不死、血を吸われすぎる
「……何故お前らが俺の家に居る」
血まみれの服から私服に着替え、牛丼を食い終わってから家に着いて寝ようとした時。
ふとソファの方へ視線を向けると先程俺を潰してくれた姉妹がいた。
「不法侵入か?通報案件だな」
110番と。そう押そうとしたらお姉様と呼ばれていた女が携帯を壊そうとするので、腕を差し出し盾にする。
肘から先が輪切りになる。うん?握りつぶされるのかと思ったら切られたのか。その伸びた爪かな?
「何すんだ、痛てぇじゃねぇか」
「なんであんた生きてるの?それにその腕も、なんでもう治ってるのかしら」
「不死だから、以上。帰った帰った」
「不死?吸血鬼でもないのに不死ですって?笑わせないで、証拠でも見せて欲しいところね。ってそんなことを聞くために来たんじゃなくて」
証拠と問われたので包丁を取りだし喉に刺してみたり、心臓に指してみたり、脳天に突き刺してみる。そうあっさりと刺さる訳では無いが、不死ゆえの実験で力が増すことが増しているのを確認してる。その膂力で刺したのだ。
「これでいいか?」
「ちょ、私の話聞いてた?そんなあっさり自殺紛いの事を……分かったから、不死だってのはわかったから話だけ聞いてちょうだい。はぁ……」
ため息ついてんじゃねぇ、俺が一番ため息つきてぇよ。なんなんだこいつ。人の事潰すわ人の腕を輪切りにするわ。
「非常識女が」
「あんたに言われたくないわよ!」
「それで話は?」
「ダメだこいつ、人のことをまともに扱う気がないわ」
「当たり前だろ」
「……話というのは私たちの正体を知ったからどうするのか、という事よ」
こいつらの正体?なに、まさかコウモリの翼生えてるから吸血鬼ってか?
「そのまさかよ」
「あ?口に出てたか?」
「何となくそのあほ面の考えることは簡単にわかるわよ」
「おっし、喧嘩だな。いいぞ、最近は体が訛ってたからな」
「いいから座りなさい」
仕方がねぇなぁ。ソファからさっきから一人で喋ってる少女を蹴り出して座る。
「ちょ、何するのよ」
「ここ俺の家、な?それでお前らは不法侵入者、文句言えた立場じゃねぇだろ。それに一度俺の事殺してるし」
「うっ……ならなんでミーニャは追い出さいないのよ!」
「おいおい、大人しい子をいじめるなよ、可哀想だろ?」
「なんで私が悪いみたいなこと言われなければならないのかしら……」
あ、そういえば忘れてたわ。
「お前らの名前聞いてねぇわ」
「今更!?それ今更過ぎない!?」
「いいから早く、俺からやるか?俺は六花大造。新人社員、不死です。はいお前は?」
「納得いかないわ」
「早く」
「むぅ……私はレナ、吸血鬼よ!」
そしてあとは隣にいるさっきから無言で様子を伺っている少女だ。割とでかい……ユニコーンかな、それのぬいぐるみを顔の前にやり、隠れている。
「……え、私もですか?」
「当たり前だろ、ほら」
「え、え?」
「はりーはりー」
「え、えっと……ミーニャ、です。レナお姉様の妹です……吸血鬼、です」
ふーん、2人とも吸血鬼なんか。そっかぁ……
「吸血鬼、ねぇ?」
「何よ、なんか文句あるの?」
「ちなみに証拠は?」
「はい、八重歯」
そういい自分の口を開けて見せてくる。確かに鋭いがそれだけだと、なんとも納得しがたい。
「ただ伸びてるだけだ、って言ったら?」
「血を吸えば納得するかしら?」
「誰の」
「あんたの」
「そんな無節操に吸うもんなの?」
「本当は嫌だけど……仕方がないじゃない」
ま、いいか。
「ほれ、吸えよ」
「い、いいのかしら?」
「さっきからお前なんか調子悪そうじゃねぇか、血を吸うだけで楽になるなら吸えよ」
そう、特に気にしてなかったがどこかルナは調子が悪そうだった。理由は分からんがとりあえず血を吸わせるだけの理由にはなるだろう。
「なら遠慮なく」
遠慮なく噛みやがった。うん?想像以上に噛んでるな、これ肉齧り取られるんじゃ……
「ちょっと噛む力強すぎでは?」
「────」
「聞いてねぇぞ、ミーニャとやら。これどういう状態だよ」
なんか鼻息荒いんだが?てか吸いすぎ。これ普通の人なら死んでるぞ。
「興奮してるのだと思いますが……」
何うっとりしてんだお前。何羨ましそうに見てんだよ。
「なんで興奮してるか分かるか?」
「あなたの血が美味しいのでは……あ、あの」
「……はいはい、どうぞ」
右腕がやばい事になってるし、左側に座ってるので左腕を差し出すとがっしりと掴まれてもうむしゃぶりつくようにかじってきた。
「……」
「────」
「はぁ……美味しいです。────」
こいつらやべぇヤツらだな?それより話は……出来そうにねぇなおい。
あ、待て。2人とも吸いすぎだ、力が抜け……気絶はしそうだ。
落ち着いてく……って……あ──