結成
街外れ、森の側。
湖の畔の、静かな場所。
「作るよ」
俺は、そう呼びかけた。
まさか、自分がまたギルドを作る事になるとは・・・
「すっごく・・・楽しみ!!」
可愛らしい声で言ったのは、レイ。
透き通った桃色の髪の女の子。
外見は、14歳くらいか。
幼さが滲み出る顔立ちで、本当に可愛い。
・・・ちょっと、胸がアンバランスに大きいのだけど。
「結構簡単に集まりましたね。もっとかかるかと思いましたぁ」
穏やかに言ったのは、エレノア。
明るい緑の髪、可愛いらしい顔立ちの男の子だ。
「まあ、前回もほぼあたいらで集めたしな!」
燃え盛る様な赤髪の姐御。
サクラが豪放に笑いながら言う。
「さくさく集まると、楽しいよね」
人好きのする笑顔で、ユウタが言う。
モテます、好青年です、って感じの男性だ。
清流を思わせる、透き通るような青い髪。
「まあ、ウチなら1人でも余裕だったけどにゃあああああ!」
調子良い事を言うのは、トキ。
白髪、猫目の女性。
レベルの割に知識は多く、プレイスキルもある。
高スペックなのだが・・・ここぞという時にへっぽこ。
じゃらり
俺は、取り出したクラウンジュエルの山・・・ギルド作成アイテムの感触を楽しむ。
「世界に告げる・・・メイクギルド、月下幻想!」
両足を広げ、両手を天にかざし、宣言する。
懐かしい感触。
ギルドが作成され、世界と繋がる──
光の柱が上がり・・・
降臨したのは、妖精。
まさか・・・
「・・・にゃあ?」
トキが訝しがる。
他のメンバーも、驚いた様子だ。
少し前、ギルドの作成に2回立ち会った。
その時には、こんな演出は無かった。
妖精が口を開く。
淡々とした、しかし、懐かしい声が紡がれる。
「ギルド作成は、正規のメニューから実施して下さい。オールドコードを直接コマンド・・・そもそも、どうやってオールドコードを入手したのです──え?」
妖精も気付いたようだ。
「・・・まさか・・・ご主人様・・・?」
「月花・・・なのか?」
等身大になり、羽も増え、神々しくなったが・・・何となく分かる。
「知り合いなのです?」
エレノアが興味深そうに尋ねる。
「綺麗・・・」
レイが呟く。
「ああ」
そうだ。
月花は、俺の大切な──
「月花は、俺の大切な、古い仲間だ。昔、右も左も分からなかった頃、知り合ってな・・・それから、長い間・・・本当に長い間、旅をした」
懐かしい。
「旅に出て世界をまわりたい・・・そう、俺に願い出た・・・変わった妖精だった・・・それが出会いだったな」
「もうボケたんですか?月日は残酷ですね」
「ちょ?!」
俺の懐古を、月花がぶった斬る。
何故?!
「何か、カギロイさんの話が違ったの?」
ユウタが尋ねる。
「私は自分から望んでご主人様に付いていった訳では有りません。拉致に近い・・・というか、拉致です」
月花が半眼で言う。
恥ずかしいのだろうか?
誤魔化さなくても良いと思うが。
そう言えば──
「思い出したよ。月花は良く、人の話に、嘘ですね、って口を挟むのが好きだったよな」
「それは別の人ですね」
月花が淡々と言う。
あれ・・・?
「なあ、ひょっとして、ギルド名の月下幻想の月下って、月花ちゃんの事かぁ?」
サクラが尋ねる。
「な・・・そそんな訳──」
「まったく、ご主人様は、何時までも私を忘れられないようですね」
俺の否定に、月花が被せる。
違うんだよ。
純粋に、月夜の下で・・・こう・・・
くそう。
「ともかく・・・これは、監視の必要が有りそうですね。このギルドは、私が管理妖精として管轄しましょう」
「それは助かるな」
俺は素直に感想を述べる。
月花は懐かしい存在だし、極めて優秀な管理者だ。
「皆さん、よろしくお願いします──」
月花が深々と頭を下げ、就任の挨拶をする。
「──ご主人様は根は良い方なので、仲良くしてあげて下さいね」
就任の挨拶じゃなかった。
お前は俺の何なんだ?!
「・・・まあ、これからよろしくな」
俺は苦笑すると、月花に、みんなに告げた。
これから始まる、この、平和な世界に。