【ショートストーリー】ハロウィン
本編:第211部分 必要な事 の後に記述
10月31日でしたので、ハロウィンネタでした。
「トリック・オア・トリート にゃん♪」
俺の目の前に猫耳を付けた杏里が立っている。
はて、その尻尾は何ですか?
「何してるんだ?」
「司君! のりが悪いよ! 今日はハロウィンだよ?」
「あー、そんなイベントがあったな」
目の前の杏里はかぼちゃ色の服に猫耳。
尻尾までおまけについている。
――ピンポーン
誰だ? せっかく今日は一日ゆっくりしようとしていたのに。
「トリック・オア・トリート ガオー!」
狼のマスクをつけた高山。
服は本当に普通の服装だな。マスクだけじゃん。
「トリック・オア・トリート ぴょん!」
ウサギの耳を付けた中々きわどい服の杉本。
「で、おやつをあげたら二人とも帰るのか?」
「天童! のりわるい! もっと盛り上げようぜ!」
「そうですよ! せっかく杏里がクッキー焼いて、パーティーを開いてくれたのに」
「え? そうなのか?」
なんだか前も同じ事をしたような気が……。
気のせいかな?
「待ってたよー、二人とも早く入って!」
「なんだ、騒がしいな。司、しっかりやっているか?」
父さんまで。しかもその悪魔コスプレ、怖いんですけど。
「つかさー、おかし沢山持ってきたわよ! パイも焼いてきちゃった♪」
母さんはナース服を着ている。
何か勘違いしてないか?
「と、とりあえず中に……」
一階が異様な雰囲気になっている。
――ピンポーン
「トリック・オア・トリート」
渋い声の会長は侍だ。
刀の形をした傘を差しこみ、なぜかペンペン草を加えている。
似合っているからいいんですけど……。
「トリック・オア・トリート だよっ♪」
「トリック・オア・トリート わおーん♪」
遠藤は白のタキシードで、金のネクタイ。
井上は犬だな多分……。
「お前たちまで……」
「天童君はまだ仮装前かい? このボクのアイドルコスプレは中々なもんだろ?」
うーん、お笑い芸人に見えるが、まぁいいか。
「おう、どっからどう見てもアイドルだ。きゃー、かっこいいー」
と、棒読みしてみる。
「早く天童君も着替えたら? あと、首輪いる?」
井上はなぜか俺に首輪を渡してくる。
「なんで首輪?」
「一個余った。あげるよ」
いらんがなっ!
な、何だこの異様な雰囲気は。
家の下宿が異常になってきた……。
その後も、狸の着ぐるみを着た雄三さんに、執事コスプレ?の瀬場須さん。
ボデコン?と言っていた良くわからない服を着た先生に、貴族の服を着た熊さん。
それに八百屋のオッチャンに肉屋のおばちゃん。
あ、魚屋のじーちゃんまで来てる、つか軍服は本物ですか?。
そして、オーナーとなぜか意気投合していますね。
混沌。そう、今俺の目の前はカオスになっている。
一体何が楽しいんだ?
「楽しくないのか?」
聞いた事の無い声がする。
「えっと、誰?」
赤い髪になぜか耳が生えている。
狐のコスプレか?
「よっ。初めましてかな?」
その耳、動いてるけど、良くできていますね。
「えっと……、初めまして?」
「今日はハロウィンだし、楽しまないと! ほら、司君も着替えて着替えて」
俺は赤髪の知らない狐さんに無理やり服を着させられた。
「ほら、似合う似合う」
着たのははドラキュラ衣装だ。
なんだか、マントを羽織るだけでちょっとかっこいいかも。
「司君はドラキュラだね」
隣に杏里が寄ってきて、俺にジュースを分けてくれた。
でっかいワングラスに真っ赤な液体。
「赤いジュース?」
「そう、トマトジュース! ドラキュラなら必須アイテム」
ちょっと楽しくなってきたかも。
しばらくみんなの服を見ながら、持ち寄ったお菓子やジュースで楽しい時間をすごす。
一段落し、俺は杏里と二人で縁側に座り一休みする。
「さすがにこの人数は疲れるな」
「そうだね、普段は二人っきりだからね」
「でも、楽しいな」
「うん、楽しいよ。司君がいると、私はいつでも……」
「杏里」
「ん? どうしたの?」
「トリック・オア・キス」
俺の頬に杏里の柔らかい唇が触れる。
「ハッピーハロウィン、司君」
また、来年もハロウィンしてもいいかな……。