- 聖堂のリング -
個性的な先生方の紹介のあと、入城の儀式が終わり、コロンたちはクラス分けをすることになった。
- 聖堂のリング -
「入城の儀式が終わったばかりですが、これから、クラス分けをしますね。クラス分けはとても重要なことです。」
シャルロッテ先生が会話を続ける。
「この城には5つの大きな尖塔があるのがわかると思いますが、それぞれが各クラスの寮になっています。」
コロンはふと、この城にやってきたときの事を思い出した。城の周囲をぐるりと囲むように五つの巨大な塔が建っているのを思い出したのだ。まさかあの巨大な塔を毎日登ったり降りたりしなければならないのだろうか。そうなったら塔を登ったり降りたりするだけで日が暮れてしまいそうである。
コロンは“なるべく下の階になりますように”と祈るしかなかった。
シャルロッテ先生が話を続ける。
「それぞれのクラスについてですが、
“ルベライト・ドルフィン”は優しさの溢れる者が
“ヘリオドール・スタリオン”は精力的で快活な者が
“セレナイト・イーグル”は勇敢で正義感のある者が
“ラーズリー・アウル”は判断力と探求心のある者が
そして、“グラファイト・ウルフ”は冷静さと智謀に富んだ者が
それぞれ選ばれやすくなっていると言われています。どのクラスも今までに多くの有名な魔法使いやココットを生み出してきました。」
ショコラが目をきらきらさせながら手を挙げた。おそらく他のココットたちも気になっている事を知りたいのであろう。ショコラは聖堂にひびくような大きく元気な声で質問をした。
「せ、先生! マリアージュ様はどこの出身なんですか?」
シャルロッテ先生はショコラの方を見て微笑みを返し、“やっぱり気になるわよね”と言いたげな表情をしながら口を開いた。
「マリアージュ様はセレナイト・イーグル出身よ。でも、たとえセレナイトクラスに入れなくてもガッカリすることはありません。他のクラスも素晴らしい魔法使いやココットたちを多く輩出していますからね。」
その言葉を聞いてショコラは思った。絶対にセレナイトに入りたいと。そしてマリアージュに仕え、偉大な使い魔になるのだと。その目はまるで炎がともったようにめらめらと燃えている。
一方のコロンはどのクラスが良いのかわからなかった。
自分は特別優しいとは思っていないし、運動も得意ではないのでヘリオドールも向いていない。勇敢でもないし、何か計略を立てたこともない。知識も乏しく、魔法だって簡単な炎を出してろうそくに火を付ける事くらいしかできない。どのクラスも向いていないと思っていた。
それはフラッペも同じような気持ちであった。彼は高所恐怖症で箒にすら乗れない・・たとえ成長して羽で飛べるようになったとしても、まともに空も飛べないだろう。
二匹は思っていた。もしやここでクラスに入れなかった場合は、失格となって追い出されてしまうのだろうか? 皆に笑われながら情けない思いをするのだろうか? そんな不安を感じていた。
シャルロッテ先生が皆の様子を見ながら口を開いた。
「はい、それではクラス分けを始めますね。その前にクラスを担当する先生方に来て頂きましょうか。」
シャルロッテ先生がそう言うと、壇の後ろに3つの扉が現れた。一つは雷をまとった扉、一つは草木で覆われた扉、もう一つは漆黒の闇で覆われた黒い扉だ。
そして扉の中からは三人の魔法使いが現れた。雷の扉からはカイザー先生が、木の扉からはエクレア先生が、黒い扉からはクグロフ先生が現れた。
シャルロッテ先生は三人が現れたのを確認すると、ココットたちに向かって話し始めた。
「みなさん、先ほどお会いされましたよね。カイザー先生はヘリオドールの担任を、エクレア先生はラーズリーの担任を、クグロフ先生はグラファイトの担任をしています。」
それを聞いていたココットたちの一部は、グラファイトにはあまり入りたくないなと思った。理由はもちろんあの冷たくて怖そうな表情をしているクグロフ先生の影響である。彼のクラスに入った場合、何をされるのかわかったものではないからだ。触らぬ神に祟り無しである。
その次に不人気なのはヘリオドールのようであった。おそらくはカイザー先生の大きくて五月蠅い声のせいであろう。
