表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/28

ょぅι゛ょと魔法少女

今回は残酷なシーンはありません


 「はーい、みんな注目! 今日からここで暮らすミミルちゃんとウサルくんです。泣かせるような真似したらブチコロコロした上で、前払いがいくらあろうが速攻で叩き出すからね!」


 「みみるでしゅ・・・。」


 「か・・・可愛いーーーーい!!!!」

 「わ、私の妹にならない?」

 「一緒にお風呂入りましょ!」

 「お姉ちゃんと一緒に食事しましょ、お膝の上に座って?」

 「だ、だっこして頬ずりしたーい!」

 「膝の上に座らせて頭クンカクンカしたい!」

 「おまわりさん、こいつです!」

 「ウサ耳幼女、アリだな・・・。」


 町を見ながらミミルと会話をして過ごす内に、気付けば夕焼けとなっていてウサルに先導させて下の食堂へと向かうことにした。


 またアマンダに抱きしめられてミミルが窒息しかけたが、息が出来ない状態が苦しいというだけで抱きしめられること自体はミミルが嫌がっていないので、暴走をたしなめる程度で済ませている。

 愛情を持って抱きしめられるという経験は、出来るだけ多く子どもの間に感じておくべきだと思う。

 頭を撫でるのはウサルでも出来るが、抱きしめることは出来ない(というか人間が抱きしめるのとは全く別物になっちゃう)。


 女性冒険者が多いという話通り、先ほどは俺たちしか居なかった食堂には既に食事や飲酒を始めている女性が多く座っていて、ひとしきり抱きしめに満足したアマンダがその客たちにミミルを紹介したのだ。

 みんな、目がハートマークになってる。

 ここでは少数派のおっさんたちもだ。


 ウサル?

 ウサルも紹介されたよ?

 うん、お姉さま方に可愛がられてる。


 今の俺は性欲が無いし、女性にもみくちゃにされているウサルを見ても「大変そうだなぁ」と思うだけだが、人間の時だったら嫉妬に狂って「どちくしょお~!」と叫んでいたことだろう。

 話だけ聞けば大きなお友達からは「淫獣」呼ばわりされるかもしれない。


 まるでボールの様に「独占はズルイわよ! 今度はこっちにパース!」と放り投げられては途中でインターセプトされたり、「モチモチしておいしそうね、ちょっと齧ってみていい?」と酔っ払いに噛み付かれたりしてるのを見てもなお羨ましいと思う人間も少ないだろうが・・・。

 ボール「は」ともだちではなくボール「な」ともだち状態である。

 まあ、それでも宇宙世紀のボールよりはましだろう。

 

