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裏切り

単純な話だ。

主力である敵の幹部は圧倒出来た。


しかし、北方からの破城槌を持った1軍。

進軍を止める事はできず、壁の北側が破壊。

敵軍が街に雪崩込む。


一方、南方から攻める1軍。

魔導砲により壁が破壊。

やはり敵軍が雪崩込む。


街に火が放たれ、防衛勢力は殺され。

塔は占拠され。


敵の総大将を倒して混乱は生じたものの、大将達でそれぞれ軍をまとめ立て直し。

潰走なぞしない。


捕らわれて連れ去られた人もいれば、殺された人もいて。


何にせよ、ウインディレインは陥落した。

俺達は負けたのだ。

純粋な戦力差による、戦略的な敗北。

敗北要因の検討すら不要だ。


主力が囮になって、という訳でも無いだろう。

単純に数がいたから、3方向から攻めただけだ。


単純に、戦力が負けている。

そして人類側は消耗し、魔族側はクリスタルを手中に収めて更に強化。

幹部は倒したが、人材は豊富そうだ。


アジトにギルドメンバーが集まって、無言で座っている。


「・・・思うんだけど」


フィロが口を開く。


「魔族に対抗する為には、個が強くなっても限界があると思う。力が有る者達・・・私達が、他の人を引っ張る必要が有ると思う」


まあ、そうだな。

フェルが続ける。


「ギルドメンバーを増やしましょう。もっと表に出て、強い人をどんどん入れて・・・いえ、どんどん人を入れて、どんどん育てましょう」


え・・・


「私達で手分けすれば、どんな職業でも育てられる。作ろう、最強のギルドを。人類の希望を」


ミストが言う。

種族人間って、俺だけだけどな。

まあ、魔王軍以外って事で。


「僕も賛成だよ。僕の剣技・・・役に立てる時が来た」


アイリス。

剣持ったら何故か俺と同レベルに劣化するんですが。


「女神様の思し召し通り」


リミアが祈る。

女神様なんて本当にいるのだろうか?


「私はご主人様と共に」


関係ない。


・・・


「確かに、俺達だけが強くても、人類は勝てないと思う」


俺の言葉に、みんな頷く。


俺達7人が頑張っても、たくさんの都市のうち、1つの都市、その1箇所だけ、それだけが限界だった。

いや、その気になれば、そこすら横に抜けるのは容易い。


魔王軍に対抗するには、多くの人を育てる必要が有る。


だが。


「でも、俺の器じゃない。俺は、人を導く事はできないし、大ギルドのギルドマスターなんてできない」


「シルビア?!」


俺の言葉に、フェルが驚きの表情を作る。


「誰か他の人がギルドマスターをするなら、俺はギルドマスターを譲る」


見回すが・・・視線を合わせる者はいない。


「そうでなければ・・・このギルドを解散しようと思う」


「マスター・・・貴方なら、私達を・・・人類を導いてくれると・・・確信しています・・・」


リミアが言う。


俺は頭を振ると、


「・・・みんな、俺はね・・・いつか聞かれたよな、俺のリアルの事・・・」


告げる。


「俺は、大それた人間じゃない。俺は・・・親の遺産で食いつないでいる、ただの引き籠もりのガキだ」


常にログインしている、そこから想像出来るだろう・・・それが俺の真実。


「理由も・・・ただまとまったお金があったから、人付き合いが面倒だったから・・・それだけだ」


お涙頂戴の、不幸な話など、ない。

お気楽な人生だ。

・・・親はいなくなったけど。


「俺は人の上に立つ様な器じゃないし・・・人の役に立つ様な立派な人間でも無い・・・ましてや、人類救済なんて、俺の柄じゃない」


素直に、告げる。

それが薄情であり、義務の、責任の、期待の放棄であると知りながら。


「俺は、このゲームをただ楽しみたい。ただ、自分の為にすごしたい・・・俺は・・・人類を助ける気なんて・・・ない」


戸惑い、落胆、幻滅、悲しみ・・・


やってしまったが・・・後戻りはできない。


ただ、俺には・・・


「・・・ごめん」


そう口にするしかなかった。


少し時間が欲しい、みんなにそう言われ・・・


そして次の日・・・ギルド、至高の六王(ヘキサグラム)は解散した。

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