「それと、私の隣に居るシフォンはセレナイトの担任です。そして私は最初にも言いましたが、ルベライトの担任です。これからクラス分けが行われますが、クラスの決まった方は先生方の前に集まってくださいね。」
そう言うと、シャルロッテ先生以外の三人と一匹は壇の前に一列に並んだ。
シャルロッテ先生が会話を続ける。
「クラス分けは簡単です。この聖堂に古くから伝わるこのリングを使います。」
すると、シャルロッテ先生は一つの巨大なリングを大きな袋取り出し、壇の中央にある机の上に置いた。
「このリングは1300年前に偉大な魔法使いとココットが契約を結ぶために使ったと言われているリングです。契約を結んだココットが亡くなった後、このリングにはその魂が封じられました。このリングが、皆さんに対してどのクラスが良いか教えてくれることでしょう。それでは、よろしくお願いしますね、マロン。」
シャルロッテ先生がそう言うと、突然机の上に置かれたリングが動き出し、空中に浮かび上がった。そして、ぐにゃぐにゃと曲がり、猫耳のついた顔のような形に変化した。
リングの中央には青く光る玉が三つ光っている。さながら目と口のようだ。
「ふわ~、よく寝たわあ。あらシャルロッテ、1年ぶりねえ。」
突然リングがしゃべり出した。すると、リングはふわっと浮きながらコロンたちの目の前に飛んできて、じろじろとココットたちの顔を見つめ始めた。リングは後ろを振り向き、シャルロッテ先生に向かって語り始めた。
「ふんふん・・・今年もクラス分けの時期が来たのね。この子達が今年の新入生?」
「そうです、マロン。今年もお願いね。」
「任せておいて。もう千年以上もやってるんですから。じゃあ始めましょうかしらね。」
リングが突然しゃべり出したのを見て、ココットたちはびっくりしていた。まさかリングが喋り出すとは思っていなかったのである。また一部のココットたちはマロンを見て怯えていた。無理もない、マロンはおそらくはオバケ、ゴーストの一種であろう。
リングはコロン達の方を振り向くと、語り始めた。
「ウフフ。私はオバケだけど、怖がらなくていいわよ。取り憑いたりなんかしないから。これから名前を呼ぶから、呼ばれた人は私の前に来て右手を出してちょうだいね。それじゃ、最初は・・プラリネさん、いらっしゃい。」
一匹の薄紫色をした垂れ耳のココットが呼ばれた。プラリネはおそるおそるリングの前に行った。コロン達はその様子を息をのんで見つめていた。これから何が起きるのだろうと。
プラリネが聖堂のリング――マロンの前に行くと、マロンは青白い炎でできたような口を開いてプラリネの右手のリングにかぶりついた。
プラリネは“ひゃっ”と小さな叫び声のような声をあげ、恐怖のあまり右手を引き抜こうとしたが、がっちりとかみつかれていたためその場から逃げることはできなかった。
少ししてからマロンが口を離すと、プラリネの右手のリングは青白い炎で覆われていた。その炎は不思議なことに全く熱くはなく、神秘的な光を発していた。
「うーん、この子は・・・優しい子ね、ルベライトがいいわ。」
そうマロンが言うと、プラリネの腕に巻き付いていた青白い炎がフッと消えた。プラリネのしていた鉄のリングは、ピンク色の宝石のような色をしたリングに変わっていた。シャルロッテ先生がルベライトと聞いて声を挙げた。
「まあ、私のクラスじゃないの! プラリネさん、一緒にがんばりましょうね。」
「は・・・はい、先生!」
プラリネはまだガクガク震える足でシャルロッテ先生の前に向かって歩いて行った。
次に名前を呼ばれたのはオレンジ色の癖っ毛をしたタルトというココットである。タルトは名前を呼ばれると「はい!」と元気な声でリングの前に行き、そしてプラリネと同じように右腕にかみつかれた。
「うーん、キミは・・ヘリオドール!」
タルトのリングは黄色いリングに変わった。カイザー先生が笑顔で“よし、こっちだ! ハッハッハ!”と言いながらタルトに手を振って呼び寄せた。タルトは駆け足でカイザー先生の方に向かって走っていった。