 ウサルとミミルが開放されて夕食を取るまで三十分以上かかった・・・。




 ◆

 ◆




 食事が終わって、アマンダがミミルのためだけに作ってくれたホットミルクを飲み終えると、ミミルは「おやしゅみなしゃい」と周囲の他のお客さんとアマンダに挨拶をした。

 皆、とろける様な表情をしていた。

 うん、ただでさえ可愛いミミルが満腹から来る幸福感と、睡魔から来る無防備さを見せている姿は見る人に天国を垣間見させるほどだ。

 ミミルは巨大化したウサルにおぶさって階段を上り、部屋に戻った時点で既にすやすやと眠っていた。

 ウサルと本体でベッドに寝かせ、掛け布団をかける。


 俺はミミルの抱き枕と化した巨大ウサルはそのままに、ウサル2号を起動した。

 まあ現状ウサル1号は本体に直接接続した状態だから(要は体の一部を変形させているのと同じ)、分身としての操作は普段と全く変わらないんだけどな。


 ピョコタンピョコタンと階段を下り、食事だけに来た客や食事を終えて部屋に引上げた客の分、少し人数が減り落ち着いた感じになった食堂に戻って来た。


 「どうしたの、ウサル君。」

 「ミミルの買い物をするのにお金を作るのと、ミミルの服を買うのにいいお店を聞こうかと思ってね。」

 「そうね、昼が済めば夜の仕込みの前に少し時間が空くから付き合えるわよ。」


 ピークが過ぎ少し余裕が出来たアマンダと話をしていると、周囲に女性冒険者が寄って来た。


 「ミミルちゃんのお買い物と聞いて・・・。」

 「あんなに可愛い子が可愛いお洋服を着たら鼻血ものよ?」

 「服だけでなく、ハンカチとか入れておけるショルダーポーチとかも必要!」

 「値切り交渉なら任せなさい!」

 「むしろお店がお金を払ってでも着てもらうレベル!」

 「「「「確かに!」」」」


 三人寄れば姦しい女性が三人どころではない数だ。

 ウサル2号を介してという状況で無ければ俺も気後れしていただろう。


 「魔法の杖はお花の形のがいいと思う。」

 「ローブは白に赤のライン・・・白からピンクのグラデーションでもいいかもね。」

 「アクセサリは金属製は重いからモンスターの皮素材を可愛い色に染めたものがいいな!」

 

 話はまだ続いてたみたいだ。

 っていうか、この子ら何者?


 口を挟んで来たのは冒険者の「職業:魔法使い」というより、日曜の朝とかのアニメに出てきそうな、白と原色で意外に肌の露出が多い服を着た少女たちだった。


 「魔法少女・・・かい?」


 「お師匠様以外にその言葉知ってる人いたんだー!」

 「いやいやサリア、人じゃないから!」

 「魔女っ子でも可らしい・・・。」


 わけが分からない・・・よ?




 ◆

 ◆




 マゼンダの元気で能天気そうな子がサリア、イエローのツッコミ役で苦労してそうな子がニーナ、シアンの冷静そうで実は天然そうな子がリルフィンというそうだ。

 見事に色の三原色である。

 

 彼女たちに言わせれば、ミミルは常識外れと言っていいほどの魔力を持っていて、もしかすると彼女たちの師匠すら上回るかもしれないのだとか。

 はぁ、魔法ね?

 ミミルの素質なのか、それともパーティー扱いとかそんなんで俺のモンスター大虐殺のせいでミミルのレベルが上がってしまった結果なのか。

 前者ならともかく、後者だとちとマズいかもしれないな。

 これからも際限なく上がっていってしまうかもしれない。


 これは彼女たちのお師匠様とやらに話を聞いておくべきか?




 ◆

 ◆




 あの後、集まっていた冒険者にモンスター素材の一部を売ってかなりのまとまったお金を得た俺は、ミミルとアマンダ、そして何故かついて来た魔法少女(?)たちと洋服の店を廻っている。


 他の女性冒険者たちは「なんで今日依頼入れちゃったのよぉ~!」とか「次は絶対アタシが行ける日にしなさいよ!」とか言いながら仕事に向かったり、あるいはパーティメンバーらしき人間に引き摺られていった。

 アマンダも忙しいだろうに、どっかからお菓子まで引っ張り出して来て、ミミルを昼食が終わるまで引き止めておいての同行である。

 魔法少女たちは食堂には居なかったはずなのに、アマンダの宿から出発して気が付いたらしれっと並んで歩いていた。

 追い返すのもなんなんで、そのまま同行を認めているが、宿主命の俺でもひくくらいの情熱の傾けっぷりである。


 そんな俺たちが入った店では、お店の人間もその高いテンションに引き摺られたのかあれこれと引っ張り出してきて、ミミルによるファッションショーが繰り広げられたのだった。

 結局、子ども向けの服を扱うお店を全て回る勢いで、ワンピースを2着、ブラウスを3着、普段着使いのシャツが3枚、スカートとキュロットを2つずつ、靴を三足、それに下着や靴下などを薦められるままにすべて買った。薦められてミミルが気に入った様に見えたものは全部買う勢いだったから、もしかすると良く覚えてないだけでもっと買っていたかもしれない。

 下着は流石に俺が選ぶのはキツかったから、アマンダたちがついて来てくれて非常に助かった。


 着替えて見せている最中はニコニコしたり、エヘヘとはにかんで見せたりしていたミミルだが、買い物が終わり、流石に疲れたのか今は巨大化したウサルの上で寝ている。


 「時間が出来た時にでも私たちのお師匠様に会ってみませんか?」

 「師匠は変わった人だけど親切・・・。」

 

 「うーん、僕は構わないんだけど、ミミルが怖がったり退屈したりしないかな?」

 

 「貴方たちの師匠って『人間山脈』だっけ?」

 「そうです。天災級魔術師の・・・。」


 え? 『人間山脈』って、なによ!

