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使い魔コロンと魔法の世界  作者: 雪兎ぽよん
1/5

- 旅立ち -

――魔法の国 サントノーレ



 ここはとある魔法の国。魔女、魔法使い、モンスター、色んな生き物が居る。普通の人間は立ち入ることのできない世界だ。

 この世界では魔女、魔法使いたちとそれに仕える使い魔・・・ココットたちが協力して生活をしている。ココットたちは魔女や魔法使いに従事し、その代価として魔女達が持つ魔力を分けて貰っていた。

 使い魔といっても最初から魔法が使えるわけではなく、魔女や魔法使いに弟子入りし、魔法を学び、晴れて一人前になる。


 あるココットたちの村に、これから一人前の使い魔を目指して旅立とうとしているココットの子供が居た。

 名前はコロン。まだ羽も小さく、飛ぶこともできない。魔法も大したものは使えず、簡単な炎を出すのが精一杯だ。今年でちょうど6歳。今日は、魔女や魔法使いに師事し、一人前の使い魔になるために旅立たなければならない日である。



「コロンー! 起きなさいー、朝よー!」



 その声を聞いてはっと目を覚ます。コロンが二階の窓から外に目をやると、そこには巨大なフクロウが一羽、二羽・・と留まっていた。今日城に向かうココット達を運びに来たのである。急いで着替えをし、下に降りる。



「おはよう、ママ!」

「おはよう、コロン。もうフクロウさんたちが来てるわよ。」

「うん、急いで準備しなきゃ。」



 もうすぐ出発の時刻である。あまり別れを惜しんでいる時間はないようだ。コロンは昨日までに準備しておいた荷物を持つと、家の扉を開けて外に出た。



「ちゃんと魔女様のお役にたつのよ? 忘れ物はない・・?」

「う、うん、だいじょうぶ・・! それじゃママ、行ってきます・・!」



 自らの母に別れを告げると、コロンは巨大なフクロウの中に入った。この巨大なフクロウは腹に扉が付いており、中に入ることができるようになっている。中はふわふわとしており、柔らかく、暖かい。

 この世界では身近な乗物で、鳥籠”とりかご”などと呼ばれている。コロンが中に入り扉が閉まると、フクロウは飛び立った。



「行ってきまーす!」

「いってらっしゃーい! 体に気をつけるのよー!」



 次第に小さくなっていく母に手を振ると、コロンは初めて乗る巨大フクロウに胸を躍らせた。



「わあ、ふかふかだあ・・! それにこんな高いところから見る景色なんて初めて!」

「おはよう! フクロウに乗るのは初めて・・? あなたも今日からかしら?」



 声をかけてきたのは赤いリボンを付けた女の子のココットだ。長い耳のロップイヤーのココットで体毛はピンク色をしている。背丈はコロンとあまり変わらないようだ。



「うん、そうだよ。ボクはコロン、キミは?」

「わたしはショコラよ。よろしくね。」

「ところで・・そっちに居るのは・・・?」



 コロンが目をやった先には、顔をうつむかせてプルプルと震えているもう一匹のココットがいた。丸い耳をしてブチ模様のあるココットの子供だ。顔は真っ青で、冷や汗をかき、ブルブルと震えている。とても普通の状態には思えない。



「ああ、こっちはフラッペ。私の隣に住んでる子なんだけど・・・。」

「何かあったの・・・?」



 コロンが心配そうに様子を見る。



「ひ、ひゃああ・・!! ご・・ごめん・・・! ぼ、ボク・・・た、高いところが、にに・・苦手で・・・!!」

「そ、そうなんだ・・・。」

「・・・そういうわけなの。今はそっとしておいてあげましょ?」



 どうやらフラッペは高所恐怖症のようだ。地上から500mはあるかと思われるこの高さでは無理もないだろう。高所恐怖症でなくとも、地上を見ると足がすくんでしまう。

 フクロウが飛び立ってから5分。フクロウが突然しゃべり始めた。



“ホーホー、お客様にお伝えするホー。

      これからテレポートするから落ちないように気をつけるホー。“



「て、テレポート?!」

「コロン、テレポートも初めてなのね。別に怖く無いから、だいじょうぶよ!」



 すると目の前に巨大なゲートが開いた。コロンは内心びくびくしていたが、同時に初めてのテレポートにワクワクしていた。フクロウがゲートの中に入る。コロンはどうなるかと心配していたが、その心配はすぐに晴れた。中に入ると同時に、そこには別の世界が広がっていたのである。