次にタルトに続いて呼ばれたのは青毛色をしたラムネだった。ラムネは大きい本を抱えながらマロンの方へと歩いて行った。
「えっとあなたは・・そうね、ラーズリーがいいわ!」
ラムネは、ラーズリーに決まった。深く青いリングである。エクレア先生が手招きをして、ラムネを呼ぶ。
ラムネの次に呼ばれた茶色い毛色をしたクッキーとチョコはルベライトになり、その次に呼ばれた白毛のココはセレナイトに決まった。
「次は・・・カーディナルくん!」
コロンたちはその名前を聞いて、今朝出会った少し嫌な感じのしたココットであることに気がついた。カーディナルは名前を呼ばれると何も言わずに堂々とマロンの前に向かっていった。
カーディナルは一体どのクラスになるのだろうと、コロンたち三匹は食い入るようにその様子を伺っていた。
「あいつと同じクラスだったら、ちょっとやだなあ・・・」
とフラッペがつぶやいた。コロンも少しはそう思ったが、同じクラスであった場合は仲良くなれるかもしれないと少し期待をしていた。
「グラファイト!」
マロンはカーディナルの腕にかぶりつく前にその名を叫んだ。そしてその瞬間、カーディナルの腕輪は漆黒のリングに変わっていた。周囲がどよめく。なぜなら、マロンが腕輪に噛みつく前に決めてしまったからだ。
カーディナルは当然だと言わんばかりな顔つきで“フッ”とだけ言うと、クグロフ先生の前に向かって歩いて行った。クグロフ先生は微動だにせず、その冷たい目でカーディナルの方を少しだけ見ると、すぐに目線を元に戻した。
ココットたちの中には希望通りのクラスではなかったのかやや落胆した者も居れば、嬉しさのあまりに泣き出すようなココットもいた。
マフィンはルベライトかラーズリーかセレナイトにするか悩まれ、5分間以上もマロンに噛みつかれたままだったが、結局はルベライトクラスに決まった。そしてマフィンに続いてショコラが名前を呼ばれた。
「次は・・ショコラさん! いらっしゃい。」
ショコラはすくっと背筋を伸ばし、「はい!」と声をあげ、きびきびとした足取りでマロンに向かって歩いて行った。
「じゃ、始めるわね。」
マロンがショコラの片手にパクッとかぶりついた。
ショコラは表面上は堂々とし、勇敢なフリをしていたが、内心は恐怖でいっぱいであった。セレナイト以外のクラスに入ることは考えていなかったので、万が一他のクラスになったらどうしようかと思っていたのだ。
ショコラは目を閉じ、必死に念じていた。“セレナイト!セレナイト!絶対にセレナイト!セレナイトじゃなきゃいや!“と。
「うーん・・・あなたは・・・そうね、賢いからラーズリーでもいいし、優しいからルベライトでもいいし、力持ちだからヘリオドールでもいいわ。勇気もあるわね。うーん、難しいわね・・・。でも、そうね、あなたがそう思うのなら。セレナイト!」
ショコラはマロンの言葉を聞くと、とびはねて「やったー!!」と叫んだ。ショコラはぴょんぴょんと跳ねながらシフォン先生の前に向かっていった。そしてそのままシフォン先生にぎゅうっと抱きついた。
シフォン先生はちょっと困惑したような顔をしながらショコラの頭を撫でた。
ショコラに続いて、茶毛で片耳が丸いナッツ、黒毛でくるくるシッポのリコリス、黄色い毛でモフモフとしたマフラーをしているパンドーロが呼ばれた。ナッツはヘリオドールに、リコリスとパンドーロはグラファイトになった。
次々と名前が呼ばれ、ココットたちのクラスが決まっていった。そして半数を少し過ぎたところで、名前を呼ばれたのはフラッペであった。
「フラッペくん!こちらにどうぞ。」
「はあ・・は、はい・・!」
フラッペはあまりの恐怖でガチガチになりながら前に出て行った。無理もない、これから本物のオバケと接するのである。それにちゃんとクラスに入れる保証もないのだ。フラッペはマロンの前に行くと、震える右手をゆっくりと差し出した。
マロンがフラッペの出した手首をぱくっと噛んだ。するとフラッペは“ひゃあ!”と叫び声をあげ、そのまま固まってしまった。フラッペはその場でオシッコを漏らしそうなくらい怯えてたが、必死に我慢した。
「ウフフ、そんなに怖がらなくてもいいのに。でも、がんばったわね。その勇気を称えて・・セレナイト!」
