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1話 〜霞城麗華〜

 俺は修羅場にいた…

「なんで俺がこんな目に…」

 相手はガチガチの体型をした大男で、そいつと今まさに睨み合っている最中なのだ。ここはバトラーだけが参加できる剣術模擬戦会場である。

「ビギナーがこの俺様に挑戦たぁ生意気なこった!なぁ!そうだろみんなぁぁあ!!」

 大男がそう叫ぶと、観客たちが一斉に歓声を上げた。

「てめぇの名は?俺はこの会場トップクラスの剣士。ボブ様だ」

「お、俺は万里だ。この状況で自己紹介とは、そんなに名を上げたいのか?」

 俺は肝を震わせながら、ちょっと威嚇してみた。

 するとホクトは、顔の表情を強張らせ言った

「ぶっ潰す!」

 質問に答えやがれ!と言いたかったが、何故かリアルに殺されそうな気がしたのでスルーしておいた。

「それじゃあ万里、始めようか」

「あぁ!」

 そういうと、次の瞬間、銅鑼の音が鳴り響き、試合が開始した。


 数分前。俺はある男三人組の人たちと話していた。

「すみません。バトラーなんですが、がっぽり稼ぐ方法ありませんか?」

 俺はそう聞くと三人組は顔を見合わせ、ニヤっと笑い、

「おぉ!それならいい方法がある!」

 そう言われると、強引に手を引かれ、よくわからない門の中に入れられた。

「ちょ!おい!てめぇら!ここどこだよ!出しやがれよ!」

「おおっと、怒るんじゃねぇよ。俺らはただがっぽり稼げる場所に案内してやっただけだよ」

 はぁ…。ハメられた。そもそも見知らぬ人に聞いたのが馬鹿だった……。

 そう考えていたら、急に"剣術模擬戦に参加しますか?"と書いてある画面が開かれた。

 タップするとYES/NOと書かれた画面が現れた。

「なるほど。コロシアムみたいなものか…。」

 俺はためらわずYESを選択した。

 すると奥の扉が勢いよく開いた。会場への入り口だとすぐ分かった。

「展開早すぎだろ…」

 俺はハァ、とため息をつき、開いた扉へと歩み出した。


 で、今現在。というわけである。

 試合開始の銅鑼が鳴り響き、俺は手に持った剣を強く握りしめた。

 多分痛覚は控えめなんだろうけど…。多分すり傷並に痛いんだろうなぁ。

「ッ!?」

 怖気付いていたら、ボブはためらわずに突っ込んできた。

「くたばりな!このビギナーがぁぁあ!」

 ボブは剣を真上から垂直に振り下ろしてくる。

「こ、これは!?」

 振り下ろされる瞬間、相手の動きがスローモーションになって見える。

 一体…どういうことだ…。

 いや、今は考えてる暇はない!

 ボブは全体重をかけて剣を垂直に振り下ろしている。

 これをかわせば!

 俺は右脚に力を込めて一気に左前、ボブの背後に回り込んだ。

「な!?なに!!」

 ボブは剣に全体重を乗せてしまったため、俺によけられて、勢いを止められず、そのまま地面に剣を叩きつけた。

「うお!?」

 自分の全体重の乗った一撃を地面に叩きつけたボブは剣から伝わってくる振動に怯んだ。

 その一瞬を俺は見逃さない。

「あぁぁァァアア!!」

 俺は今避けた時の反動を利用し、一気に体を捻らせ剣を横振りでボブの横腹に叩きつけた。

「グァァア!!」

 ボブは悲鳴を上げるが俺は力を緩めない

「どおぉをぉおりゃぁぁあああ!!」

 俺は一気に全体重を剣に乗せてボブの体を削る。

 そして、一気に楽になったかと思うのと同時に、グチャっという音がした。

 そこにはボブが真っ二つになって横たわっていた。ありがたいことに血は再現されていないようだった。

 数秒後、空中に『Banri、WIN』と書かれた。

 同時に、歓声が俺に降り注いだ。

「俺…。勝ったのか……」

 俺は一息つくと、観客の方を見上げた。

 みんな俺に拍手している。最初のボブの「そうだろ?みんな!」と言ったときの歓声とは比べ物にならない大きさだった。

 勝ったんだ。俺が、この俺が!

 少したってから、賞品が贈呈された。

 賞品は、百万ゴールドと、黒ずくねの装備と、聖剣「アギト」だった。

 黒ずくねのセットは、黒いマントのような長袖の上着と、黒いグローブだ。

「お!かっけぇぇ!」

 着てみるとなかなかのデザインだ。

 スキルは、『速度UP』『剣術UP』がついていた。

「ほんと、結果オーライだな」

 あとであいつらにお礼しとかないとな!