「わあ・・これがテレポート!」

「便利でしょ? でも、扱えるようになるには中位魔法を覚えないといけないの。」

「ボクも使えるようになるかな・・?」

「最初は難しくても、魔女様のところで修行すればきっと大丈夫よ。」



 二匹がそんな話をしていると、巨大な城が見えてきた。この世界で三本の指に入ると言われている大魔女、マリアージュの住む城である。

 周囲を5本の尖塔が囲い、中央の塔には巨大なクリスタルがはまっている。白く強固な作りをした壁の中には庭園があり、よく手入れされたトピアリーが並んでいる。



「あれが魔女様の城・・?! すごい・・!」

「大きいわねー!それに素敵! ねえ、フラッペも見てみなさいよ!」

「・・・ぼ、僕は遠慮しとくよ・・! そ、それより・・まだ着かないの・・?!」



 魔女の城に向かって多数のフクロウが飛んでくる。それぞれ各地から使い魔見習いたちを運んでくるのだ。5羽、10羽・・・全部でおよそ30羽近くになるだろうか。

 城の北側にはちょうどフクロウが降り立てる場所があり、そこから一本の橋が城に向かって繋がっている。コロンの乗っているフクロウもそこに向かって飛んでいき、そしてバサバサと羽を広げ、ゆっくりと地上に留まった。



 ”ホーホー、到着したホー。またのご利用をお待ちしているホー”



 コロンとショコラはフクロウから飛び降り、腕を伸ばした。橋の向こうにある城を見つめながら、あたりをきょろきょろと見回した。周囲にはたくさんのココットの子供達がおり、その数は100匹以上は居るように思えた。



「やっと着いた・・!それにしても凄い数。」

「これ、みんな私たちのライバルなのね。」

「ライバル・・・?」

「そうよ・・だって、マリアージュ様に選ばれる使い魔は一年にたった一匹だけなんだもの・・。一匹も選ばれないことだってあるらしいわ。」



 ココットたちにとって、偉大な魔法使いや魔女に仕える事は名誉であるとされている。それがまた世界で三本の指に入ると言われるマリアージュに仕えることができれば、その栄誉は計り知れないだろう。



「ショコラはマリアージュ様の使い魔になりたいんだ・・?」

「みんなそうじゃない? コロンは違うの?」



 コロンはそう聞かれて、少し悩んだ。確かに偉大な魔女に仕える事ができたら名誉な事だろう。ただ、コロンは仕える相手の事を深くは考えては居なかった。特別偉大な魔法使いではなくとも、優しくて頼りがいのある、そんな魔法使いであればいいなとは思っていた。



「うーん・・・。」



 コロンが悩んでいると、先ほど乗っていたフクロウの居る方から声が聞こえてきた。



「や・・・やっと着いたみたいだね・・。こ、怖かった~~!」



 震える足で出てきたのはフラッペである。ショコラが心配そうに声をかける。



「フラッペ、もう大丈夫?」

「う、うん、大丈夫だよ。ありがとうショコラ。 それよりコロンくん、中ではごめんね、まともに挨拶もできなくてさ。」

「気にしなくていいよ。それと、ボクを呼ぶときはコロンでいいよ?」

「ホントかい?じゃあ、僕の事もフラッペって呼んでくれると嬉しいな。」



 そんな会話をしていると、一人の魔法使いが城の方から箒に乗って・・・正確には箒の上に立ちながら飛んでやってきた。



「あれは・・・もしかして闇の魔道師クグロフ?」

「ええっ! 話では聞いたことがあるけど・・・1000体のスケルトンを同時に召喚することができるっていう、あの有名な・・?」



 ショコラとフラッペが驚きの声をあげる。



「私の名はクグロフ。城で教師をしている者だ。諸君らに告ぐ。まもなく8時に城門が閉まる。門が閉まった後に入城することは一切認められない。当然、入城式への参加もできない。急ぎたまえ。」

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