魔法使いたい
「どういう事?!」
湖畔フィールドでのんびり、巨大キノコに腰掛け。
漆黒水晶(炭みたいに燃える)で暖を取る。
幾分大人しい服装になったフェルが、俺の肩を持って揺らす。
フェルは漆黒の流れるような髪を持つ少女、種族は魔族。
魔導王の称号を持ち、それなりにプレイヤーの間では有名なようだ。
異常な強さの魔法を操り、本来は破壊不可オブジェクトである自然物やダンジョンの壁まで、あっさり溶かしてしまう。
「どうしました、元痴女。ご主人様を揺らさないで下さい」
月花が困った顔で言う。
「元とかやめない?!」
フェルの抗議。
「分かりました、痴女」
月花がやれやれ、といった様子で言う。
「元を外せば良いって訳じゃないんだけど?!」
どうしろと?
「・・・話が脱線しているぞ・・・」
「・・・ああ、そう。聞いてよ、シルビア!」
うん、聞くよ。
「ギルドを作って、育ててあげようとしているのに・・・人が来ないのよ?!」
「うん、ギルドで人を集めるって大変だと思うよ」
結局募集で入ったの1人だけだったしなあ。
「名前も凄くお洒落にしたのに・・・」
フェルが困惑した様に言う。
「そういえば、どんな名前にしたんだ?」
俺が尋ねると、フェルがドヤ顔で、
「『魔法使い隊』よ。素晴らしいネーミングセンスでしょ」
・・・?
ああ。
「かっこ悪い上に意図が分かりにくい名前じゃな」
フェリオが言う。
「偽フェンリルは黙ってて?!」
酷い事を言うフェル。
「今のはご主人様が考えた感想をフェリオが伝えただけです、が」
月花。
・・・いや、確かに頭よぎったけどさ。
「・・・まあ、名前はともかくだな」
「シルビア、否定してよ?!」
誤魔化し失敗。
「名前はともかく、どんなギルドか上手く紹介できれば良いんじゃないのか?実際、強くなりたい人は多いんだから」
「うー・・・上手く紹介ってどうやるのよ!」
俺に言われても。
「誰か頼れる人はいないのか?・・・そうだな・・・例えば、妹さんとかは?」
「・・・そうか・・・妹なら・・・」
ぶつぶつ・・・フェルが何か考え込む。
「それと実績、後はネームバリュー・・・」
「ネームバリュー・・・一応、魔導王の称号はそれなりに知れ渡ってるけど・・・」
「それもだし、元至高の六王って名乗るのはどうだ?それなりにギルド名は有名だったんだろ?」
「・・・最強のギルド、っていう都市伝説として有名だったわね。攻城戦で時々アナウンスされてたし」
「後は、最初は何処かのギルドに所属し、そこでコツコツ実績積むというのも・・・」
「嫌よ、至高の六王以外には、他人のギルドなんて入りたくないわ」
なら・・・
「後は、討伐イベントとかに積極的に参加、参加者を直接勧誘とかしたらどうだ?俺も勧誘して増えた仲間多かったしな」
「・・・シルビアみたいなナンパスキル無いもの」
俺はナンパなんかしてねえよ。
「・・・でも、有り難う。色々教えてくれて。もうちょっと頑張ってみる」
フェルが微笑み、そう言う。
「・・・シルビア、うちに入らない?」
「俺、レンジャーなんだが・・・」
魔法は使えません。
「ち・・・じゃあ、また、ね」
勧誘って大変だよなあ。
多分、最初の1人が特に大変。
人数が増え始めたら、一気に増える。