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ラックション

「落ち着け、母親なら既に傷を治して、今は気絶しているだけだ。ロリアの実力を見くびるな」


まだ蘇生魔法は使えないらしいので、息があって良かった。


「「え」」


サクラとカエデが改めて母親を見て・・・脱力する。

安堵したのだろう。


カエデが喋らないなら、母親の意識を覚醒させる魔法を使わせても良いのだが。

幸いにも、カエデが喋り始めた。


「あ・・・有り難うございます・・・有り難うございます、お姉さん」


カエデが、サクラに礼を言う。

いや、ロリアに礼を言えよ。

・・・気付かれにくいんだっけ。


「いや、あたいは何もしてない・・・それよりカエデちゃん、何があった?」


「えっと・・・以前から、霊刀を売って欲しいと言っていた男の人がいて・・・ずっとお母さんが断っていたのですが・・・」


霊刀じゃなくて、妖刀な。


「男の人が盗みに入ったらしくて・・・」


ああ。

憑かれたのか。


「なるほど。事情は理解した」


「それで・・・私で試し切りをしようとしたのでしょうか・・・襲いかかって来まして・・・」


「いや、刀に操られていただけだと思うぞ」


「・・・?!」


少女が目を見開く。


「まさか・・・あの刀で、そんな恐ろしい事になるなんて・・・」


「そもそも、さっき、以前売ったときに困った事になったと言ってたよな?」


「あれは・・・あの刀が人斬りの手に渡ってしまって・・・あの刀も、望まぬ罪の片棒を担がされたのです・・・」


「いや、その刀が起こした事件だと思うぞ」


「・・・そんな?!」


支配はロリアが解いた筈なのに、何故信じているのか。

母親は全て分かってたみたいなのになあ・・・


「だって・・・あの刀は・・・凄く美しいんです・・・だからきっと、あの刀は・・・悪くない・・・」


どう見ても禍々しかったけど。


「カギロイ殿。急いだ方が良いのでは?」


そうだった。


「とりあえず、カエデちゃん。あの刀は、俺達が取り返す。あの男が何処に行ったか分かるか?」


多分分からないよな。


「あの刀の気配であれば、追う事は可能だが?」


ロリアが告げる。

そうだな、ロリアに任せるか。


「よし、行くか」


サクラ、ロリア、オトメが頷く。


--


落ち窪んだ目。

あたかも体表を多う粘液の様に流れる、返り血。

錆びた鉄の様な・・・血の臭いが漂う。


息があった者は、ロリアとオトメが治療したが。

死亡した者は助けられない。

プレイヤーであれば、ログイン禁止期間が終われば再びログインできるが。

現地人の人は、そうはいかない。


十数人程、被害が出たようだ。


「・・・つまらない真似をしてくれたな」


サクラが、牙を剥き出しにして睨む。


「殺す・・・殺す・・・殺す・・・」


・・・怨霊の気配は、無い。

これは・・・


「刀に操られている、訳では無さそうですね」


ロリアが告げる。

刀は無実では無いだろうが。

少なくとも、この惨劇を引き起こしたのは、この男の意思だ。


「殺おおおおす!」


男が駆ける。

サクラが駆ける。


カッカッ


サクラは、以前入手したSRの剣迎え撃つ。

男の獲物は、当然、妖刀。


サクラも相当強いのだが・・・男に競り負けている。

恐らく、妖刀による強化がその理由だろう。


「くそ・・・くそ・・・くそうっ!」


サクラが打ち込むが・・・男に凌がれ・・・そして・・・


ザンッ


男の一撃が、サクラの腹を薙ぐ。


「がっ・・・」


そして、続く軌跡が・・・サクラの首を・・・


ビッ


オトメのレーザーが、男の腕を斬り飛ばす。


「そこまでです。勝負ありました」


男も負けたけどな。

腕を斬り飛ばされた途端、意識を失って倒れる男。


「く・・・情けない・・・」


サクラの目から、涙がこぼれ・・・


「最初から強い者など、いない。為すべき事を為せぬなら、その力不足を恥じよ。そして、強くなれば良い」


ロリアが、サクラの治療をしながら、告げる。


力不足、か。

俺もそれを反省したからこそ、今回は戦闘職に就くと誓って・・・


・・・


ああ、そうだ。

バグって、レンジャー系列以外に就けないんだった。


・・・あれ?

バグの話、誰から聞いたんだっけ。

月花・・・では無いよな?


シャン・・・


錫杖の音。


白いローブに身を包み、穏やかな微笑を浮かべた少女・・・

同じく、白いローブに身を包んだ者を従えている。


「これは・・・驚きました。貴方達が、止めて下さったのでしょうか?」


驚いた顔には見えないけど。


かなり力を感じるな・・・


(恐らく、この少女は・・・六英雄の1人、アリスかと)


・・・俺も人の事言えないけど。

随分な若作りだ。

16歳くらいの少女・・・現実(リアル)では、35歳を超えている筈。


「アリス様」


周囲の神官が促す。


「・・・そうですね」


アリスは、死者に歩み寄ると・・・まさか。


「主よ・・・憐れみ給え・・・」


ボウッ


黄金に輝く巨大な魔法陣が、アリスの足元に展開される。

それが幾重にも重なり・・・


そして・・・


「リザレクション」


ゴウッ


黄金の光の柱が立ち上り・・・そして・・・

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