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深い青のワンピース

ジャイアント。

その鈍重そうな見た目とは裏腹に、素早い動きを見せる。


横沸き。

偶然、隣に敵がポップアップする事だ。


尚、何故か偶然の筈の横沸きに遭遇しまくる人がいる。

そういう人は後衛職には向いてない。

PTとかをするとすごく大変だ。


そっと懐から薔薇を出し━━


「危ない!」


横手から飛んできた女の子が、間に立ち塞がる。

ちょ。


巨人が柔軟にターゲットを変更。

女の子に棍棒を振り下ろし━━


「フレイムバースト!」


詠唱だけで発動したその魔法は━━


ジュッ


巨人をあっさり蒸発させた。

ドロップすら許さない。


地面がぐつぐつ言っている。


「ふう、危ない所だったね!大丈夫?」


えっと・・・


「あ、有難う、御座います」


恐らく、プレイヤー。

しかも、俺と同じく、この世界に居る。


と言うか、強い・・・


戦闘職は本当に異常だ。


やや露出の多い格好。

漆黒の流れる様な髪。

踊り娘かと思ったけれど、魔法使い系だろう。


ビッとピースをして、


「私はフェル。最強の魔法使いだよ!君は?」


自分で最強と言うとは。

凄い自信だ。


「俺はシルビア。ただのレンジャーだ」


「レンジャー?!戦闘職じゃないの?!」


フェルがびっくりした様な声を出す。


「いや、どんな職業をしようが、個人の自由だろう」


「・・・普通のゲームならそうなんだけどね・・・このゲーム、生産するよりダンジョンや敵からのドロップの方が遥かに効果高いし、戦闘職と非戦闘職で強さに差が有り過ぎるから、戦闘職一択かな。レンジャーはダンジョン探索に有利だけど、戦闘職で上位ダンジョン行った方が効率良いしね。レベル3桁以上にする事すら苦労するらしいよ?」


今のレベルは1142だけどな。


「まあ、ぼちぼちやるよ」


「・・・気をつけてね。このゲーム、死んだらそれで人生終わりだから。自分のレベルの半分くらいのソロ推奨レベルが目安だね」


んー、と少し考えた後、


「シルビア、罠は外せるよね。良かったら上位ダンジョン見せてあげる。それで戦闘職の強さ分かったら考え直して!」


もう十分見ましたが。

でもまあ、他職のダンジョン攻略見てみたい気はする。


「そうだな。見せて貰うよ」


「ん。じゃあ、PT要請してね」


メニュー、パーティー、誘う。


:フェルがPT要請を受諾しました。

:『ダンジョン見学し隊』が結成されました。


「ぷ・・・ダンジョン見学・・・し隊って・・・したい、と、PTの隊をかけて・・・」


ツボにはまったらしい。

笑い転げている。


さて。


シルビア 人間 1142 トレジャーハンター 9

フェル 魔族 2533 ハイウィザード 61


うっわ、強い。


「ひ・・・シルビア、ギャグのセンス有るね・・・さて、君のレベルは・・・え」


フェルが固まる。

レベルが低過ぎたか。


「4桁?! 職業も見た事ない。これ2次職?!」


「3次職だって」


ベースレベルで分かるだろうに。


「・・・君、暇なんだね」


「・・・まあな」


フェルは少し考えた後、


「そこまで強力なレンジャー職なら、頼みたい事がある。最近、偶然、未踏のダンジョンを発見してね。攻略を手伝って欲しい」


「それは面白そうだな。是非協力させてくれ」


「決まりだね、行こうか」


パチ


フェルが俺にウインクする。


「痴女がご主人様を誘っているのです。年甲斐を考えた方が良いのです」


月花が呆れた声音で呟く。


「えっ、痴女って、と言うか誘ってってどういう意味」


フェルが月花を聞き咎める。


「と言うか、キミ何で外に出てるの?何だか発言が柔軟過ぎない?」


「冒険者が自分から明かさない攻略情報を無理に聞き出すのは御法度ですよ」


月花がたしなめる様に言う。


「いや、これは人類全体の存亡が」


「フェアリーに人類全体の存亡はかかっていないです」


「うう・・・」


誤魔化しているから放っておこう。

自分がやった事ながら、真似されて溶けるフェアリーが出たら気分が悪い。


「後、服装に関しては、仕方がないの!この装備が性能良すぎて!私も本当はもっと露出低い方が良いんだけど・・・」


なるほど。


「最近手に入れたこれとかどうだ?」


深い青のワンピース。

装飾がついていて、高い防御と魔力強化を誇る。


「やだ、可愛くない」


拒否された。


「やっぱり痴女じゃないですか」


月花が呆れた様に言う。


「違うって!だいたい、この服装そこまで露出多くないよね!ちゃんと隠すところ隠れてるよ!」


「・・・その基準がおかしいと思うのですが・・・」


月花が半眼で言う。


「・・・実は、魔法を使う際、世界を感じる必要が有るんだ。だから、肌が世界に接していないと、魔法が使えない」


「・・・初耳ですが・・・」


月花が呻く。


「とにかく、行くよ!」


フェルがズカズカと歩き出した。

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