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ょぅι゛ょと骨

鳳流院拓人氏の登場です

 「おはょぅι゛ょ!」

 床から浮いた状態で唐突に現れて挨拶してくるローブ姿の男。

 「・・・おはようございます、田中さん。」

 おそらくは間違いないだろう。


 「Noooooooo! 我輩は、『鳳』、『流』、『院』、『拓』、『人』!」

 ローブの裾をを翻して叫ぶ(おそらくは)偽装イケメン。

 バッ、バッ、バッと一語、一語ポーズを変えなくていいから・・・。

 「ミミルが起きちゃうんで静かにしてください、田中さん。」

 「ごめんなさい・・・。」


 まだ、普段ミミルが起きる時間じゃないっていうのに、まったく・・・。


 「おはようごじゃいましゅ、うしゃるたん、ほねしゃん・・・。」

 「おはようミミル。」

 あー、起きちゃったよ・・・ウサルパンチ一発は確定ね・・・。




 ◆

 ◆




 ウサルでミミルの洗顔、歯磨きを補助し、2号が着替えを準備、3号と4号で田中さんを廊下に引きずり出す。


 4号は怒りに任せて作ってしまったため、かなりトンでもない造形となっている。

 ウサルの下にマッチョな人間の体が付いた姿、ウサルーマンとでも言うべきか?

 フルボッコにしようかとも思ったが、素直に反省して大人しくしているので、頭に拳骨ひとつ落とすだけで済ませた。

 まあ、その辺のモンスターなら死ぬ一発なんだけどな。


 「ょぅι゛ょの爽やかな目覚めを邪魔してしまうとは、我輩、死をもって償うしか・・・ってとっくに死んでましたよ、我輩! ははははは!!」

 「殴り足りなかったか?」

 「それにしてもミミルちゃんは実に可愛い! 我輩、2次元原理主義者ですが、転向も已む無しですなぁ。ミミルちゃんは史上初の人間のまま女神になる存在かもしれませんです、はい。」

 「ショタジジイに渡して封印でもしてもらうか・・・。」

 「がっでむ、さのばびっち! ソウルフレンドだと思ってたのに、あ奴は我輩を裏切ったのですよ! この世での仮の名を我輩の墓標に刻むとはなんたる嫌がらせ! しかもそれだけに留まらず、あのパジャマ、こっそりと他のエンチャントに紛れて聖属性を付加するという悪行! おかげで、ほっぺぷにぷにが出来なかったではないですか!」

 「ジジイGJだな!」

 「イエス・ロリータ・ワンタッチですよ! ほっぺぷにぷにや頭ナデナデくらいは許されていい筈なのですよ!」

 「ワンタッチだろうが、ノータッチだろうが相手が不快に思えばギルティだ!」

 「セクハラの論理! ここでもただイケなのか!」

 「いや、ミミルの場合それはない。ガルバンとコルシオとガーデオの扱い同じだぞ? 」

 「我輩、ガルバンとコルシオは知らないのですよ?」

 「髭モジャ大男と鶏頭イケメンだ。」

 「流石、幼女神!」

 「いい加減、その偽装解いたら?」

 「そうですねぇ、ミミルちゃんの無垢な目は誤魔化せなかったようですしねぇ。」


 幻術を解くとそこには骨。

 ローブはそのままだが、生前がイケメンだったのか、フツメンだったのか、ブサメンだったのか分からない姿だ。

 解剖学マニアだと骨にも美醜を感じるというが、分からねえ世界だな。

 コレ見て「ほねしゃん」って言えるミミルは大物だ・・・。




 ◆

 ◆




 本体やウサルたちと朝食を取っているミミルのところへ、田中さんがお詫びをしたいというので連れていったが、流石の冒険者たちもギョッとした様子だった。

 あー、幻術解かない方が良かったか・・・?


