オワリノハジマリ
僕等双子は虐待と虐めを受けている。
僕の名前は竜胆迅。中学3年だ。
そして双子の姉は竜胆莉奈。
僕等はごく普通の中学生だ。
いや、虐めや虐待を受けている時点で普通ではないだろう。
ただ僕等は、本当に普通なのだ。
なのに虐めや虐待を受けている。
他の人と何も変わらないのに。
虐めや虐待を受け始めたのは幼稚園年長からだ。
何故かは知らないし、わからない。
その時から僕等の地獄は始まった。
家では家事の全般をしなければならなくなった。失敗してもしなくても殴る蹴るは当たり前。骨が折れた事も1度や2度じゃない。身体はアザだらけだ。
まともにご飯も貰えず、ろくに寝る事もできない。
学校では、人外扱い。落書き。悪質な罠。暴行。給食も貰えずただ耐える日々。
教師すらも加わる始末。
いや、それだけじゃない。
近所の人からもだ。
何故かはわからない。だが助けを求めることはできない。すれば殺される。
そんな毎日だ。
唯一の救いは姉の存在だ。
姉はどんなことをされようとも、常にこちらに笑顔を向けてくれる。
そんな姉は「キモい。死ね。ブス。」と言われながら殴られても耐えていた。
僕からすれば姉以外の全ての人類が醜いのに。
しかし、そんな日々は終わりを告げる。
姉が目の前で、血を流し倒れている。
「あっ…あ…………………」
血は止まらない。
何故こんな事に。
思考することもままならない。
理解しているのは、姉がDQNの車に跳ねられたこと。そして、死にかけていることだ。
「うっ、あっ…ギャァ!!!!」
どうして。どうしてこんな事に。
姉は何もしていない。悪い事なんて。
なのに…なのに。
こんなにも人は醜いのか。
こんな人などいらない。
今も誰も助けようとはしない。
DQNは、「ちっ、車が凹んだじゃねーか!どうしてくれんだ!」
と喚いている。醜い。とても醜い。
だが、どうでもいい。
姉の身体はもう冷たくなっていた。
服はぼろぼろだったが、今は2人とも紅く染まっている。
僕は泣き叫ぶ。そして怒る。世界に。人に。そして自分に。
僕は何故無力なんだ。姉を守ることすらできない。力が欲しい。そして。
姉を虐めた奴らを。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
ドス黒い感情が思考を蝕む。
自分の左目には車の破片が突き刺さっており、もう見えないがそんな事は関係ない。
ただ復讐するだけだ。
すると、背後から声が掛けられた。
誰だ。僕は…俺は忙しいんだ。姉を解放するため。笑顔にするために。しかし、そいつの言葉に一瞬意識を向ける。
「今…なんて言った?」
「君。復讐する気はないか?この世界の奴らに。君らをこんな目に合わせた黒幕に」
愚問だ。当たり前だ。なにを言っている?ただ返事は無意識にしていた。そいつの方は見なかったが。
「絶対にしてやる…例え命に代えても!」
「そうか…なら」
ずぽっ。
かはっ。
なんで俺は血を吐いている?なんで胸から手が出ている?そしてこいつはなんだ?何故貫通させられる?
そいつを見る。そいつは、15歳くらいの少女だった。
こいつが話しかけていたらしい。
でもなんでだ?わからない。
意識を失う前
「力を与えましょう」
そんな声が聞こえた気がした。