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使い魔コロンと魔法の世界  作者: 雪兎ぽよん
2/5

- 城門 -

 入城式というのはココットたちがこの城に入り、魔法使いたちに仕え、一人前になるための最初の儀式である。いわば入学式のようなものだ。



「城門の閉まる時間は・・・8時! あと6分しかないぞ!?」

「あわわ・・・城まで結構距離があるよ?! 走って向かっても10分はかかりそう・・。」

「大丈夫よ、コロン、フラッペ。私にまかせて。」



 そう言うとショコラは魔法を詠唱し始めた。


「風よ・・私たちに力を、恵みを、光を!エアロ = ウォーク!」


 ショコラがそう言うと、コロンたちの体が宙に浮き、足が軽くなった。待ってましたとばかりにフラッペが歓喜の声をあげる。



「やったあ!流石ショコラ!」



 続けてコロンがあたふたしながらショコラに質問する。



「しょ、ショコラ・・この魔法は一体?!」

「これはね、体重を軽くして、足の速さを5倍にする魔法なのよ。 でも、長くは持たないわ。持って3分よ。 急いで城に向かいましょ!」



 コロンたちは急いで城に向かった。他のココットたちもそれぞれ魔法を使ったりスクロールを使ったりして城に向かう。中には徒歩で必死に走りながら向かう者も。


――ギギギギィ

 鋼鉄の柵でできた城門が閉まり始める音だ。残りはあとわずか3分だ。


「フラッペ、もう少し急いで!」

「わ、わかってるってショコラ! けど僕は走るのが苦手なんだよ-!」

「だ、大丈夫だよ二人とも! 何とか間に合いそう!」

「はぁ、はぁ・・・」



――ギギギギ


「あと少し・・!」

「飛び込め-!!」



 その時、コロンはふと後ろを振り向いた。そこにはまだ多くのココットたちが居た。このままでは彼らは確実に入ることはできないだろう。・・・しかし、このままでは門は閉じてしまう。

 コロンはとっさに考えた。一体どうすれば彼らが入れるかを。


 どうすれば門が閉じるのを遅らせることができるかを。




――グニャッ

 次の瞬間、とうとう鋼鉄の柵でできた城門は閉ざされてしまった。

 ・・・しかし、何か様子がヘンである。



「ふぎゅっ!」

「ふう・・な、なんとか間に合ったわね・・」

「ぜえ、はあ・・ってあれ、コロンがいないよ・・?」



 フラッペとショコラは何とかギリギリ門が閉まる前に中に入ることができたようだ。しかし、先ほどまで一緒に走っていたコロンが見当たらない。もしや入れなかったのだろうか・・・?

 フラッペがあたりを見回すと、なんと門にぎゅうっとはさまれて半分潰れかかっているコロンの姿があった。さきほど門の閉まる音がおかしかったのは、コロンが門にはさまれてしまっていたからである。



「ええ!? こ、コロン!?」

「ちょ、ちょっと待ってて! 今、引っ張ってあげるから・・!」

「むぎゅぎゅ・・・ふたりとも・・待って・・! まだ、みんな入れてない・・。」

「えっ・・?!」



 ショコラが門の外に目をやると、そこにはまだ外に取り残されているココットたちの姿があった。彼らは落胆したような表情でこちらを見ている。



「コロン・・・そういうことね。わたしに任せて!」



 ショコラはそう言うと、門に手を伸ばしぎゅっと力を入れた。

 門は鋼鉄製で、厚さは1mほどはある。豪華でありながら荘厳な模様、そして竜の彫像が彫られている。こんな重い門など到底一匹では力任せで動かせるはずがない。魔法を使うでもなければ無理だろう。

 しかしそこまで力を高めるような魔法は、高位の魔法使いにしかできないような魔法だ。ショコラのような見習い・・それも師事する前のココットが到底扱えるものではない。



「よいしょ・・っと!」



 ショコラはそう言うと門を開け始めた。その様子を見ていた誰もが一人では到底無理だろうと思っていた。しかし次の瞬間、目の前で信じられない光景が起きたのである。



――ギギィ・・

「ふう・・・ちょっと重かったけど、開いたわよ。」

「しょ、ショコラ・・?!す、すごい・・・。」

「相変わらず、とんでもない馬鹿力だなあ、ショコラ。」



 その様子を見ていたココット達は、目を丸くして居た。まさかあんな小さい体のどこにあのような力があるのかと。通常では信じられないことであった。ショコラの家の隣に住んでいたというフラッペだけは大して驚いていない様子であったが。



「わあーすごい!!これで入れるぞー!!」



 外に残されていたココットたちが次々と城の中へと入っていく。しかしそのとき、再び門が閉まり始めた。



「いけない!またすぐ閉まりそうだ!」

「私が少しの間抑えてるわ!その間に・・・!

