再開
大きな神殿、そう、大きい。
外から、屋根は見えなかった。
中に入っても、天井が視認できない。
数キロくらいなら視認できる筈なのだが・・・?
暗いという事はなく、昼間の様な明るさだ。
月花や女神様(着替えた)に連れられて、向かった先。
ついてきたのは、俺、カゲ、ロリア、オトメ、アポカリプス。
恐らく、女神様の住まい。
天使兵達が居並び・・・彼奴等、強い。
恐らく、単独で魔王フェルをあしらえるレベル。
「でかいな・・・天井が見えない」
女神様は半眼で、
「高さ、など設定していないよ。3次元的な制約を、敢えて設定する意味は無いだろうに」
俺は3次元的存在なんだ。
そんな事言われても困る。
「まあ、腰掛けなさい。その方が落ち着くのだろう?」
いつの間にか、個室にいた。
後ろに出現していた椅子に、腰を下ろす。
「それで・・・私達は、何故呼ばれたのでしょうか?」
「ふむ・・・あのキミが、私に敬意を払うとは・・・年月がキミを成長させたようだね・・・」
女神様が一瞥すると、俺達の前に、ワイングラスが現れる。
「何も、尋問しようという訳ではない。旧交を温める事と・・・少々状況説明を願いたいだけだ」
ひたり・・・ひたり・・・
壁をすり抜けて入ってきてきたのは・・・漆黒の狼に、流水を纏った天使・・・
姿は変わったが・・・
「フェリオに・・・メイル?」
「久しいの、ご主人」
「お久しぶりです、ご主人様」
無事だったのか。
月花同じく、従魔にはなれない、という状況だろう。
「して・・・尋ねよう・・・月花よ」
女神様が、半眼を月花に向ける。
「は・・・はい」
だくだくだくだく・・・
月花がすげー、汗をかいてる。
「シルビアがこの世界に来た・・・キミはそれを知っていて、隠していたね・・・?」
「そ・・・それはですね・・・」
目を泳がせる月花。
「報告せずに、情報を握りつぶしていても、すぐにバレます。そんなの、考えなくても分かる事です。なのに、情報の遮断を試みるなんて・・・何故ですか?!気になります!」
オトメが、身を乗り出して叫ぶ。
ぐふっ
月花がダメージを受けたようだ。
ぐい
オトメの首根っこを引っ張って、座らせる。
「まあ・・・月花の事は良い」
「いえ、そこはちゃんと明確にすべきです!有耶無耶にしてはなりま──むぐ」
オトメの口を塞ぐ。
女神様は、オトメを一瞥すると、再び俺に視線を向け、
「して、シルビアよ。何故、キミが此処にいるんだい?ゲーム環境を整え、βテストが終わってから喚ぶ手筈だったのだけど」
「応募したら、普通に当選の手紙が来ましたよ」
「・・・ちゃんとチェックしていた筈でしたが・・・漏れてしまったのでしょうか・・・?」
メイルが不思議そうにする。
「・・・加えて、そなたの今の状況・・・システム側から、そなたや、その周辺の情報を追跡できない様になっている。それはどんな仕組みだい?」
「ああ、それならひょっとしたら───」
あれ。
何か心当たりがあった気がしたが。
・・・あれ?
「それは分かりません。私は普通にプレイしているだけです」
「ふむ・・・?」
女神様が思案気に呟く。
「私からも尋ねて宜しいでしょうか。俺と関わりがあった者ですが」
「ふむ。ご主人の従魔に関しては、ほぼ全員神格を保持していたのでな。死亡後も、消失はしておらぬ。残って運営スタッフをしているものと、根源へと回帰した者がいる。神格を持たない、フレアは、死亡した時点で消失したがな」
「フレア・・・」
ロリアが呻く。
「とは言え、運営を手伝っているのは、私、フェリオ、月花、の3人だけですけどね。他のものは、根源へと回帰しました・・・そのままの存在では、どうせご主人の従魔には戻れないですしね」
メイルが続ける。
「みんな、根源の一部が投影され、人格を得ていた存在。本体である根源に比べれば、極めて小さい存在うさぁ。根源に還るという事は、大海に一滴の水を落とす様なもの・・・ご主人と冒険した記憶も、心も、薄れて・・・本体に一片の影響を与える事すら困難うさぁ。なので、ご主人様が同型種を従魔にしても、以前の従魔と同じ存在になる確率は、非現実的うさぁ」
なるほど。
でも、何故お前が解説するんだ、アポカリプスよ。
「それで・・・ロリアよ。何故お主が、此処に存在できておるのだ?」
「私は──」
フェリオの問いに、
ロリアが、思い出す様に、唇に指を当て。
確かロリアは・・・あれ?
「・・・私はどうして助かったんでしたっけ?」
「えっと・・・確か・・・ミミックになってて・・・」
「はい・・・扉や宝箱になってて・・・」
俺とロリアは顔を見合わせると、
「「分かりません」」
「そうですか・・・」
メイルが困った様に言う。
そう言えば、
「魔装システムって、どのくらい開放した人がいるんだ?」
「まず、魔装システムというものを初めて聞いたのですが・・・?」
月花が困惑した様に言う。
えええ・・・