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ょぅι゛ょとおともだち

ミミルの同年代のお友達です

 唐突な復活を遂げた田中さんは、死んでからの怠惰な時間を取り返すように精力的に動いた。


 俺たちの隣の部屋を借りたのもそうだし、それとは別に老夫婦でやっていた雑貨屋が、やっていくのが大変だとこぼしていたのを聞きつけて、店を買い取って駄菓子屋を始めることまでやりだした。

 二階の住居部分はそのまま老夫婦が住んでいて構わないと鷹揚に手配し、一階部分を大改装して、半分を店舗にし半分を靴を脱いで寝転がったり出来る絨毯敷きのスペースに、地下室を新たに作って工房兼駄菓子の生産工場にした。


 前世で見慣れた駄菓子が見慣れぬ魔法を使っているらしい機械から生み出されるのはなんとも奇妙なものだ。

 何故、モンスター素材からお麩やら酢昆布やらラムネやらゼリーやらが出来るのか?

 ゼリーはもしかしてスライム製なのか?

 くじ付きのお菓子とかも作って楽しそうだな!

 糸引き飴とか、絶対「裏技」とか言ってインチキやるヤツ出るだろ!


 作っている過程や放り込まれる材料を見ると不安になるが、出てくる物は前世でおなじみの品々である。

 駄菓子を売ることで影響の出るであろう果物の屋台からはその補完をする様な形で定期的に果物を買うことになったそうだ。

 買い取った果物は魔法具で粉末ジュースを造るのに使われるらしい。

 多少見栄えが悪くなったものでも関係ないので、その日に売れ残ったものを田中さんが買うことになっている。


 そうした魔法具関連を幻術専門(よくアンデッドに成れたものだ)の田中さんが作れる筈もなく、ガーデオがコキ使われていた。

 口では文句を言いながらも、ガーデオは結構楽しそうにしていた。


 これだけ精力を傾けながら駄菓子屋の方はメインではなく、奥のスペースで子どもたち相手に幻術を用いたアニメ上映会をして過ごすのだとか。

 駄菓子屋の方は老夫婦が家賃代わりに店番をする約束になってるのだという話。自分で経営するのは負担でも、店番だけならさほど苦にはならない。

 前世でも駄菓子屋とかいうとお婆ちゃんがやってるイメージだったしな。


 最初に大人たち相手に説明会を行って、親や商店の経営者、工房の親方などに子どもの使うカードと大人の持つ判子(どちらも魔法を用いたガーデオ特製)を渡し、仕事やお手伝いなどをきちんとしたら1回カードに判子を押して上げて、その判子が押された状態のカードを持って田中さんのところに来ればアニメを見せてもらえるという形を取って、入りびたりになって家の手伝いや仕事をさぼったりしない様に予防策を取っていた。

 判子は大人が押さないとカードに押せず、子どもが勝手に判子とカードを使うことも不可能になっている。


 伊達に天寿を全うするまで生きてないな、この骨。

 いや、自分の利益が発生することに関してはとことん知恵が回るタイプか?

 可愛い子どもたちがアニメに目をキラキラさせている姿を見ることが目的と見た!



 大人が一緒に連れて来た場合はカードに関係無く子どももアニメを見ることが出来る。

 当初は無かったこのルールは「大人が見たい場合はどうすればいいんだ?」という声に応えたもの。

 大人に対しては大義名分を与えて「子どもにせがまれたから仕方ない」と言い訳出来る様にしてあげているのだ。

 また、駄菓子屋の閉まった夜には大人のみの上映会(非アダルト)も行われるそうだ。

 ミミル相手にやらかして俺に禁止された様な、人がどんどん死んでくようなものはこっちで上映するらしい。ま○かとかファ○ナーとかノ○インとか、作品としては悪くは無いけど子どもに見せて理解できるかっていうと疑問だからな。 


 良くそこまで金があったものだと感心したら、自分の墓に一緒に埋葬されたものを復活のついでに持って来たのだとか。


 「トラップとか魔法的な防御とか無しに良く墓荒らしにあわなかったな。」

 「我輩の墓はどうやら『聖地』扱いされていたようなのですよ。」

 田中さんの墓の周りは周囲の墓も同趣向で、墓地というよりワン○ェス状態になっていて観光客やら同好の士なども訪れ、とてもじゃないが盗掘など出来ない状態なのだとか。


 ミルクせんべいに水あめとアンズを挟んで食べているミミルを見ながら、自分もこっそり梅ジャムを挟んだミルクせんべいを2号の感覚を利用して食べる。


 このチープ感がたまらないよな。

 串カステラも食ってみるかな?



