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追跡者

ひた・・・ひた・・・


忍び寄る、気配。

刺客?

何故、俺が?


しとしと・・・


土砂降りではないが、雨が降り。

じっとりと湿った空気が、不気味だ。


人通りが絶えた道。

濡れたアスファルトを踏みしめ。


ぴちゃ・・・


此処は、現実(リアル)

俺に、超人の力は無い。


ボディーガードはつけていない。

此処が、基本的に治安が良い地域という事と、女神様のおかげか俺に害する事はできないという空気がある事と・・・

なので、今日までは不都合は無かった。


何時からつけられていた?


とにかく、オートロックのマンションに飛び込めば・・・いやそもそも、近づけば、人が少しはいる筈。

人気(ひとけ)があれば、手出しはしてこない筈。


それにしても、人気という言葉は厄介だ。

会話で使う分には良いのだが。

文章にすると、人気(ひとけ)とも、人気(にんき)とも読め、それぞれで意味が異なる。

人気(にんき)があれば手出ししてこない、では意味が通じ──


「動かないで下さい」


しまった?!

考え事をしている隙に距離を詰められた!


(シルビア殿・・・今のは、部屋に帰ってから考えれば良かった内容かと・・・)


ロリアのツッコミ。

く・・・


「・・・何が目的だ?」


背中に、丸い物が押し当てられている。

硬く、生暖かい。


朧月(おぼろづき)龍司(りゅうじ)、夢守商事の副社長、ですね?」


子供?


振り解き、組み伏せる事はできそうだが・・・

相手が刃物や銃を持っていれば、死ぬ。


「そうだ」


「なら──」


前に逃げるか、横に逃げるか・・・


「私を娘にして下さい」


「え」


しまった。

一瞬、思考停止してしまった。


・・・生きてる?


「駄目・・・ですか?」


ゆっくりと、振り返る。


前髪で顔が隠れた、女の子。

露出が極端に少ない服装。

寒い季節でもないのに、手を手袋で覆っている。


年齢は・・・分からないが、未成年だろう。


「・・・君は?」


「私は、白里(しらゆり)桜花(おうか)です、マイマスター」


淡々とした、温度の無い声。

俺はお前のご主人じゃないぞ。


「年齢は9歳、性別は女、親とは死別、お金は有ります、生殖能力は獲得済みです」


最後の情報。

手は出さねえよ。


(何者でしょうか・・・?暗殺者であれば、絶好のタイミングを逃したようですし。純粋に、シルビア殿の地位と資産に惹かれて?)


ロリアが訝しむ。


「俺は、養子をとる気は無い」


はっきりと拒絶する。

襲い掛かってくるのを警戒しつつ、距離をとる。


「・・・?!」


少女の顔に驚愕が浮かび、膝をつく。


「・・・お願いします、マスター・・・親の遺産を狙う親族に、遺産を全て渡して逃げたのですが・・・使い切ったら、また狙われます・・・未成年者は法律上、親族が親権を持て・・・「子」の資産や身体を自由にできるんです・・・もう・・・嫌です・・・」


少女が、怯えた様に、自らの身体を抱く。

・・・過去に何があったのか。


「お金なら有ります、家事もします、この身体を自由にしても構いません!」


自由にしねえよ。

俺はどれだけ鬼畜なんだ。


俺は、静かに首を振る。

可愛そうだとは思うが・・・



「お願いします・・・マスター・・・マスターしか、頼れる人はいないんです・・・成人するまでで良いので・・・()()()をお助け下さい!」



・・・・・・?!



サクラ?!



「・・・サクラ?」


「はい・・・月下幻想のサクラ、マスターの愛人です」



・・・



幼女?!



俺は、幼女に手を出していたのか・・・?


(シルビア殿・・・私も、月花殿に賛成です。サクラ殿には手を出すべきではありません)


ロリア、いきなり裏切らないでもらえますか?!

もう出さねえよ。


・・・サクラなら、助けてやりたいが・・・

急に養子なんて言われても・・・


「すまない、サクラ。やはり、突然養子と言われても・・・」


「・・・そうですか・・・」


サクラは、項垂れ、


「すみません、無理を言いました。マスターを困らせるつもりも無いし・・・優しさにつけこむ気も有りません・・・弱みを握って脅迫する気も有りません」


サクラが、頭を下げる・・・

サクラ・・・


「ですので、トキに事情を話して、養子にしてもらいます。お姉さんのフェルが魔王となって、人類を絶滅させかけた事や、両親が殺された事等を話した上で、私の境遇を語り、責任論を論じれば、きっと快く受け入れて下さる筈です」


「よーし、分かった。今日からサクラ──桜花は、俺の娘だ。手続きはどうすれば良いのかな?」


脅してるじゃねーか。

トキを巻き込むな。


「こちらで手配しますので、お父さんは何もしなくて大丈夫です」


桜花が、笑みを浮かべる。

・・・普通に可愛い。


(・・・9歳なら、両親の死因はLJOでは無い筈ですが・・・)


・・・はっ?!


--


無事に帰宅。


「綺麗な部屋ですが、大企業の副社長の部屋にしては質素で狭いですね」


桜花が、感想を述べる。


「部屋が綺麗なのは、夢守が掃除してくれるお陰だな。広さは・・・生活できればそれで良い。そこまで物を集めはしないしな。まあ、2人で住むなら、広い部屋に引っ越しても良いが」


「私は実体が無いしな」


「え、夢守さんって誰、と言うか、今女性の声が、と言うか、ロリアの声が・・・ええええ?」


桜花がおもむろに慌てだす。

淡々としてたけど、慌てる事も有るらしい。


「夢守殿は、カゲ殿の現実(こちらがわ)の名だ。私はここだ」


ロリアが、スマホの画面の中で手を振る。


「・・・仮想人格の演算再現?!スマートフォンのスペックでそんな事できる訳が・・・?!」


桜花が目を見開き、スマホを凝視する。

俺は苦笑して、


「一応、最新型だから、高スペックだぞ。それに・・・種を明かせば、NLJOのロリアが現実(リアル)に来ただけだ。スマホの中にいるのも、魔法的何かと考えれば説明がつくだろう?」


「虚数世界の仮存在が、実世界のこちらに、次元転移できる訳が無いですよ?!実世界の存在規則に定義されていない事は実現できないので、スマホの演算能力を超えた現象も起こせません!」


うわ、難しい事を言われた。

すみません、明日も更新できません。


2019/06/15:

桜子→桜花

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