フラッペはそう言われると、その場でガクガクと崩れ落ちそうになったが、様子を見ていたショコラとココが駆け寄ってきて倒れそうになったフラッペを支えた。
ショコラが“だいじょうぶ?”と声をかけると、フラッペは“う、うん・・・なんとか・・”と震える声で応えた。そしてそのままショコラとココに軽く抱えられながらシフォン先生の前へとよたよたと歩いて行った。
フラッペに続いて他のココットたちも次々にクラスが決まっていった。そして呼ばれていないココットが残り数匹となったころ、ついにコロンの名前が呼ばれた。
「次は・・・コロンくん! こちらへどうぞ。」
コロンは名前を呼ばれると、“はい!”と力強く言い、マロンの前に向かっていった。カーディナルとクグロフ先生はコロンの方をじいっと見つめている。フラッペとショコラは、“コロンも自分たちと同じセレナイトクラスになりますように”と祈っていた。
コロンは思っていた。もし、何分間もかみつかれたままで、ついにはしびれをきらしたマロンに“あなたはどのクラスにも入れないから、お帰りなさい”と言われたらどうしようと。
今の所そんなココットは一匹も居なかったが、万が一ということもある。
一抹の不安を感じながらも、コロンはマロンの前に行き、右手を差し出した。
「じゃあ、始めるわね。ぱくりっ」
マロンがコロンの片腕にかぶりついた。コロンは恐怖のあまり一瞬目を閉じてしまったが、痛くも痒くもなく、むしろやんわりと温かい感覚が右手に伝わってくるのを感じた。
マロンはコロンにかぶりつくと、小さい目の部分の炎を大きくさせて、驚きの表情をした。そしてそのままコロンの方を向いてじっと見つめたのである。マロンは口を離すと、コロンに対してやや驚きや戸惑いの混じった震えたような声で話し始めた。
「き、きみは・・・いえ、あなたは一体?! オーラからなんとなく感じていたけど・・・そ、そんな・・こんなことって・・・! いえ、そんな・・・だめ・・・!」
マロンが尋常ではない様子を見せたので、コロンはどうしたのかと聞いた。
「ど、どうしたの・・?」
マロンは黙ったまま何も答えない。コロンは怖かった。他とは全然違う異様な反応である。他のココットたちや先生方・・そう、クグロフ先生以外は何事が起きたのかとその様子をじっと見ていた。
「ご、ごめんなさい・・・・・あなたのクラスは、私には選べないわ・・・。」
マロンが悲しそうな表情と声でコロンに答えた。
コロンはその言葉を聞いて、愕然とした。ああ、不安に思っていたことが的中してしまったと。自分は何の取り柄もないダメダメなココットなので、どのクラスにも入れないのだと。これからどうなってしまうのだろうと、様々な思いがコロンの頭の中を駆け巡っていた。
マロンの言葉を聞いて、コロン以外の先生やココットたちも驚きの表情を見せていた。シャルロッテ先生が声を挙げた。
「こ、これは・・ど、どういうことですか、マロン?! 未だかつて1000年以上、あなたが選べなかった事は一度もなかったはずです! い、一体なぜなのですか?」
シャルロッテ先生がやや強い口調でマロンに問いかけた。フラッペとショコラも悲しそうな表情でコロンを見ている。
「そ、そんな・・どうして・・? なんでコロンだけ・・?!」
「コロン・・かわいそう。なんでなの、ひどい・・・。」
様子を見ていた他のココットたちも、ざわざわと騒ぎ始めた。マロンは黙ってうつむいたままだったが、少し経ったのち意を決したかのような表情で答え始めた。
「だって・・この子は・・・・」
マロンが何かを言おうとしたとき、クグロフ先生が突然杖を取り出し、マロンめがけて魔法を放った。黒いもやのようなものが杖の先から飛んでいき、マロンの口の部分の炎に当たった。
魔法を当てられたマロンは口の部分に×印のマークが付いていて、なにやらもごもごと言っている。どうやらしゃべれなくなってしまったようだ。
クグロフ先生は低く冷たい声でマロンに言い放った。
「それ以上は何も言うな。・・・そして、早く選べ。これは命令だ。」
クグロフ先生がそう言うと、マロンの口元にあった×印のマークは消えてなくなってしまった。マロンが少し困ったような表情をしながらクグロフに向かって言った。
