終演
魔王城攻略。
ゲームの最終イベント。
終演。
人間を滅ぼす様に配置された魔王軍も。
魔王軍に苦しめられるべく配置された人間も。
ゲームのプレイヤーとして招かれた異世界人、我々も。
もうBGMが流れるなら、勝利目前のポップな音楽が流れているだろう。
ラスボス前にレベルを上げすぎてしまい、最後の作業だけが残っている状態。
ゲーム内でのプレイヤーの死亡は激減した。
とは言え、参加プレイヤー数上限は確実に増加している。
老若男女問わず、一定数が毎日召喚されている。
(流石に自律出来ない赤子等は対象外だ)
召喚は、始まりの街の召喚広場に。
そこで適正検査、配属振分け、訓練・・・
リアルで巻き込まれる人がいる以上、早急なクリアが必要、らしい。
魔王は、逃亡を図って再起・・・といった考えは無い。
2度目の人生を与えられ、僅かの間すごした・・・それでもう満足、とのことだった。
植え付けられた感情、人間への憎悪、にも疲れたらしい。
魔王軍は、最期の戦いに向けて準備・・・という雰囲気では無い。
実は、昨日は最期の晩餐で贅沢の限りを尽くし、お祭り騒ぎだったのだ。
・・・豪胆なのはフェル。
心臓に毛が生えているのだろう。
種族が魔族なのも利用してか、ちゃっかりお祭りに混じっていた。
俺が指摘しなければ、みんな気付かなかった。
むしろ、現地の人間の方が、事態を把握していないのかも知れない。
魔王を倒した後、この世界が続く保証はないし・・・
というか、続くなら俺がやり続けたい、永住したい。
最期くらい、高見の見物ではなく、討伐部隊に参加。
と言っても、盗賊ギルドのメンバー──全員覆面黒装束──に紛れてだが。
五王も気付いて無──フェルがちらちら見てくるから、四王も気付いて無い。
トラップに伏兵、正面突撃・・・襲い来る魔王軍を、人間軍が危なげ無く倒して行く。
魔王軍は、皆、悔いの無い顔だ。
ゴッ
斬り込んで蹂躪していた魔族の女性を、ミストが切り裂く。
ロリアの幼馴染にして、四天王の1人・・・俺も酒を飲み交わした仲だ。
どっちが勝っても複雑な心境になる戦い・・・始まりの街で祈って待っているロリアが正解かとも思う。
いや、見届けると決めたんだ。
魔王軍は皆納得しているし、人間軍は背負う物がある。
この世界の終演を、見届けねば。
そして・・・
フェルの放った光の槍が、魔王を貫いた。
崩れ落ちる魔王。
まだ終わらない。
迫る、魔王軍の生存者。
六王の、そして数多くのプレイヤー達の攻撃が、着実に終わりをもたらし・・・
日が傾く頃には、魔王軍は完全な壊滅をしていた。
・・・まあ、実際には、首都以外の街にはまだ居るんだけど。
それはそれ、クリア条件は魔王討伐なので、問題無いだろう。
これで、このゲームは・・・俺の愛する世界は、終わりを告げる。