ょぅι゛ょと2号
ショタジジイ登場です
女性陣に髪をいじられまくったお陰で、実に様々な髪型に変化できる様になった。
「○ぃおぼえた」じゃないけど、どこがどうなっているか覚えたんでミミルの注文にも対応出来る。
ウェーブをかけたり、アクセサリに見える形に変形したり、花や糸を編みこんだ様に見えるものだって偽装出来るだろう。
まあ、髪をいじってもらうというのもコミュニケーションの一つだし、そうしてくれる相手が居る時は人の手でやってもらった方がいいだろうけどな。
明けて翌日、鶏イケメンが再度来襲。
お土産にと町で最近流行っているお菓子を持ってくるというそつの無さである。
さすが鶏頭といえどイケメン。
この辺がさらっと出来るのがイケメンスキルの高さだよな。
「ありがとうごじゃいましゅ!」とミミルの満面の笑顔でのお礼を受けて、「ミミルちゃん可愛いー!」と雄たけびをあげていた。
どうもテンションが上がると叫んでしまうという癖があるようで、その辺は鶏の加護のせいかもしれないな。
うん、天然ものイケメンだけど憎めないヤツだ。
野郎の名前を覚える趣味は無いけど、こいつの名前は覚えてやってもいいかもしれない。
コルシオだったな、あじ塩や海苔塩と間違えないようにしよう。
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コルシオの持って来たお菓子をおいしそうに食べるミミルを、みんなでなごなごしながら見ている内に意外に時間が経過してしまった。
「依頼に遅れてしまうー! あ、ミミルちゃんまたね~!」と慌しくコルシオが去っていったのを機に皆それぞれ日常へ戻っていった。
俺はというと本体はいつも通りミミルといっしょ、ウサルはミミルの側で跳ねており、魔法少女たちの到来を機に2号を分離させ、2号で彼女たちの師匠であるという「人間山脈」の元へ向かう。
この際、1号と2号が全く同じで紛らわしい、ややこしい、との声が出たので、2号の耳は半分くらいのところから先を赤くした。
「やっぱ2号は赤手袋だよな」と出所の分からない満足感に浸りつつ、何故か魔法少女たちに代わる代わる抱きかかえられた状態で町を行く。
ぬいぐるみ状態である。
あるいは魔法少女のマスコットキャラか?
「僕と契約して「それ以上はいけない!」・・・うん、なんか僕もマズい気がしてた。」
言いかけたところでリルフィンのツッコミが入って助かった。
そのまま言ってたら銃で穴だらけの未来が待ってた気がする。
「ここだよ!」
彼女たちが足を止めた場所は・・・どう見ても喫茶店なんですけど?
ここに居るの?
人間山脈が?
なんか裸エプロンの油テカマッチョの出迎えとかありそうで、回れ右したいんだけどな?
帰っちゃダメ?
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喫茶店(?)の中は嫌な予想に反して、実に普通の空間だった。
圧倒的に女性比率が高かったけどな!
もう、男一人とかで入ったら勇者認定受けられるレベル。
ミミルをつれて来ても良かったかもね?
ミミルとおんなじ年くらいの女の子も居るし。
同年代のお友達ってのも大事だよね。
「「「お連れしました、フロア入ります!」」」
魔法少女たちは2号をそっと下ろすと、近くに居た子からエプロンを受取り、ウェイトレスを始めてしまった。
視線で促されるまま、カウンターの「美少年」の元へと移動する。
整った顔立ちではあるが、少女と間違える様なことは無い外見だ。
「はじめまして、ウサルくん、それとも別の名前でお呼びした方がよろしいかな? 私はガーデオ、『人間山脈』などと仰々しい呼び名を持った魔法使いだ。」
これはマジで予想外・・・いや、異名と全然関係無さそうな・・・どころか、どう見ても十歳以下なんだが?
これ? ショタジジイってやつ・・・・・・?
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「お師匠様は山脈一つ分の土、岩、水、氷を扱えることから『人間山脈』って呼ばれてるんですよ。それでは、ごゆっくりどーぞ!」
サリアが2号の前にお冷やを置きながらそんなことを説明し、そのまま去っていく。
分かり辛え異名だな。
解説なきゃ永遠に理解出来ねえぞ?
