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残念美少女の余興

継続は力なり。

俺の好きな言葉だ。

その言葉は俺にとって最高の誉め言葉でもあり、座右の銘でもある。

おれのIQは超名門校に通っているスーパー優等生だ。

小学生の頃では、大人でも解けない問題をパッと成し遂げてしまい、体育では運動神経は悪いのだが、保健体育の筆記テストでは満点。

普段運動しない俺は、筆記テストだけは得意だった。

俺の頭の良さはクラスにとっての憧れであり、羨ましいものだと皆が口を揃えて言っていた。

しかし、その頭脳は《努力》というものによって生まれたものであり、決してセンスという能力に頼っていた訳ではない。

ちなみに才能とは努力するから生まれるもの。

センスとはその人が持っている元々の能力らしい。

誰もが羨むものは全て努力によって生み出される。

努力し続けて裏切られるということはない。

たとえ何か問題が起きたとしても解決策をすぐに提示。

全ては俺の努力という誇るべき賜物のおかげだったが、《努力》が頼りにならなくなってきた時期がやってきた。

小学生から中学生へとなって半年が経つある日のことだった。

春が丁度過ぎた5月の中間考査は例年通りのオール百点だった俺は、次のテストでもいけそうだと余裕の笑みを見せていた。

しかし何があったのか、次のテストでは全体で70点代と低下し始め、遂には50点代へと落ちてしまうという最悪の事態。

それを止めようと必死に努力するも、成績が一向に上昇をすることなく停滞してしまう。

それが引き金となり、担任の誉め言葉を貰うことはなくなり、親からは叱られ、今までの勉強方から両親のやり方に従うようになり、毎日雑務係のように動いて、社畜のように勉強をしていた。

俺はそれが苦痛で耐えられないと正直思っていた。

だがそれが言えず、ただ黙々と勉学に励む。

言う通りに動けば次のテストで結果を残すのかと思っているからでだろう。

だが、結局何も変わらなかった。

さらに『お前のせいだ』と両親は自分が撒いた種を人へと押し付ける。ストレスは積もることはないが、両親には失望した。

そんなことが続いていた最中、高校へと進学が決まった。

《青春》《リア充》と言葉を連想する高校生活、俺にとっては《違和感》《孤立》である。

何処にでも馴染めない違和感、人が離れ孤立していく詰まらない高校生活。

それが俺の感じる《違和感》と《孤立》だ。

もう此処から抜け出すことはできないと諦めた矢先、手が差しのべる心優しき人がいた。

“才色兼備” “クール”。

二つの属性を持つ校内人気美少女。

名を清川 小町。

彼女とは後にライバルとなり、師匠となる。


       ・・・・・・・・・・


大通りにある並木桜が風で舞い、日光を浴びて暖かく感じる四月。

辺り一面には、今日から東国立高等学校に入学する生徒がぞろぞろと人だかりを作っている。

皆緊張しているようにも見えるが、楽しそうに会話をする活気に溢れた人達や、道中でナンパをするチャラい輩もチラホラ見かける。

東国立高等学校は在校人数およそ3000人、偏差値60の名門校。大学進学率は七十パーセントで有名国立大学へ生徒を輩出。部活では都大会に出場した部が多数という実績を収めている。

教訓は《人以上の事を成し遂げよ》

この高校らしい教えだと感じる。

その名門校に俺が、大久川 努が晴れて入学することになった。

まるで俺のために作られた名門校に必死で受かろうと努力を重ね、合格発表にに載ったときの嬉しさは今でも忘れられない。

入学式前日には一睡もせず、制服を着ていた。

この高校で過ごして、全ての事に命を懸けられる。

俺にとってそれが欠けがえのないものだと思っていた。


「身支度と荷物整理は確認し終わった、後はクラスでの印象を良くすれば・・・」


正直緊張をしてしまうが、楽しい高校生活が今年から始まる。

友達、勉強、勉強、勉強。

次いでに恋愛。

これから忙しくなることだろう。



「それじゃあ第一回ホームルームを始めるよー」


と教室から先生の掛け声が聞こえる。

そこにガヤガヤと騒ぐイマドキ高校生が120人程度。

比較的容姿の良い男子女子がちらほらいて、中には富裕層に生まれ育っていそうな人が偉そうに座っている。

このふざけたクラスに、一年間在籍するという全く嬉しくない知らせに俺は落胆している。

どう考えても場違い感しかない。

だが、あえて文句を言うのはやめておく。

俺は名門校に通う前はコイツらよりも遥かにヤバイ奴等を見てきた。

小学校では苛めが絶えない〇ャイアン的問題児が俺の邪魔をしていた。

ある朝、いつも通りの通学路を歩いていたとき後ろからランドセルを押さえつけられ水を掛けられる。

学校で筆箱を投げられそのままゴミ箱へ捨てられる。

落書きを机に書かれる。しかもマッキーで。

これが今まで送ってきた悲しい学校生活だ。

同情するだろうがその必要ない。

何故なら今年から高校生活と言う素晴らしい生活があるから。

高校生活は青春だとよく豪語される。

それは楽しく、愉快なもの。

今までの人生の中で最大の幸運だ。

しかし、周りは友達を作っている。友達のいない俺としては理不尽な世界だ。と思うがすぐにでも解決して、友達はできるのだろう。

心配することは何もない。

「ーという訳で、ホームルームが終わったら体育館に集合してくださーい」

丁度先生の話が終わった頃、チャイムが鳴る。

「終わったぁー」

俺は真っ先に体育館へ向かう。

・・・・体育館で一体何をやろうというのか?