 もしかしてガルバン以上の巨体のテカテカマッチョ?

 ミミル泣いちゃうよ、そんなの見たら!


 「無理にとは言わないけれど、会っておいた方がいいと思うわ。なんだったら私がミミルちゃんを預って、まず貴方が会ってみるとかはどうかしら?」

 アマンダ・・・一見親切で言ってるように見えて自分の欲望に忠実なヤツ。

 ミミル預る方が主目的で、会ってみたらってのはその正当化だろ?


 まあ、先に俺だけで会うってのはいいかもな?




 ◆

 ◆




 宿に戻るとイケメンが待っていた。

 「俺の他に加護持ちが居るって話を聞いてね、顔見せと挨拶でもしとこうかと思ったんだが・・・・・・まあ、また来るんでよろしく伝えといてくれ!」

 ミミルが寝ているのを見ると爽やかなスマイルを浮かべて去っていった。


 ・・・すげえイケメンだが、アイツには優しく出来る気がする。


 いや、性格とかそんなんじゃねえ。

 アイツの精霊って「鶏」なんだよ。

 白い髪に白い羽根と真っ赤なトサカ。

 どんなに「キリッ!」として見せても、いや真面目な顔すればするほど笑えてしまう。

 もっと崩れた顔してた方が救われたんじゃないかってくらいミスマッチで・・・そっか、加護持ちってああいうパターンもあるんだな・・・・・・。

 この町ではトップクラスの冒険者であると同時に、名物男でもあるのだという。


 人間の慣れってすげえよな、頭に羽根の生えたトサカ付きのイケメンが普通に馴染んでるんだから・・・・・・。



 ショックから立ち直った俺は、今後説明するのも面倒だし、接する機会も多いからとアマンダの前でウサルの分身を行った。

 

 「なんでもアリね、あんたは・・・。」とアマンダが煤けてた。


 実は不定形寄生体で、前世は人間だったなんてのに比べりゃ大したことないじゃんなぁ?


 この分身、最大の利点は異次元収納が共有されること。

 つまりは、ここでウサル2号がアマンダからカギを受取って収納すれば、ミミルを担いで行ったウサルや俺本体がカギを取り出して使えるのだ。


 これってかなり便利じゃね?

 分身の数増やして独立稼動時間を増やせば、出来ることが物凄く増えるよな?




 ◆

 ◆



 

 寝ていたミミルが起き、少し遅い夕食後はミミルの本日のファッションショー第二弾となった。

 買ってきた服に色々と着替えさせられた上、「これにはこれじゃない?」「もう少し着回し考えて買わないと!」「リボンもいいけどカチューシャもいけるかも」などと再び騒がしいことに。


 ミミルが楽しそうだからいいけどね、別に。


 今日、買った服の中では白いワンピースがミミルの一番のお気に入りのようだ。

 もちろん、他の服も気に入っている様子だが、この服を着た時の笑顔が一番だった。

 

 そんなミミルの服に合わせて髪形も周囲の女性が色々と変えてくれてるが、ミミルの髪って実は俺の本体なんだよねぇ。

 ゴツイ野郎に弄繰り回されるよりはいいけど、あんまりいじられるのはなあ・・・。

 前世の俺だったらご褒美なんだけどねぇ、今の俺は人外なわけで、別に人間の女性に触られてもねぇ・・・。

 「サラッサラでいい感触・・・」なんて頬ずりしてるけど、それは私のおいなり・・・じゃなくて本体だ!


 実は結構どころか物凄く危険な代物なんだけどなぁ・・・・・・。



  

加護のネタが浮かぶと同時に出来たキャラがフライング気味に登場

次回はプラスαに関する部分がメイン予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