 「あ、ほねしゃんでしゅ~!」とトコトコ近付くミミルに、田中さんは「先ほどは申し訳ありませんでした。今はこれが精一杯・・・」と小さな花を一つ、何も持ってなかった手から出して渡す。

 ミミルが受け取るとその花は大きな花束になって、そこから花吹雪が起こり、室内が花と花びらに満たされて、最後にはキラキラと光る光の粉になって消えていった。


 「おはながいっぱいでしゅ! ほねしゃんもまほうちゅかいなのでしゅか? しゅごいしゅごい!」

 ミミルに誉められて、骨なのにドヤ顔してるのが分かるのがウザい。

 なもんで、ウサルの耳をハリセンにして頭をどついておく。


 これが世界を救った英雄の一人とはなぁ・・・。



 ◆

 ◆



 

 ミミルと骨とウサルで町を行く。

 骨は無用の混乱を避けるため、偽装イケメン状態だ。

 町の女性たちもすれ違いざまにマジマジと見ているが、本人はミミルに夢中でアウト・オブ・眼中である。

 ミミルには骨に見えてるんだし、偽装だったら生前の姿のままでもいんじゃね? とか思うんだが、ソウルネームと同じようなこだわりなのだろうか?


 無意識に髪をファサっとかき上げては、周囲の女性にため息をつかせているが、あれが幻覚だと知っている俺には、かえって物悲しさを感じさせる。

 シークレットブーツを履いていることを知っている相手を見るのと同じ感じだ。


 そうしてやって来た喫茶店。

 ドアを開けるや否や「エ○ーナル・フォー○・ブリ○ード!」と叫ぶ田中さん。

 カウンターに立つガーデオの周囲が氷に包まれ、幻覚のはずなのに気温が下がった様に感じる。


 ガーデオがパチンと指を鳴らすと氷が消えていくが、なにもかも元のままとはいかなかった。

 ガーデオの鼻の下に似合わないカイゼル髭が鎮座していたのだ。


 「はっはっはー! 我輩の恨みを思い知ったか、ショタジジイ! その髭は一週間は消えないですぞ! よくも我輩の墓標にあの様な真似をしてくれましたね!」

 「それ以外は君の注文どおり、魔法少女たちの等身大石像で墓石囲んでハーレム状態にしてあげたじゃない!」

 「なまじ石像の出来が良かったから、余計に悔しい思いをしたのですよぉ!」


 「けんかはだめでしゅ!」

 おこってましゅよー、というほっぺた膨らませたぷんぷんフェイスのミミル。


 「いやいや、我輩たち仲良しですから!」

 「そうそう、僕たち親友だから!」

 肩まで組んで見せて仲良しアピールまでしてみせる、この世界の魔法の頂点たち。

 

 じーっと睨んでいたミミルは唐突に「えへら」と笑うと「なかなおりのあくしゅでしゅ!」と二人に指示を出す。

 

 ニコニコとミミルに見せるための笑顔を作って握手する二人。

 なんか腕をぶんぶんとヤケクソになってね?




 ◆

 ◆




 「やり遂げたのですな、流石我輩のソウルフレンド!」

 ウェイトレスのバイトにやって来た魔法少女たちを見て、骨がショタジジイに親指を立てる。

 ミミルはパフェとフルーツミックスジュースと絶賛格闘中だ。

 店内の注目はほぼミミルに集中しているので、認識阻害が無くても平気な状態だが、それでも律儀に認識阻害をかけてショタジジイと田中さんは旧交を温めている。


 死後の田中さんはふよふよとそのまま上の方に漂っていって、神や亜神たちに布教活動を行っていたのだそうだ。

 死んだ後まで何やってんだよ!

 中二病患った神様とか、俺らの元居た世界に移籍希望した神様まで出たとか、死後までフリーダムだな!

