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王子の醜態


ルティーナの目の前にいるのは、ラーダス国の王太子のウルリッヒであった。ルティーナが会いたくない人物の一人である。ルティーナが社交辞令の挨拶を切り出そうとするとアッシュレが先に話し出した。


「ウルリッヒ殿下、申し訳ないが私は公務がある為、これにて失礼しなければならない。ルティーナ、ウルリッヒ殿下は()()()ところを差し置いてお忍びでお前に会いに来られた。失礼のないように」


「アッシュレ殿下、あまり気を使わないで下さい。少し妹君をお借りしますよ」


アッシュレは一瞬、眉を寄せたが直ぐに穏やかな表情に戻った。アッシュレは社交性には長けている。ルティーナはアッシュレのあの張り付いた笑顔は、相手の事が好きでない時に見せる顔である。ウルリッヒも使い用が無くなればアッシュレは何のためらいもなく捨てるのであろう。しかし取れるものからは絞り切るまで搾り取るのがアッシュレのやり方だ。

ルティーナを餌に使えるだけラーダス国を使うだけ使うつもりなのであろう。


「ウルリッヒ殿下、ルティーナはまだ我が国の王女(商品)、他国から我が国の王女(商品)を求める国も多い。くれぐれも王女(商品)には傷をつけないで欲しい」


アッシュレはルティーナの近くに来て、すれ違い際に冷たい声で耳元で囁いた。


「お前のやることは、あの愚かな王太子(ウルリッヒ)の機嫌を取り自分の()()を上げることだ。わかったな!」


「アッシュレお兄様の仰せのままに」


アッシュレは速足で出て行った。ローザはメイドにお茶の準備をするように伝えるが目はウルリッヒの姿を捉えている。かなり警戒してる様子だ。

水晶の間には騎士が3人残った。どうやらルティーナとウルリッヒの監視のようだ。ウルリッヒが下手なことを言い出さないことをルティーナは願った。ルティーナはウルリッヒの向かい側の席に座った。


「今日はあなたとの絆を深めるために来ました。ルティーナ王女そんなに警戒しないで下さい。いや、そんなあなたにも魅力を感じる。まるで子猫が怯えているようだ」


「魅力だなんて…ウルリッヒ王太子殿下とってはわたくしなんて子供のようなもの。殿下は普段からお美しい妃様達に囲まれてお過ごしなのでは?そんな花の中ではわたしなど霞んでします」


ルティーナはウルリッヒの纏わりつく視線から逃げたくてしかたがなかった。ローザも先ほどから厳しい目でこちらを見守っている。まとわりつく笑みを浮かべウルリッヒはクツクツと笑いながら言う。


「たしかに私の王宮では美しい花が咲き誇れているが花の命も短い、直ぐに枯れてしまう。つぼみであれば長く美しいままに愛でることが出来る。そして子猫であれば成長するまでにしつけが出来る」


ルティーナは背中が虫唾が走ったが誤魔化すために目の前のティーカップを手に取りすすった。自分の真横に気配を感じたので真横を見るとウルリッヒが目の前の椅子からルティーナの真横に移動してた。そして近づいてくるウルリッヒに対してルティーナは思わず叫んだ。


「ウルリッヒ殿下、お戯れをやめて下さい!」


ルティーナが慌てて移動しようとしたが既にウルリッヒは真横にいた。ウルリッヒの手がルティーナの耳元に伸びる。


「これぐらいはよいではないか?遅かれ早かれ我妻となる身、しかしいいなぁ、その怯えた顔。いつも強気なあなたも怖いのか?これは教育しがいがある。ラーダスの王妃と相応しいようにわたしが直々に教育しよう」


伸びた手がルティーナの耳に触れた。ルティーナは思わず目を瞑る。


「うっ、熱い!」


ウルリッヒの悲鳴に近い声がした。護衛の騎士もローザも慌てて駆け寄る。ルティーナの手のティーカップのお茶がウルリッヒの胸元にかっかたようだ。ウルリッヒはローザも騎士も押しのけてルティーナの手首をつかんだ。


「小娘が小癪な真似を!うっ」


微かにだが鈍い音が聞こえた。ローザのいる側の脇腹を抑えている。ルティーナはローザ方を見るとローザの口角が僅かに上がっていた。ルティーナは直ぐにローザの仕業だと悟った。ウルリッヒは脇腹を抑えかなり痛かったようだが、怒りに大声をまき散らす。


「誰だ!私を殴ったのは?お前か!」


ウルリッヒはローザの方を見るが思い直す。侍女姿のローザは背は高いが細身である。とても軍師でもあるウルリッヒを殴ったとは誰も信じられなかった。ルティーナでさえ目の前で起きていることが現実かどうか疑問に思うぐらいだ。ウルリッヒも女性に殴られてうめき声を出したと思いたくないのか大人しく別室で着替えることを了承したようだ。


「今回はこれで失礼するが、次は覚悟しておいていただきたい!」


ウルリッヒは吐き捨てるように言って騎士たちに連れられて行った。出て行ったことを確認するとローザもまた吐きすれるようにいった。


「図体ばかり大きいだけだ。軍師だと言うのに大したことがない。ルティーナ様、今のうちにお部屋に戻りましょう」


「ねぇ、ローザあなた魔道士でもあるの?全部、あなたの仕業でしょう?」


「あまりにも・・・思わず虫唾が走って出過ぎた真似をしましたが、私は少々、水属性魔法で水が操れるだけです。ルティーナ様のカップから熱いお茶を飛び散らせることぐらい出来るぐらいしか出来ません」


「あらそうなの?そのおかげでとても助かったわ」


「それは光栄な事です」


ルティーナとローザは水晶の間を後にした。


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