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ょぅι゛ょとおっぱい

ガルバンの外見は髭をモジャモジャになるまで伸ばしたアンドレ・ザ・ジャイアントです(「怖がるな!」という方が無茶ですね)

 「加護持ちだろ? 珍しくはあるが、それで差別とかはないぞ? むしろ羨ましがられたり、年寄りだと有り難がられたりするな。まあ、そんなの抜きにして似合ってるからいいんじゃねえかな?」


 ミミルのウサ耳について「この辺りでは見かけないけど大丈夫か?」とガルバンに尋ねてみたところ、そんな答えが返ってきた。

 いまだ眠り続けるミミルを見るガルバンの目は優しい。

 俺の宿主は世界一可愛いだろう?

 思わず優しい気持ちになっちゃうよな?



 獣人とかも居るそうだが、そっちはもっと獣っぽい感じで耳だけという訳ではないらしい。


 加護持ちは精霊によって愛された存在と言われていて、ネイティブ・アメリカンのトーテムに近い感じで、動物の姿をした精霊がその相手の頭に祝福を与えたもので、髪の色が特殊な色になったり、獣の耳や鳥の羽が生えたりする。

 前世的なケモ耳との大きな違いは人間の耳がしっかり残っていることであろうか?

 普通の物音は人間の耳で、精霊の声や魔法的な音は獣の耳で聞き、翼を持つ鳥系の精霊は視覚が強化されることが多いそうだ。


 俺みたいな寄生生物の偽装とかも混ざってそうな気がするな?

 まあ、ミミルにとっては都合のいい話なんで、これからは「加護持ち」ということで通すことにしよう。


 お、ミミルが目を覚ましそうだ。

 水を蓄えるついでに新しく覚えた技術で気化熱を利用して冷やして置いた果物を、寝起きで喉が渇いているだろうから出すことにしよう。

 ついでにガルバンにも一個くらいならあげてもいいかな?




 ◆

 ◆




 冷たく冷やした果物に目を丸くしていたミミルだが、おいしそうにニコニコと食べている。

 まあ、冷やすと少し甘みが弱まるが、元々かなり甘い果実だから問題はないだろう。

 ガルバンもその冷たさに驚きながらも感謝を口にして居るが、そっちは別にどうでもいい。


 今度はシャーベットにでも挑戦してみるかな?


 「うしゃるたーん、これあげゆ。」


 ミミルが道の脇にてててーっとかけていって、しゃがみこむとその手に掴んだものをウサルにくれた。


 可愛らしい小さな白い花だ。


 「どうも有難うミミル! 大事にするね!」


 これは永久保存ものだろ!

 俺じゃなくウサルにくれたものだが、そんなことはどうでもいい。

 これは後で今までに吸収したものの中で、鉱物質且つ透明度の高いものでコーティングしておこう。


 お礼を言うとミミルは一層嬉しそうに笑う。

 またトテトテとかけてしゃがみこみ、今度はガルバンに黄色い花を。

 ぐぬぬ、ガルバンの癖に生意気だぞ! 


 こうしてミミルに合わせた非常に遅いペースで歩きつつも安全確保は続けている訳で、つい先ほども例のレベルアップ感といったものを感じた。


 今回はちょっとテンション上がる能力だ。

 ファンタジー的に夢が広がる異次元収納的なもの。

 ただ、無限に広がる空間に繋がるというより、入れようとしたもののサイズまで袋の様なものが世界の外側に伸びて広がっている感じだ。

 

 ともあれ、これまでこっそり体内に隠し持ってた水や果物、「もしかして金になるんじゃないかなぁ」なんて思って取って置いたモンスターの体の一部(牙とか爪とか頭部丸ごととか)を入れておける。

 頭部丸ごとってのは毒蛇っぽいモンスターのだ。

 確か牙の付け根とかに毒嚢があったんじゃ無かった?

 この世界に冒険者とか、そういうシステムがあるかは分からないけれど、入手に一定の危険を伴うものには一定の価値が付くはずだ。

 俺は金とかなくても生きていけるが、ミミルには必要だ。

 

 うん、まずは服だな。

 俺の能力を使えば服の形状に体を擬態することは出来る。

 全身をすっぽり覆って生体パワードスーツ化だって出来る。

 ただ、将来的にミミルが成長し、色々なことを理解する様になった時に変な目で見られるのは避けたいのだ(「このロリコンめ」なんて目で見られたら軽く死ねる)。

 これが凄く寒かったりして、そのままの服装では問題があるというなら躊躇はしないが、気候的に現状問題は無い。

 後は俺の知識の無さだな。

 この世界でどういう服が普通なのか分からないし、前世知識では女の子の服装というとなんか変に露出度の高いものか、屋外活動にはとうてい向きそうも無いヒラヒラのものしかないのだ。

 明確な部分は忘却の彼方だが、前世の俺ってかなりダメなヤツじゃね?