 俺は内心そう囁きながら模擬戦会場を後にした。


「凄い…」

 あるフードを被った少女は、今会場で行われている、『Bob.vs.Banri』を観戦していた。

「私も強かったら…」

 少女は空を見上げた、それから会場を後にした。


「ここどこ?」

 俺は今、道に迷っている。

「なんで?なんでこの世界には「ル○ラ」とか無いんだよ!」

 そう叫んでいたら、前から人影が近づいてくる。

「あ!あのすみません!大広間に行きたいのですが…」

 その人影は灰色のフードを被った女の子だった。

 歳は多分同じくらいだ。

 こんなところうろつける時点でまず十六歳以上だろう。

「あ…あなたは…確か」

 彼女は俺のことを知っているような口ぶりだが、俺は彼女のことなど一切知らない。

「万里さん?」

「え…!?」

 なんで…。なんで彼女が俺の名前を知っているんだ。

 俺はこんな女の子に名前なんて教えたことなんてないし。ていうか同年代の女の子に名前なんて教えたこと自体あったっけってレベルだよ!

「え…えっと…。なんで君は俺の名前を知ってるんだい?」

「だって、模擬戦やってたじゃん」

「ハ…!」

 俺は自分の顔が青ざめるのが一瞬で分かった。

 そうだ…そうだった!確かに書いてあった。しまった!俺の顔と名前が世界中に広まってしまった…」

「俺のSFNライフは初日でどん底だ…」

 俺は膝の力が抜け、まえのめりに跪く。

「あぁ…もうやってらんない」

 俺が落ち込んでいると、少女がフードを脱いだ。

 腰まである長い水色の美しい髪。それと大きな瞳。さっきは見えていなかったが、背中には大きなスナイパーライフルを担いでいる。

 そして

「あの…」

「んぁあ?」

 返事をすると、彼女は少しビクっと体を震わせた。

 彼女は深呼吸をして、ハっと目を見開いて言った。


「あ、あたしと、コンビ組んで下さい!!」


 俺は一瞬固まった。

 一体どれだれそうしていただろう…。

 五分かもしれないし、あるいは五秒かもしれない。

 はい!それでは心に思ったことを一気に目の前の少女にぶつけましょ〜うせーのっ!


「は?………」


なにこれ。へ?なにこれ。夢?

少女が俺にコンビを組もうとさそっているだと?女付き合いが全く無いこの俺と?

「嫌ですか?」

そして俺は、

「いえ!とんでもないのであります!」

即答した。

はぁ?こんなチャンス逃がすわけねぇだろ!

「え?それじゃああたしと組んでくれr 」

「当然じゃないですか!俺は大歓迎さ!」

「ありがとうございます!」

少女はペコペコ頭を下げた。

「いえ、こっちも始めたばっかで何がなんだかわからなくて、同年代の人がいてくれると俺も助かるし」

すると、少女は首を傾げた。

「始めてってことは高1ですか?」

「ん?あぁ。そうだけど、君もでしょ?」

すると少女は目を丸くして言った。


「あたし…高校二年生です……」


ハァ…二度驚かされますとは。

「マジっすか。」

てかどうしても先輩とは思えないんですけど…。

「わ…悪いですか?」

「い、いえ!別に…」

この話題をなんとか変えなければ…

「すみませんでした!さっきからタメ口で…それと、先輩の名前は…」

「あ!申し遅れました!あたしは霞城麗華。スナイパーをやっています」

霞城先輩はニコっと笑いながら答えた。ほかの人たちめ、誘いを断るとはもったいないことをしたな!

「でも先輩。何故俺なんかでいいんですか?ほかにも強いプレイヤー沢山いるんじゃないですか?」

先輩はうつむいて、

「もちろん誘いました。しかし、みんなあたしのような中級者と組んでくれる人なんてあまりいないんです」

涙目になって先輩は答えた。

わかりますよ先輩!俺もよくオンラインゲームやってて初心者なのに上級者とパーティ組もうとして足早に立ち去られた時のショックといえばなかなかのものだ。

「だから、あなたに断られたり、裏切られたりしたら、もう…あたし……あたし………」

先輩の目がどんどん潤んでいく。

「あわわわわ!せ、先輩!泣かないで下さいよ!大丈夫です!」

俺は先輩の目を見て言った。


「俺は、先輩を裏切ったりなんか絶対にしない!」


先輩は目を見開いた。

「だから、大丈夫です」

そういうと、先輩は安心したように、笑みを浮かべ、言った。


「ありがとう……」

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