体育館へ集まった。

生徒は退屈そうに校長の話を聞いている。

まるで興味もなさそうだ。

「えー、今回集まってきてくれた諸君等は今後将来を背負う卵であり、またー」

校長の話は誰もが長いと感じる。

さらに嫌なことに、毎回話が同じに聞こえてしまう。

当然周りの人は上の空になっている。

校長の話を聞きたくないのなら列に並ぶまでして聞かずに、保健室でも行って休むといいと思う。

が、それは言わない方が良いのかもしれない。

「本校は友人を大切にし、何事にもチャレンジする向上心を持ちー」

ちなみに今長々しく話しているのは四十前半、スーツ姿の似合ういかにも生真面目そうな人だ。

通常校長の年齢は70代から80代だが、この高校では若い教師しか集めない。それは常に新しい知識を集め、可能性を広げることが重要であるかららしい。

年配に厳しい学校と言うと、老人達は訴訟を起こしまうかもしれない。

「では、各クラスは担任の指導をもとに動くこと」

校長の話がようやく終わり、俺は担任のもとに集まる。

「校長も言ってたけど、これから一緒になる友達とグループになって交流会をやるよー」

俺は校長の話を全く聞いていないので、体育館に集まる意図を理解できた。

今回の目的は友達を作ることらしい。

「それじゃあーグループになってー」

いやハードル高っ!!!

さすがに周りもそう簡単にグループを作ることはできないと思う。

俺は考えた。

「よし、俺から話しかけてー

一瞬の出来事で周りはグループを作り始めていた。

ふぅ・・・・・・・理解できないぜ。

俺はプルプルと身体が震える。 

「その漫画って面白いの?」

「うん、今度持ってこようか?」


「でさー」

「へー」

などと話が弾みクラスメート達は楽しい雰囲気だ。

これは入り込む余地がなさそうだ・・・・。

リア充のお喋りに平凡な男子は参加できないようだ。

初めての友達作りは呆気なく終わってしまった。

「そこの寂しい男子君は一人ぼっちなの?」

「ウワァァァァァァァッ!!!!」

と思った直後に、背後から声が聞こえた。

俺は今にも飛び上がりそうな勢いで立ち上がり、後ろへ尻餅をつく。

「・・・・・・びっくりした」

[私がビックリしたのだけれど]

その声の持ち主はシャンプーの良い匂いが漂い、綺麗な黒髪のロングヘアーが艶を見せて、

黄金比で整えられている顔を持っていた。

クラスの中で最も輝かしそうな青春を送ってそうだ。

しかし・・・・まさかこんな人が俺に話しかけるとは。

というか、俺そんな寂しそうにしてたの?

「・・・・何か?」

彼女はじっと見ていた俺を不審に感じているようで、虫を見ているかのような目になっていた。

[なっ、何でもないっ!!!]

俺は耐えきれずに、目を逸らした。

よし気を取り直して。

俺は冷静さを保つ為に深呼吸を2、3回繰り返し、話をかけた。

[で、何の話をしてたんだっけ]

[いやまだ何も話はしてないのだけど]

彼女は今だ不審そうな目で俺を見ている。

どうやら気が動転していて、色々動揺しているらしい。

ていうか、この美少女に何を話しかければいいんだ。

まさかこの俺が美少女様と話が出来るなんて、今日はツいていない日だとつくづく感じていた。

神が慈悲を与えたのだろうか。

だがそれでもいい、今はこの慈悲に甘えて俺は青春を駆け━━━━  

「貴方大丈夫?病院行った方がいいんじゃないのかしら?」

「・・・・・」

俺は外れを引いたらしい。

「それとも私の美しい姿に惚れた?」

あー外れだ。

SSRだったはずなのにノーマルのスキルと変わらないぐらい外れた。

「はあー」

「何か文句でもある?」

「・・・・何も」

本当にこの残念美少女と会話しないといけないのか?

生憎、今日は何も面白いネタがないのだが。

「あら、心配しなくてもあなたの存在があるだけで十分ネタよ」

それにこんな充実してそうな人達の周りがいる中で、唯一違和感のあるジミーな生徒と会話するなんて可笑しい話だ。

見る目がないのか。

「貴方に心配されるほど落ちぶれていないわ、ただの余興よ」

「あん?」

「あら、ごめんなさい」

と言いながら、彼女はクスクスと笑う。

コイツ、ぶん殴りたい。

「はぁー」

「お疲れのご様子ね、珈琲でもいかが?」

「お前に貰うコーヒーは見た目は美味しそうだけど、中身は不味いんだろ」

「あら心外だわ、これでもソムリエの資格を取得してるのだけれど」

「・・・・・・・」

「まぁこの程度の資格取得するのは当たり前かしらね」

死んどけ。

「さぁお遊びはここまでにして、そろそろ自己紹介でもしましょう」

話を勝手に終わらせた彼女はそう言うと、俺と上から目を見合わせ、偉そうな態度をとる。

というか、名前なんて聞かなくていいと心底思っていたが、何か殺気だった目線を感じたので、そういう訳にもいかなくなっただけ。

「私の名前は清川 小町。血液型はA型、誕生日は7月6日よ。ちなみに好きな食べ物はシュークリームね」

「必要もない情報まで追加していちいち丁寧に自己紹介したのが、余分だけどな」

「貴方がメモを取ると思ってたからよ」

「そんなの取らねーよ」

という会話をしつつ、交流会を終えた。

しかしまぁ、なんというか。

清川は自意識過剰と言うのが相応しい少女であった。


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