ガーデオは指をパチンと鳴らすと「話をしよう」と言い出した。
まあ、こちらもそのつもりで来たからな。
「あれは今から三十六万「ちょっと待てーい!」・・・なんだい?」
魔法少女のコスといい、このセリフといい・・・転生者?
人間、しかも美少年とか羨まし過ぎるぞ!
「・・・まあいいや、単刀直入に聞こう、君はいったい何者だい?」
「僕は誰かに記憶を植え付けられたり、狂ったりしていないんであれば前世異世界人の不定形寄生生物だね。」
「・・・これは、また、随分あっさりと答えるものだね。」
「隠して悪意ある存在と受取られる方が面倒そうだしね。」
「その口調疲れないかい?」
「ウサルの姿をした存在が話す際には『僕』口調で話すことにしてるんだ。とっさの時とか『俺』口調が出ちゃうと困るしね。」
「先ほど指を鳴らしたのは認識を阻害する結界を張ったんだよ。他の人間には君が今の姿のまま、僕と他愛の無い話をしている様に見える。」
なるほど、単なるネタじゃなく、良くある魔法系強キャラの動作だったわけね。
本来なら前世の人間の姿をとった方がいいだんろうけどな、覚えてねえんだよ、イケメンの範疇に入らず、太り過ぎでもやせ過ぎでもなく、物凄い高身長でも低身長でも無かったってことくらいしか分からないんだ。
なもんで、こんな姿をとってみた。
「ブラックウサル君とでも呼ぼうか?」
「あー、マサギとでも呼んでくれ。」
ウサルの逆でマサギと名乗る。
黒い体に逆三角形の目。
体には赤いひび割れの様な模様がところどころ走り、耳の先端は先割れスプーンの様な形状で金属光沢を持っている。
「随分とワイルドな感じになったねぇ、まあ、まだマスコット枠で居られる範疇だけど。」
「暴走はしないけど活動限界があるからな、用件はなるべく早く済ませたい。」
「まあ、君の事はおいおい話す機会もあるだろうから後回しにして、ミミルちゃんのことについて話をしよう。」
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「まあ僕が見た目通りの年齢で無いことはすぐに分かったと思うけど、これでも八百年ほど生きてる。半分くらいは人間とかに関わらずに引きこもってくらしてたんだけどね。僕みたいな存在は『取替えっ子』と呼ばれていて、昔は魔人族や妖精族が人族の赤ん坊と自分たちの赤ん坊を取り替えているのだと思われていたようだ。」
前世のおとぎ話とかでもそういうネタあったな。
「特徴としては人族では有り得ないほどの多量の魔力を持つこと、その持つ魔力が多ければ多いほど、早い時点で体の成長が止まることなどがある。それ以外は全く普通だよ? 違う種族の特徴とかは無い。」
「ミミルがそうだと?」
「可能性は高いね。」
「俺がモンスターを狩ってレベルアップしたりしたせいじゃね?」
「種族的な上限があるからね。どんなにモンスターを倒したところで、僕たちのレベルには達しないよ。」
「俺が寄生したからとかは?」
「肉体の方の強化はそうかもね。でも魔力は違う。というか逆に彼女の魔力で君の方が強化されてないかい?」
ミミルに寄生して確かに異常なほど「強くなった」が、そういう理屈なのか?