 他の神様も困っただろうな「僕は新世界の神となる!」とか言い出す神様が居ちゃ・・・。


 「我輩、あと五十年ばかしフラフラしてれば亜神になれると言われていたのですがね。ミミルちゃんの存在を知っていてもたっても居られずにアンデッドとして復活してしまいました! まあ亜神には真面目な大友君が成ってくれるでしょうし、彼は我輩よりそういうのに向いてますからなぁ。」


 勇者の一人である大友君は指○物語のモ○アの坑道みたいなトンネル型ダンジョンで「ここは俺に任せて先に行け!」をやってモンスターをバッタバッタとなぎ倒していたはいいものの、戦闘の余波で脆くなった通路に想定外の多数のモンスターが押し寄せ、通路と多数のモンスターごと奈落の底に落ちて死亡。

 「いやー、即死だったのが救いだよね、じわじわ死ぬとか嫌じゃん?」というのが本人の弁だそうだ。

 死後は「君、いい体してるな!」と自衛隊の勧誘の様なノリでバトル馬鹿系の神や亜神に誘われて、修行や模擬戦を重ねて、あと2、3年で亜神になりそうなのだとか。どこの龍球世界だよっ!


 これで真面目・・・・・・?

 彼の死を信じず生涯独身だったという、彼に惚れていたお姫様の話を考えると、笑うに笑えない・・・。


 そのお姫様も死後は大友君を上回る修行ペースで既に亜神となっており、「せめて子どもでもいればその後の人生も張りが有ったのに」と婚前交渉に子宝を授ける加護を与えているとかで、この世界、死後の方がフリーダムじゃね?




 ◆

 ◆




 宿に戻った俺たちだが、何故か田中さんが着いて来た。


 俺たちの部屋の隣を、どう交渉したのか借りてしまった。

 

 今は俺たちの部屋で幻術を使って再現した、カードを集める魔法少女のアニメを上映している。

 大きなお友達が大好きだった作品だが、本来の視聴者層である子どもにも楽しめる作品だ。

 うーん、やっぱこういうの見てるとミミルに同世代のお友達が欲しくなるな。


 保育園とか幼稚園は流石にこの世界にはないんだろうなぁ。

 大人に囲まれて育つと「いい子」「聞き分けのいい子」になっちゃいがちなんだよな、自分の言いたいこと飲み込んじゃうような。

 なんとか出来ないかな?


 取り敢えずは食堂に来るお客さんの家族や知り合いに、ミミルと同じくらいの年の子が居ないか聞いてみるか?


 ・・・ん?

 別の作品?

 なんかウサルにちょっと似た・・・・・・なんてもんを見せようとしてんだよ、おい!

 子どもに見せていい作品じゃねーだろ!




 ◆

 ◆



 

 調子に乗ってトンでもないことをしかけた骨の折檻を4号に任せて、ミミルと共に夕食を取りに階段を下りる。

 「まっ○のうち! まっ○のうち!」と4号も絶好調のようだ。

 

 食堂にはコルシオも顔を見せていて「ミミルちゃんこんばんわ! 今日も可愛いねー!」といつものテンションだ。

 頭の羽もバッサバッサと元気がいい。


 「こんばんわー!」

 ミミルもだんだんと大きな声が出せる様になってきた。


 今日の夕食のメニューは白身魚のフライ。

 ナマズの様なちょっとしたモンスターなら食べてしまうほどの大きさの魚だが、その身は淡白で実においしいのだそうだ。

 コルシオが「俺の好物なんだよねー!」と言いながらそんな事を説明してくれた。


 ミミルもおいしそうに食べている。

 丁寧に調理されているので骨や小骨の心配も無い。

 案外、そういうことで魚嫌いになったりする人も居るからな。

 ミミルは好き嫌いの無いいい子だけど、やっぱりおいしいものだと一際嬉しそうに食べる。

 「おいしいね! あまんだしゃん、ありがとー!」

 

 うん、嬉しかったのは分かる。

 だけど、抱きしめるのはミミルが食べ終わってからにしような、アマンダ。





その後のマイケル・・・

アメリカ帰国時に完全別人のパスポート写真と異世界&日本生活で下手になっていた英語のせいで入国審査でトラブル。

父親が米軍のエロい人だったんでなんとかなった。

大学卒業後ニートをしていたところを父親に陸軍に放り込まれる。

異世界仕込みの近接戦能力で頭角を現し、昇格と共にニンジャソードの制式化を提案、多くの賛同者を獲得し、米軍NINJA部隊の初代隊長となった。

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