不死、拉致られる
目が覚めるとそこは見覚えのない部屋だった。
体を起こし周りを見てみるとなんかすんごい高そうな調度品だらけの部屋だった。中世かな?
そんな場違いな思考がよぎる。とりあえず周りに誰かいないか呼びかけてみよう。
「おぉーい、誰かいないのかー?」
「はいお呼びでしょうか?」
扉の前にいつの間にかメイドがいた。ガチの方のメイドである。所作から溢れる気品がすごいな。
「おぉ、リアルメイド。珍しい」
「なんですかその視線、私を襲う気ですか?エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!」
「無表情で言われると圧がすごいなぁ」
「こういったことがお好きかと思いまして」
「まぁネタとして好きだな」
「それは重畳、お嬢様をお呼びしてきますね」
「それよりここどこだ?」
うん、一番最初に聞きたかったんだが、ネタを振られたから反応してしまい後になってしまった。
「ここはボルナード財閥当主、アイン・ボルナード様所有の別宅の一室になります」
「おっと、超有名な財閥の超有名な人の家だったか。なんで俺そんなとこにいんの?」
うん、正直か怖くなってきた。主に社会的に殺されないか。
え?身の危険?別に死ぬ事が出来ないなら逃げようと思えば文字通り捨て身でいけるし、肉片ひとつでもここからでたら勝ったも当然なのだ。
「お嬢様達、レナ・ボルナード様とミーニャ・ボルナード様が連れてこられました」
「ほー……なんで?」
「貴方様に姉妹喧嘩を見られ、挙句には吸血鬼だということがバレたためだそうです。どうやらあなたは不死身のご様子。それのせいで口封じが出来なかったため、ご自宅へと連れてきた、との事」
つまり俺が気絶してる間に何回か俺を殺したけど無駄だったから誘拐したと。
「え、あんたらの教育どうなってんの……?」
「お嬢様達には正体を知られた時の対処法をお教えしてるので、問題ありません」
「ちなみに対処法の内容は?」
「口封じ、忘却、懐柔。このうちの口封じと忘却が貴方様に効かなかったため、渋々懐柔の選択肢を取られました」
「おっとルビが物騒だ」
「なんのことでございましょう」
あくまでしらを切る気ね。ま、いいか。
「それで俺は家に帰ることが出来るのか?」
「現状は不可能でございます」
「それじゃ俺どうしたら……てか今の俺はあんたらにとって何?」
「お嬢様達、いえ、我らボルナード財閥の秘密を知った危険人物になります」
「おぉおぉ、怖ぇ」
「本来ならば貴方様には封印処置をし海底の底に沈める予定だったのですが」
「封印とはこれまた物騒な」
「お嬢様達の希望により、貴方様には選択肢が用意されました」
選択肢、ねぇ。しかもあいつらの希望で?なんのために?別になんもしてないし、むしろ粗雑に扱ったから怒られても仕方が無いと思うんだが。
「選択肢の内容を教えてください」
「分かりました。まず最初の選択肢です。端的に言って貴方様に実質的な死を選んでもらうことになります」
「それが封印ということか」
「第2に、全てを忘却し、普通の生活へ戻ってもらうこと」
「それ出来なかったんじゃないのか?」
「物理的な手段ではなく、魔法的な手段を取りますので問題ありません」
「おっと、魔法か……あっても不思議ではないな」
実際魔法を使ってあの姉妹は俺の家へと入ったのだろう。じゃなければおかしい。あの時窓もドアもなんの物音もなくその場にいたのだ。転移とかそこら辺だろうか?
「転移魔法は存在しますがそう簡単に使用出来るものではございません」
「じゃあどんな魔法を?」
「姿隠しの魔法です」
「つまり俺は跡をつけられていたと」
「左様でございます」
割と物理的な方法を使っていたようだ、確かにそれなら別に有り得なくもないか。気づかれなければ侵入は簡単だしな。
「最後の選択肢は、貴方様がボルナード財閥で働くこと。具体的にはお嬢様達の側役として雇われることになります」
「それ男の俺でいいの?」
「別に問題はございません。ボルナード財閥は基本的に自由恋愛にございますので」
「いや、そういうことではなく」
「懸念している性別的な問題や、普段の生活に関しましてお嬢様達はお気になさらないかと。そういった生活に慣れていますので」
つまり他人に下着を見られようと気にしないと。裸とかそこら辺は気にしそうだが、それだけと。
「うーん……?」
「今決めようとしなくても構いません。後ほど伺いますので」
「ちなみに俺は今会社ではどう言う扱いで?」
窓を見ると明るいのだ。多分朝か昼辺りなのだろう。
「有給扱いでございます」
「なるほど」
「では、朝食をお持ちしますので暫くお待ちください」
そう言いでていくメイド。
「あ、名前聞いてなかった」
多分こんなことを言うんだから俺の中では決まっているのだろう。
多分めんどくさい事になるだろうけど。