「まあ、そうした事情から先々嫌でも魔法に関わらざるを得なくなるだろうからね。他の人間に教わるより知識の面でも、魔法に限らないこの体質・・・と言っていいんだろうね、そうした面でも、変な連中がちょっかいをかけて来るのを避けるという意味でもいいんじゃないかと思ってね。まあ、ちょっとしたおせっかいとでも思ってもらえばいいよ。これでも過去には国の筆頭魔導師だったこともあるし、幾つかの国で魔術顧問の肩書きも持っている。利用する相手としては最上級だと思うよ、僕は。」
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「で、他に何か聞きたいことはあるかな?」
「ミミルに関することは今度連れてきた時にでも話せばいいとして・・・『魔法少女』・・・あんた転生者か?」
「いーや、僕はこの世界の天然ものだね。以前、魔王が誕生した時に異世界から勇者を召喚しようとした人間が居てね、僕は反対したんだけどねぇ・・・・・・その時に巻き込まれた魔法使いと友達になってね。」
「この世界でもあったんだ、勇者召喚・・・。」
「ソウルネームが『鳳流院拓人』だったかなあ、本名が田中緑郎、僕なんか本名の方がよっぽどいい名前だと思うんだけどねぇ。農地のど真ん中の緑の子どもって意味だろ?」
「まあ、本名の方が『痛く』ないな・・・。」
「まあ、その辺はさておき、その彼、僕は今でも彼が史上最強の幻術師だと思ってるけど、その幻術であちらの世界のアニメだっけ、それを色々と見せてくれてねぇ、ま○かとか、な○はとか、プ○キュアとか、お○ゃ魔女とか、さ○らとか・・・。」
「良くは覚えてはいないけど、まあ納得出来るラインナップだな。」
「ああ、そうそう最初に見せて貰ったのはレ○アースだったか、なんせ僕を見た第一声が『ショタジジイとか、レ○アースかよ! 召喚した姫さんとラスボスが○○○○じゃねーだろーな!』だったからね。」
「異世界第一声がそれとは訓練されたオタだったんだな、そいつは・・・。」
「魔王との最終戦で『一体いつからお前の攻撃が俺たちに当たっていると錯覚していた?』とか魔王相手にやってたくらいだからねぇ・・・。」
「魔王が倒されて魔人族も解放されて良き隣人に戻って、召喚された勇者は一人死んじゃってたけど、ほとんどは元の世界に戻って、この辺は元々は召喚する魔法しかなかったのを勝手に呼んじゃうから、仕方無しに僕が帰す魔法を一から作ったんだけどね。」
「一人死んじゃったのかよ。」
「神か亜神でもなきゃ死者蘇生なんて出来ないよ?」
「魔人族って、魔王の配下だったんじゃないのか?」
「魔王の命令には逆らえないから仕方がないよ。それが魔王のスキルのひとつだったから。」
「そっか、まあ、当人たちが納得してるならいっか。」
「話はそれちゃったけど、彼は元の世界には戻らなかったからね。こっちで楽しく暮らして、彼の影響で僕もそっち方面に詳しくなっちゃってね。」
なにやってんだよ、この世界での先達!
変な影響を与えてんじゃねーよ!
「彼の注文やら自分自身の趣味やらで色々アイテムを作ってたんだけど、魔法の才能のある冒険者志望の仲良しな女の子たちに出会ってねぇ・・・。」
「それで?」
「全力を傾けてコスチューム一式作ってた、気が付いたら。まあ、当人たちも気に入ってくれたし、性能的にもこれまでで一番優れたものになったしねぇ。」
なまじ高スペックなヤツがオタになると手がつけられねえな・・・。
まあ、誰も不幸にはなってないからいっか・・・。
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「ウサルくんの名前で冒険者登録すればいいのに。」
これからどうしようか、色々と考えていると話すとガーデオはさも当然の様に言って来た。
「いや、俺で登録出来るのか?」
「出来るよ、あ、そっか、その辺の常識もないのか。『人間』と『亜人』の区別とかもなんか変なんだっけ、異世界って。」
「まあ、そのガーデオの友人と俺の居た世界が全く同じかどうかは分からないけどな。」
「人族、魔人族、獣人族、妖精族、龍人族、森人族、岩人族、海人族なんていう頭が一つ手と足が二つずつで直立して社会的行動が可能な種族は全部人間、それ以外の社会的行動が可能で『人間』に混じって、あるいは隣接して生活が可能な種族はすべて『亜人』ってことになってる。商人の護衛でこの町トップクラスの冒険者はケンタウロスがリーダー、フォレストウルフがサブリーダーだよ。」
「そっか、ためになった。今度はミミルを連れてくる!」
「待ってるからね!」
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色々考え込みながら宿に戻って来た俺に「あんた、誰!」とアマンダの声、ミミルも不審そうに見ている。
しまった!
うっかりマサギ形態で戻ってきてしまった。
本体は本体でウサルを操作してミミルと遊ぶのに夢中になってたからな。
こうなったら・・・。
「変~身!!! とうっ!!!」
空中にジャンプ、回転している間にウサル2号の姿に戻る。
「あっ2ごうしゃんでしゅ、おかえりなしゃい!」
「ただいま、ミミルちゃん!」
「あんた、どこまで突き抜ける気よ・・・。」
愚問だなアマンダ、ミミルが望むならどこまででも突き抜けて見せるさ!
+α=取替えっ子 でした
この世界の取替えっ子は言ってみれば魔法的突然変異体です