 ◆

 ◆



 田中さんの駄菓子屋は子どもたちだけでなく、お母さんたちも集まる地域の憩いの場となった。

 子どものお小遣いでも複数買える駄菓子の評判もいい。

 急な用事で子どもを一時的に面倒見てもらいたい親なども、ここへ来れば他の母親や、子守に慣れた少し大きな子も居るので安心だ。

 仕事帰りに子どもを迎えに来たついでに、つまみとして酢漬けイカなどを買っていくお父さんも居る。

 出来て間もないのに、もはや地域に欠かすことの出来ない存在として認知されているのだ。


 ミミルも時々行っていて、魔法少女ものより自分の顔を食べさせるヒーローがお気に入りだ。

 時々ウサルを見る目が「うしゃるたんも、おかおがたべられしょうでしゅね?」と言っている気がする。


 何人か顔見知りの子も出来て、時々は田中さんのトコ以外のお外とかで遊んだりもしている。

 アマンダの宿の近くの金物屋の娘のニシャちゃんは、ピューマに似た大型の猫科の獣の加護を持った女の子で、周囲の子と違う自分の姿から引っ込み思案になってしまっていたが、自分と同じ様な耳を持つミミルに会ってすっかり懐いてしまい、どこにお出かけする際も一緒に居たがる。

 いくら大人が「それは凄いんだよー」と言っても、周りと違うというのは子どもの心を傷つけるのに十分だ。

 大きくなれば、様々な面で加護持ちゆえの有利さを理解するだろうが、小さな子には無理な話だ。

 ミミルのウサ耳を見てやっと安心したのだろう。

 

 ミミルもウサルたちとはまた違った感じで「にしゃたん、だいしゅきー!」とニコニコお手手を繋いだり、いっしょにウサルのベッドでお昼寝したりしている。

 ごく自然に子どもに混じって遊べるウサルという存在は有り難い。3号も一緒に遊びつつ写真撮影に余念が無い。

 3号の写真や駄菓子屋での様子で、骨にもショタジジイにもニシャちゃんはミミルのお友達として認識されていて、「その内、魔法のお勉強の時に、ニシャちゃんも一緒に呼ぼうか?」などと言っている。


 一方、マサギ形態の2号とウサルーマンの4号は冒険者ギルドに登録した。ミミルの要望を聞いて装備を整えた4号はウサ耳カン○タの様な姿になってしまった。

 あまりにも怪しい姿なのだが、あっさりと受け入れているこの街の人々の懐の深さには恐れ入るしかない。


 たまに他の冒険者に誘われた時などはパーティーを組むこともあるが、基本的にコンビで活動し、この町周辺の安全を高めるため討伐系の依頼を中心に活動している。

 モンスターを斧で「撲殺」する4号は「紺色の悪夢」の異名を得てしまっている。マサギ形態の2号は「漆黒の魔獣」で、「ナイトメアコンビ」としてまだまだギルドでは新人に関わらず「2号さん」、「4号さん」と他の冒険者からさん付けで呼ばれている。

 気軽に呼び捨ててくれるのはアマンダの宿の常連かコルシオくらいになってしまった。

 別に気さくに、威圧とかもせずにやってるんだがなぁ・・・。



 ◆

 ◆



 「みみるちゃーん、あしょぼー!」と今日もニシャちゃんがやってきた。

 最近は「いちゅくるかな?」とミミルもニシャちゃんが来るのを心待ちにしている。

 「きょうはなにしてあしょぶ?」

 「にゃにがいいかにゃ?」


 この子は「ちゃ、ちゅ、ちょ」は言えるが、「なにぬねの」が「にゃににゅにぇにょ」になる。

 先っちょがちょっと外側にくるんとした猫科の耳と相まって、余計猫っぽさを出している。

 照れたときなども「にゃ~」と丸めた手で目を隠す動作をして、小さな子どもでなければ「あざと過ぎるんじゃないか?」と思うほどの猫っぷりである。

 

