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初体験

「スレイが死亡しました」


月花が繰り返す。


「・・・何で?」


ミストが呻く。


「私も確認しました。スレイ、及び、護衛についていた遊魚のメンバーが2人、そして、ミストのギルドのレレア、ウリムラが死にました」


カゲが乾いた声音で言う。


「護衛の静止を聞かず、護衛対象が勝手な行動を。レベル百万のドラゴンを呼び寄せ。護衛対象を逃がす為にしんがりを務めたメンバーが死亡。良く有る事です」


月花が告げる。


・・・


良く有る?


死ぬ・・・死ぬって何だ?


「スレイは・・・もうゲーム出来ないって事・・・か?」


「シルビア?!」


俺が苦々しく言った言葉に、ミストが驚きの表情を向ける。


「そうじゃな。スレイはもうゲームはできん・・・死んだからの」


フェリオが言う。

死んだ・・・死んだ・・・死んだの・・・か?



それって。



どういう意味だ?



「だって、スレイって、一緒に遊んだんだぞ?一緒に笑ってたんだぞ?この世界を愛していたんだぞ?女神様にもきっと愛されていたんだぞ?」


「シルビア!」


ミストが俺を睨む。


「そうだよ・・・シルビア、前から、実感が薄かったよね。身近な人が死ぬのは初めてかい?」


ミストの言葉が・・・刺さる。


「私には、日常茶飯事だよ。みんな、あっさり消費される様に、死んでいくんだ。私が死地に行けと命じた事もある。大切な友人、にね。私は・・・殺人鬼だよ」


ミストが続ける。


「シルビア。この世界はね。酷い世界なんだ。女神様は、人類に試練を与え、存続を問うている・・・決して、人間を慈しむ存在じゃないんだよ。このゲームは、遊びじゃない。この世界は・・・地獄だ」


だって・・・世界は・・・


「この世界は、こんなに美しい。楽しいじゃないか。これは女神様のプレゼントなんだ。色々な楽しみ方があるだけだ・・・スレイは、きっと女神様に祝福され、今頃幸せに━━」


カッ


ミストが認識出来ない速さで、俺に切り込む。

間に割って入ったカゲの刃が、その剣を止めた。


「目を覚ませ、シルビア」


ミストは押し殺した声でそう言うと、


「君とは、2度と会わない」


そう言葉を残し、立ち去った。


俺は━━2人の友人を、永久に失った・・・そう悟った。


--


この世界は、悲しみに満ちている。


人は、為すべきことを為さねばならない。


恐らく、それは、事実。


だが。


「主よ、我に乗ったほうが楽ではないか?」


トライプニルが尋ねる。


俺は━━行動を変えなかった。


今更どこかのギルドに所属して魔王軍との戦いに参加しても・・・役立てる気がしない。

むしろ、面倒な奴に目を付けられ、無駄に消費させられる・・・そう思う。


分かっている。

これは逃げだ。


それでも、俺はこれまで通りすごす事にした。


俺1人が参戦しようが、すまいが、大局は変わらない。

むしろ、レア武具を流通させたり、情報収集する方が、役立つ筈だ。

それはこれまで通りの考えで。


でも、分かってしまった。

これは、逃げだ。


今、ただ歩くのが好き、という理由で、トライプニルの申し出を拒否した。

これも、ただの我儘だ。


そう、俺は、変えなかった。

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