 まあ、子供服メーカーや子供向けの服のお店で働いていたわけではなく、子持ちでも無いのに異様に子供服に詳しいとかいうよりはマシかもしれないが・・・。

 ミミルにはどんな服が似合うかな?

 ガルバンは結構いいやつだけど、こういう話は出来ないんだよなぁ・・・。




 ◆

 ◆ 



 ガルバンが軽く森の様子を見に来た様な感じだったんで割と近いのだろうなと思った街は、思っていたよりは距離があったものの、先ほどようやく目視出来る距離となった。


 「あれがまちでしゅか、おおきいでしゅねぇ!」

 目をまん丸にして町を見ているミミル。

 ゴロゴロとした石で根本付近を固められた丸太丸出しの木で囲われた町は街道から分かれる形で太い道が門まで伸びていて、ガルバンの背丈より長い槍を抱えた兵士らしき男たちが二人、そこに立っていた。

 

 「おう、ガルバンか、今日は買い物か? ん? そっちのちびっこいのは、まさか、ガルバン、俺たちに捕まる様な真似をしたんじゃないだろうな?」

 口調で完全に冗談だと分かる気安い態度で話しかけて来た兵士に、ガルバンが事情を説明し、すっかり荷物扱いで存在を忘れ去っていた山賊を渡すと兵士たちのミミルに向ける視線が同情に満ちたものとなり「そっか、しっかり力になってやれよ! なんか俺たちに出来ることがあれば言ってくれ・・・金以外ならな!」と中へ通してくれた。


 中は俺の前世知識の目で見るとローカル線の駅前通りといった感じで、門を基点にメインストリートが通り、店が立ち並んでいる。

 そこに交差する様に細い道が交わって、おそらくは住宅とか工房とかあるんだろう。

 

 人の流れはそこそこ、寂れている訳でも無く、祭りの様な活気があるわけでもない。

 それでも俺は異国情緒というか異世界情緒を、ミミルは初めて見る物の多い町の風景を楽しみながら、時々ガルバンに質問をしたりもしながら歩いていた。


 ・・・・・・のだが、これは「お約束」ってヤツなのか?

 まあ、なんというか、見るからに社会に貢献してなさそうな、「お前、絶対息が臭いだろ、話しかけてくるなよ!」って感じの連中がガルバンに絡み始めた。

 露店のおばちゃんたちはミミルに「こっち、こっち、こっちにおいで!」と巻き込まれないように手招きしてくれている。

 少しの間なら任せちゃっても平気かな?

 

 まあ、本体は自動的にミミルと一緒だから、実のトコなんも問題ないんだけどね?


 手近なトコに居たおばちゃんにウサルでミミルのことを頼むと、ウサルをガルバンの隣に並ばせる。


 「これが噂の馬鹿かい、ガルバン? 人間の言葉は通じるの? いきなり噛み付いてきたりしないかい?」

 

 一瞬、キョトンとしたものの「お前にお似合いのの助っ人だな」と嘲る馬鹿たち。


 笑い声も消えぬ間にパンチ一閃。


 屋根の上に馬鹿をご案内する。


 実際には殴るというより放り投げている感じだ。

 落ちない位置に着弾する様にはしているが、慌てて落ちたところで自業自得。

 というか、むしろその方が望ましくね?

 ポン、ポン、ポンっと軽く排除するとミミルが拍手。


 「うしゃるたんつよいでしゅ! かっこいいでしゅ!」


 つられる様におばちゃんたちも拍手。

 ちょっと引きつっていた皆の表情に笑顔が戻る。

 上で馬鹿が喚いているがみんなでスルー。

 あー、屋根の下に住んでいる人たちには悪いことしたな。

 町の浄化活動に協力したってことで勘弁してもらえないかな?




 ◆

 ◆




 「きゃー、可愛い!」

 言うなりミミルが抱きしめられた。

 この俺が対応出来る間もなく・・・だと?

 出来るな、この女。


 「お、おっぱいがくるしいでしゅ・・・。」

 ミミルが埋もれているのでウサルで割り込んで引き剥がす。


 「うわぁ、この子も可愛い! ふわふわね!」

 「う、うしゃるたんがー!」

 ウサルが「ウサ/サル」になっちゃいそうなんで、少し力を弱めてもらえませんかねぇ・・・?

 

 ガルバンが案内し、俺たちを連れてきた宿屋だという建物で俺たちを迎えたのは、そんな凶器とも言える大きな胸をした赤い髪の女性だった。




 ◆

 ◆



 

 「ごめんなさいねぇ、可愛いものにはつい夢中になっちゃって。」

 店の若女将だというその女性の名はアマンダ。

 元・冒険者だという。

 

 この世界、冒険者とかあったんだな、ギルドとかランクとかあるのか?