――って、な、、なんなのこの門・・!さっきとは全然重さが違うじゃない・・!」



 ショコラが門をぎゅっと抑える。しかし門は先ほどとは違いはるかに重くなっていた。


 この城門は普通の門ではない。時刻通りに閉じるように“命令された”魔法の城門である。おそらく、魔法をかけているのはマリアージュであろう。

 閉じる時刻が過ぎた今、その魔法の“命令”がより強く作用しているに違いない。



「ショコラ、だいじょうぶ?!僕も手伝うよ!」

「ボクも!コロンとショコラだけに任せてられないからね!」



 コロンとフラッペもショコラに手を貸す。その様子を見ていた他のココットたちも心が動かされたのか、次々と門の前に集まり三匹に力を貸し始めた。



「おいらたちも手を貸すよ! よいしょ、うんしょ!」

「俺たちも手を貸すぞ!」

「外に居るみんな、早く中に入るんだ!」



 外に居たココットたちが次々と急いで中に入っていく。

 その様子を一匹のココットが嫌らしい目つきで遠くからじっと見ていた。目は鋭く、銀色の美しい毛並みをしている。



(あいつら、何をやってるんだ・・?ライバルは一人でも少ない方がいいというのに。)



 そう心の中で思っていた白銀色のココットは、ぼそっと呟くと指をパチンッと弾いた。



「・・・え!!?き、急に力が・・・。」

「うう・・・僕もなんか力が抜けて・・・。」

「ショコラ・・・?フラッペ・・!?一体これは・・・。」



 ショコラの様子がおかしい。・・・いや、様子がおかしいのはショコラだけではなかった。他のココットたちも様子がおかしい。



「なんか力が入らないよ・・・。」

「ど、どうして・・・・。」



 その様子を白銀のココットはうすら笑みを浮かべながら見ていた。まるで下等な生物を見るような眼差しで。



(ふん・・・これでいい。)



――ギギギギ・・

 抑えていた門が閉まりかける。外にはまだ何匹かのココットが残っていた。



「い、いそいで・・・!も、もう持たない・・・!」

「はやく~~~・・・っ!!」



 コロンたちが必死に抑えてる中、一匹、二匹、次々と中に入っていく。そして最後の一匹と思われるココットが中に入った。



「・・こ、これで全部かしら・・・・?」

「たぶん、そ・・・・・い、いや、あと一匹残ってる!」



 遠くから必死に杖をついて歩いてくるココットが居た。おそらくは事故か病気などで失ったのであろう、足が片方しかない。残りの距離は30メートルといったところだろうか。



「はあ、はあ・・・ま、待って・・・!」



 片足のココットは杖をつきながら必死に這いつくばるように向かってくる。残り、およそあと20メートル。しかし、コロンたちの体力も限界に来ていた。既に時間は15分ほど過ぎている。門の閉じる力は更に強くなっていた。

 ショコラとフラッペが思わず弱音を漏らした。



「も、もうダメ・・私・・・限界・・・。」

「ぼ、僕も・・・・。」



 ショコラとフラッペは、もはや限界寸前といった感じだ。それは他のココットたちも一緒である。しかし、コロンは諦めなかった。



「あ、あきらめない・・・絶対に・・・!」



 そう言うと、突然コロンの体が淡くエメラルドグリーンの光を発しながら輝き始めた。本人はその事に全く気づいていない様子である。



「こ、コロン・・・?その体は一体・・・。」

「あれ・・なんだか不思議と力がわいてくるわよ・・?!」

「ホントだ・・これならもう少し頑張れるぞ・・・!」



 フラッペとショコラはコロンの突然の様子に驚いていた。それと同時に、力が戻ってくるのを感じた。他のココットたちもそうであった。先ほどまで急に力が入らなくなっていたのが嘘のようである。



「これなら、なんとか・・・!」

「もう少しだよ・・! がんばれ・・・!」



 ココットたち皆で扉を押さえる。そして同時に外に居る最後の一匹に声をかける。



「はあ、はあ・・・つ、着いた・・・!」



――ガシャン

 最後の一匹が入ると同時に門が閉まった。外には取り残されたココットは一匹も見あたらない。



「み、みんな・・・!ありがとう・・!」



 最後に入ったココットが涙目になりながら皆に感謝をする。



「お礼なんて、いらないよ!」

「そうよ、みんな間に合って本当に良かったわ・・!」

「うんうん!これから、よろしくね!」



 そんなかけ声が響いた。コロン達は別にお礼など要らなかった。ただ、これで、この城で皆一緒に学ぶことができる・・そのことを喜んだ。お互い出会ってまだ間もないのに、まだよく知らないのに、まるで自分のことのように喜んだ。


 その様子を、先ほどまで見ていた白銀色のココットが見ていた。悔しさと驚きを混ぜたような複雑な表情で。



「まさか・・僕の魔法が破られるなんて・・・。」



 その様子を、一人の若い女性が巨大な水晶玉を通して観ていた。

 髪の色はブロンドで、年齢はそう、18~20歳くらいであろうか。絶世の美女といっても過言ではないほど、美しい女性である。

 複数のオーブがついた豪華な衣装をまとい、その指にはアダマンタイトの甲羅で作られ、ピンクダイヤモンドが嵌められた魔法の指輪をしている。


 その後ろにはクグロフが立っており、女性のことを神妙な様子で見ていた。



「・・・マリアージュ様。いかがされましたか?」

「うふふ、ちょっと、面白いものを見たのよ。」

「ふむ・・・ココットたちが閉門の時間を遅らせたようですな。」

「ええ、もちろんそのこともあります。ただ、それ以外にも・・・。」

「・・・と、いいますと?」



 マリアージュの口にくっと力が入る。



「・・・見つけたのよ、あの子を。」

「!!!!―――そんな、まさか・・・本当ですか?」

「・・・ええ、あの光を見たわ。」



 マリアージュは悩みと憎しみ、そして愛情が混じったような複雑な表情をしている。



「・・・生きていたのね。」



 その言葉を聞き、クグロフは鋭い眼差しでマリアージュを見つめる。まるで命令を待っているかのように。その様子は狩りをする前の獣のようだ。



「排除・・・いたしますか?」

「・・いえ、今の所は大丈夫です。他のココットたちと同じように接してください。」

「はっ・・・。」

「それじゃ、儀式の準備をしないといけないわね。クグロフ、先生たちを集めてください。」

「・・・わかりました、マリアージュ様。」


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