだ!控えよ!」
ルティーナがローザを宥めるようように言う。
「いいのよ。ローザ、前触れもなく突然来てしまったから、驚くのは当たり前よ。ロベルトに幾つか聞きたいことがあるわ」
ルティーナはロベルトを睨みながら話す。ロベルトも貴族らしく片膝を付き、頭を下げる。
「なんなりと…」
「ロベルト、本当にクラウドお兄様に毒を盛ったの?」
「確かに、即効性乃ある毒ではなかったので、クラウド様が倒れるところまで確認しました。もう、虫の息ほどでしたが…ルティーナ殿下!私は知らなかったのです。薬が毒薬とははっきりとは聞かされていませんでした!まさか…あんな状態なるは…騙されたんです。アッシュレ殿下に…どうか、どうか、殿下、私にご慈悲を…」
ロベルトは鉄格子に縋り付く。ルティーナは冷たい目で怒りを押し殺した声で言う。
「黙りなさい。その薬がどんなものかおおよそ検討が付いていた筈よ!それでも飲ませたならクラウドお兄様を殺したのと同じよ。あなたはは何故、クラウドにお兄様を最後まで見届けなかったのかしら?」
「それは…毒薬の効果を見て私は、後悔をしました。助からないと思いましたが、ほんの僅かな賭けで小さいですが診療所の前までお連れしました。しかし、あの様子だと、助かるのは無理だと思います」
ルティーナは、暫く考えて口角を一瞬上げた。ロベルトそのルティーナの顔を見て絶望し泣き崩れしまった。
「あなた、助かりたいのよね…」
「えっ!」
ロベルトは目を大きく見開きルティーナを見た。ローザも驚きを隠せなかった。
「いいわ、ロベルト、私と取引をしましょう」
いつも、お世話になっています。私的な事のゴタゴタと色々ありまして執筆を中断していました。ようやく、画面に向き合う気になりました。
私ごとですが、10月からの環境の変化も変わります。
連載中のものはなるべく早くアップさせたいのは山々ですが、「冗談ではありません!」の感想、意見で面白いけど読み辛いと言う意見を頂きました。勢いで書いた作品なので、意見を頂けるとは思ってもいなかったので、大工事を先にしたいと思います。ご指摘は、少し戸惑いましたが真面目に読んでいただいて嬉しいです。
「聖女と〜」や「政略結婚〜」は順次、仕上がり次第、アップしていきますので宜しくお願いします。