 後で聞いてみよう。


 「おいしい? まだまだおかわりあるから遠慮しなくていいのよ?」


 お店に流れる料理の匂いに鼻をひくひくさせていたミミルに、「良かったら食べる?」とシチューの様なものを深皿によそって出してきてくれたのだ。

 ミミルはふーふーと小さな口を尖らせて息を吹きかけてはひと匙ひと匙口に運んで笑顔で食べている。

 ほっぺたにちょっと付けているのはご愛嬌、むしろ可愛らしさをより強調するアクセントと言ってもいいだろう?

 

 「僕の方からもお礼を言うよ、どうもありがとう。」


 「いいのよ、弟分が世話になったみたいだし・・。」


 え?

 ガルバンより年上だと?

 年齢偽装何レベルだ?

 上級スキルとか持ってるんじゃね?


 「なんか変なこと考えてない? この子こう見えても二十歳そこそこよ?」


 老け過ぎだろガルバン・・・。

 どう若く見ても三十以下には見えねえぞ?

 苦労が顔に出るタイプか?


 そのガルバンだが、口数少なく大人しくしているものの、どこかリラックスして見える。

 ガルバンがこうなっているってことは、この女性もこの場所も安心出来るってことだな。

 

 「それでこれから先、ミミルがどうしたらいいかは時間をかけて考えるとして、しばらくはココでお世話になりたいと思うんだけれど、僕もミミルもお金が無いんだ。」


 「そんなの気にしなくていいわよ?」


 「お金の代わりと言ってはなんだけど、これって売ったらお金になるかな? 」

 モンスターの牙をいくつか、取り合えずといった感じでテーブルの上に出す。


 「こ・・・これって。」


 「まあ、雑魚っぽいモンスターだったから、そんなには高くは無いだろうけど、多少は・・・あ、この角とかどうかな?」

 「いやいや、まあ、人間じゃないから常識がどうこうとかは言わないけど、この角一本でちょっとした家が買えるわよ?」


 「ふーん。じゃあ宿代には十分かな? ミミルもしばらくはここにお泊りでいい?」

 「あい、うしゃるたん!」


 「いや、何年泊まるつもりよ?」

 「いいじゃない、こっちは元手かかってないし、そっちも多少の手間はかかってもお徳でしょ?」

 「はあ、小さい子だし、あんまり上の階じゃない方がいいわよね。二階の空いてる部屋を用意してくるわ、待ってて。ガルバン! 誰か来たらあんたが応対しなさい!」

 ガルバンが弟分というのは本当の話のようで、素直にガルバンも頷いている。

 見た目だけだとえらく違和感があるんだけどな。


 案内された部屋を見てミミルの目がかがやく。

 「うしゃるたん、うしゃるたん!」と何か話したいけど何から話していいのか分からない様子だ。

 豪華というわけではないが清潔で、ベッドカバーやら部屋内の調度やら女性が好みそうな品のいいデザインだ。

 少女趣味ではないがフェミニン。

 アースカラー基調だが、ところどころ小さくピンクやグリーンが使われている。

 前世の俺だと体がかゆくなって居心地が悪く感じるかもしれないくらいの部屋だが、今の俺はミミル最優先である。

 ミミルが喜んでいるのならどこだって天国だ。


 「カギは貴方の方に預けておくわね。ここのお客さんは女性の冒険者の長期利用が多いけど、それでも荒っぽい男の冒険者が泊まることもあるし、下の食堂は夜はお酒も出すからそういう客が来ることもあるんで、あなたも注意してあげてちょうだい。」

 そういうとアマンダはウサルにカギを渡し、ミミルに手を振ると部屋を後にした。


 「ミミル、こっちに来てごらん。」


 「なんでしゅか、うしゃるたん。」


 カーテンを開け窓を開くと窓から通りが見える。

 ウサルの耳で作った腕で窓からの景色が見える高さまでミミルを持ち上げる。


 「しばらくミミルが暮らす町だよ。明日から色々なところへ行ってみようね。」

 「あい、おうちがいっぱいでしゅね、うしゃるたん。」


 後でアマンダに残りの手持のモンスター関連を売り払って、ミミルの服を買えそうなお店を聞いてみるかな?


 レベルアップで分身の数を増やしても平気そうだし、ミミルに寂しい思いをさせなくても別行動が取れそうだからな。


 ウサル2号の出番だ!




おっぱい・・・じゃなかったアマンダですが

元・フィットネスクラブインストラクター(♂)

とかの転生にしようかとも思ったんですが止めました。

山賊の残党の存在自体を忘れてましたんで加筆修正しました^^;

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