ありきたりの台詞
400字以内で描くある男女の別れの場面。
子どもたちの歓声。鳥のさえずり。長閑な公園の一幕。これがお芝居ならどんなにいいだろう。彼との気まずい雰囲気も、笑い飛ばしてしまえたのに。でも、彼が私から視線を逸らすようになってから、私の台詞は決まっていたのかもしれない。
「もう、これで終わり」
彼がハッとして今日、はじめて私の顔を見た。久しぶりに見た、彼の表情はあの頃と変わっていない。
「今まで、ありがと……!」
変わってしまったのは、私たちの気持ち。
「待って!」
彼は、走りだした私を呼び止めたけれど、追いかけてはこなかった。
ありきたりの言葉に救われた事実に気づく。
“ありがとう”のひとことで、自分からこの恋を手放すことができたから。
終
過去最短のSSです。
N○Kの高校生講座の国語表現にあった、寸劇の映像を見て400字以内で表現してみようという課題に挑戦してみました。原稿用紙を意識して書くと、タイトル・P.Nぶんの二行を除けば360文字以内で書くことになって…凄く苦戦しました。あるドラマの一場面を文章に描き起こすだけでも苦労するんだな、と勉強になりました。