 ショタジジイがミミルとペアの衣装を作りたがるのも納得出来る話だ。

 まあ、「ミミルが自分で欲しがったらね!」とストップをかけているが。


 下手にストップかけたままだと、いざゴーサインが出た時に雪崩の様に新作が届くハメに成りかねないから、適度にガス抜きはさせないと・・・。

 な○はとフェ○トとか、初代プリ○ュアとか、骨の方もコスプレさせたがってるみたいだしなぁ・・・。

 いい加減、枯れろよ、と言いたくなる俺は間違ってないよな?




 ◆

 ◆



 

 魔法のお勉強はその後も続いているが、ミミルの才能が有り過ぎてショタジジイも気苦労が絶えないようだ。


 「炎とか氷とか雷とか暴風とかは魔法の制御に慣れた上で、そうした魔法の怖さを理解出来る様になってからじゃないとダメだし、空を飛ぶとかも高く上がりすぎて怖くなって降りられなくなったり制御を乱したりすると危険だし、空間系は余所の世界に繋がりかねないし、時間系はそもそも時間の概念を今はまだ理解してないし、精神系もたとえ悪意の全く無い「みんなしあわせなきもちに!」なんてのでも「幸せ過ぎて何も出来ない」人間が大量に出ちゃう危険性があるし、創造系は出そうとした物の山や海が出来そうだし・・・・・・本当、どうしようかね?」


 今のミミルは光の魔法で、出す光の玉の数を増やして、それをお手玉にしている。

 「今やってるのも実は結構高度なんだよ? 重さの無い光の玉を、あたかも重さがあるかのように、何の違和感も無く動かしてるだろ? あれ、出来ない魔法使いには一生出来ないからね?」

 大人の方が難しいかもな?

 知識が邪魔をする感覚優先の制御って感じ。


 「ミミルちゃん、じゃあ、今度は形を変えてみようか? 僕が最初に見本を見せるね?」


 さすがショタジジイ。

 色の違う光を組み合わせて、まるでそういう生き物かの様に犬の形で動かしている。


 「わんわんでしゅ! わーい!」

 ミミルの周りをじゃれる様に動く光の犬にミミルも大喜びだ。

 この笑顔で今日の授業の報酬は十分なんだろうな、このショタジジイにとっては・・・。

 

 


 ◆

 ◆




 最近、ミミルが寝る前の日課として絵日記をつけ始めた。

 

 「しゅくだい」として文字の勉強も兼ねて、色鉛筆と共に絵日記帳をガーデオにプレゼントされたのだ。


 絵日記帳は二冊あって、魔法の勉強の際に交換といった形で、練習の時に渡された絵日記にガーデオが「よかったね、ミミルちゃんのたのしかったというきもちがえからもぶんからもつたわってきて、ぼくもたのしいきもちになりました」などと一日一日ごとにコメント書いてから返している。

 変形の交換日記?


 たまに書く前に眠くなってしまって寝てしまうことがあるが、そういう時は慌てて次の日の朝「えーっと、えっと」などと昨日のことを一所懸命思い出しながら朝食後に書いている。

 「そこまで焦らんでもいいんじゃ?」とも思うがミミルは真剣だ。


 正直、ショタジジイが羨ましいトコだが、こういうのは早い者勝ちだし、適度な距離感も必要だ。

 ジジイが適役だろう。


 この絵日記を懐かしい気持ちで1ページ1ページめくる日が来るのだろう。

 今からなんか泣ける気がする・・・・・・。




なんなんだ、このマイケル人気は・・・・・・

ちなみにマイケルは「拙者」「ござる」口調です

父のことを「パパ上」母のことを「ママ上」と言います

流石に「ニンニン」「にんともかんとも」とは言いません

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