「う・・・わかったわ。でも、本当にいいのね・・?」
マロンがクグロフ先生に向けてそう尋ねると、クグロフ先生は軽くうなずいて杖をしまった。マロンはコロンの方を向くと、話を続けた。
「えっと・・コホン、じゃあ、やり直すわね。」
そうマロンが言うと、再びコロンの右手にぱくりとかぶりついた。コロンは先ほどの事でかなり戸惑っていたが、これでもしかしたら選んで貰えるのかもしれないという安堵感も感じていた。
「あなたは・・・そうね、とても難しいわ。どのクラスにも向いていて・・・正義感もあって、強い探求心も、優しさもあって、才能もあって、機略にも富んでるわ。うーん・・・。」
マロンは再び悩んでいるようだったが、先ほどとは違った反応だ。コロンは思っていた。先ほどの事もあったせいか、もはや入れるので有れば何処でも良いと。ただし、ショコラとフラッペがセレナイトなのだから、できることなら自分もセレナイトに入れればいいなとも思っていた。
「うーん、そうね・・。あなたはまだ城に入ったばかりなのに、もう仲の良い友達がいるのね。・・いつかきっと、彼らが力を貸してくれる時が来るわ。それなら・・・あなたに一番相応しいのは・・・セレナイト!」
マロンがそう言うと、コロンの右腕の腕輪は白く光るリングになった。コロンはその場でぼうっと立ち尽くした。クラスを決めて貰えた、さっきのようにどこにも入れないとは言われなかった、その事で頭がいっぱいになっていたのだ。
コロンの所にフラッペとショコラが駆け寄り、コロンに祝福の言葉をかけた。
「やったね、コロン!」
「おめでとう! 私たちと一緒ね!」
マフィンはコロンが自分と同じクラスではないことが少し残念ではあったが、コロンのクラスが無事に決まったことを喜び、笑顔で拍手を送っていた。
コロンはショコラとフラッペに手を引っ張られながらシフォン先生の所へと向かったが、無事にクラスが決まった喜びと同時に、先ほどマロンが言いかけたことが気になっていた。
(あの時、マロンは・・・何を言おうとしたのかな・・・?)
しかしマロンはコロンにそれ以上語ることはなく、まだクラスの決まっていない他のココットたちの名前を呼び始めるのであった。
「えっと・・・次は、タピオカくん!」
フラッペに似たような丸い耳をしたタピオカが名前を呼ばれた。タピオカはルベライトに決まった。彼に続いて、他のココットたちも名前が呼ばれていった。そしてついに全員のクラスが決まったのであった。
全員のクラスが決まると、マロンは周囲を見渡して言った。
「ふ~、これで全員決まったわね、みんな、おつかれさま!・・今年はちょっとびっくりしたことがあったけど、みんな決まって良かったわ! 私も少し疲れたから、お休みさせて貰うわね。」
そう言うとマロンは空中でぐにゃぐにゃと曲がり、元の大きな一つのリングに戻ってしまった。シャルロッテ先生が中央のテーブルまで行き、リングを手に持って“お疲れ様、マロン”と優しく声をかけた。そしてリングを袋にしまうと、そのまま全員に向かって話を始めた。
「みなさん、お疲れ様でした。これからは同じクラスの皆さんがあなたたちの寝食を共にする家族です。今後のことは各クラスの先生方から詳しくお話しを聞いてください。みなさんがこれから寝泊まりする塔での生活について教えてくださるでしょう。それでは、解散いたします!」
シャルロッテがそう言うと、各クラスの先生達は自分の前に居るココットたちを移動させ始めた。
グラファイトのクグロフ先生は何も言わないまま魔法で黒色の扉を出現させた。そして、自らのクラスになったココットたちに対して扉の中へ入るように言った。
ヘリオドールのカイザー先生は『とりあえず外に出るか-!俺に付いてこい、塔まで競争だ!』と言いながら、ココットたちを連れて聖堂の外へ駆けだしていった。
シャルロッテ先生とエクレア先生はココットたちを集めてなにやら説明を始めている。
セレナイトのシフォン先生も、コロンたちを集めて、話を始めた。
「はーい、みんな集まって! これからセレナイトの塔に案内するわね。」