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ょぅι゛ょと年越し

大変長らくお待たせしました

「うしゃるたん、うしゃるたん、しゅごいしゅごい!」

 キラキラに目を輝かせ、夜空に光で描かれる様々なアニメや漫画のキャラクターに、その小さな手をパチパチと叩いて喜ぶミミル。

 白いモコモコのウサ耳付きのコートを着たミミルはまるで冬の妖精だ。

 

 隣で同じ様な顔でこれまたキラキラの目でお気に入りのキャラクターを見つけては指をさしているニシャちゃんも、ミミルと同じくガーデオ謹製の猫耳コートを着ている。

 幼児体型と相まってモコモコのニシャちゃんは、大きな子猫の様に見える。

 猫好きが見たら理性を吹っ飛ばしてさらっていきかねない。

 これは危険だな、きちんと保護をしないと!



 ミミルもニシャちゃんも普段はおうちの中でそろそろ眠る時間なのだが、今日だけは特別。


 今日はこの世界の新年を迎える年越しの日。

 冬の女神が山に戻り、春の女神が神殿へとやってくる。

 冬の女神へのお別れと春の女神を歓迎するお祭り騒ぎの一日なのだ。

 本当に神様が居て、日常的に遭遇出来る世界は違うな!

 町のあちこちには女神の絵姿や像が飾られ、お店などは更に様々な装飾を飾り付けている。


 それぞれの四季の移り変わりにお祭りはあるのだが、やはり新しい年を迎える冬の女神と春の女神が交代するこの日が一年で一番盛り上がる。

 春から夏への移り変わりのお祭りは男女の出会いのお祭り、夏から秋への移り変わりは収穫を感謝するお祭り、秋から冬への移り変わりは家族のお祭りという意味合いも兼ねているそうだ。


 その辺りは家族、身内単位でやるため、この世界の知識に乏しい俺にとっては今回の新年の祭りが初めての祭りといった感じになってしまった。

 知っていればミミルに色々としてあげたのにと悔しく思うが、良く良く思い返せばそれぞれの日に冒険者たちが普段以上にはしゃいだり、アマンダがごちそうを出したりしていた気もする。

 その時の俺は「なんかいいことあったのかな?」と思っただけだったが、今思い返すとあれが季節の移り変わりのお祝いだったんだな。

 これからはしっかりとお祝いをして、ミミルに楽しい思い出を一杯つくってあげないとな!

 

 この新年のお祭り、例年は花火が打ち上げられているのだが、今年は復活した田中さんが張り切り、夜空に光のイリュージョンを作り上げている。

 田中さんは例によっていつもの如く無償での参加。

 その分、他の町での花火が少し豪華になるということで、これまでこの町で花火を行っていた人たちが迷惑を被ると言う事はないそうだ。


 光が弾け、流れ、瞬く。

 流石、ガーデオに「史上最強の幻術師」と言われるだけのことはある。

 前世のテーマパークや大イベントを上回る規模と出来栄え。

 眠さに負けて見過ごした子供は悔しい思いをするだろう。

 明日の話題の中心はこの光のスペクタクルのことだろうからな。

 

 この日だけは子供たちも夜更かしをしても怒られないため、ミミルたちと同じ様にこの町に住む子供たちも外に出たり、部屋の窓を大きく開けて空を見上げている。


 田中さんの駄菓子屋のおかげもあって、この町には子供が増えている。

 それだけでなく、わざわざこれを見に余所の町から来た家族も居るそうで、実際、アマンダの宿にも冒険者以外の家族連れが何組か宿泊している。

 この国では田中さんは「伝説」なのだ。

 俺らからするとちょっと情けないロリコンオタ、ミミルからするとやさしい「ほねしゃん」だが、魔王を倒したパーティーの一員にして、その後も様々な形でこの国に貢献した(半分以上自分の楽しみと悪乗りの結果だが)英雄なのだな、そうは全く見えないが。


 田中さんの光の饗宴が続く中、名残を惜しむ様に冬の女神が雪を降らせ、子供たちが寒くない様にと春の女神が暖かい風を吹かせる。

 田中さんの幻影だけでも凄いのに、更に女神さま自身まで人々に贈り物をしてくれる。

 これには子供たちだけでなく大人も大喜びだ。

 毎年こうしたことがある訳ではなく、今年は田中さんの幻影の見事さに女神たちも喜んでいるからではないかと町のお年寄りたちが話をしている。


「うしゃるたん、うしゃるたん、ゆきだよ! ちゅもるかなぁ! ゆきだるまさんちゅくれるかな?」

「ちゅめたい、アイスのほうがおいしいにゃ」

 シルバーくんははしゃいで辺りを駆けずり回っている。

 誰かにぶつかったら怪我をさせてしまいそうなスピードだが、壁だけでなく、空中でも方向転換が出来る様になったシルバーくんは巧みにそうした危険を回避している。


 シルバーくんほどのスピードでは無いが、男の子だけでなく女の子も嬉しそうに駆けたり飛び跳ねたりしている。


 ミミルもウサギの様にピョンピョンと跳ねている。

 ニシャちゃんと手を繋いで一緒にジャンプしだした。


 それを見る周りの人たちもニコニコ。

 俺も本体が笑顔を浮かべられない分、ウサルたちで笑顔を振りまく。

 今年もミミルにとっていい年であるといいな。

 まだまだ眠くならなそうなミミルを見つつ「これは明日はお寝坊さんかな?」と思う。

 ともあれ、田中さんグッジョブ!

 ガーデオもきっとなんか協力させられてるんだろう。

 報酬として明日はミミルを二人のところへ連れてってあげよう。

 ミミルの口から語られる賛辞と笑顔は最大の報酬だろうからな!





 ◆

 ◆




 新年は冬と春の女神が主役ではあるが、新年第一日目の今日は町の人たちがそれぞれ信仰したり、お世話になっている神の神殿にお参りをする日となっている。


 ミミルが顔を見せないと逆に相手が押しかけて来かねないので、俺たちは「迷子の守り神」こと駄女神さまの神殿を訪れている。

 今日は流石に他の参拝者も居る為、前回ほどの酷い有様にはなっていない。

 ミミルだけでなく、他の子供たちも親に連れられて訪れているし、迷子になったところを家まで送ってもらった子供の親があらためて礼を言っている姿もある。

 子供たちに囲まれて女神も嬉しそうだ。


 ちなみに2号と4号は弟さんの方の神殿に行っている。

 加護も貰ってるし諸々の感謝と、トンでもない姉を持った神への労いと今後もお世話になることを想定したお参りである。

 その足で2号と4号は初仕事。

 そのまま冒険者たちとの酒盛りに突入することになりそうだ。


 俺たちはこの後、ガーデオの喫茶店に立ち寄って軽くお茶をしてから田中さんのお店へと向かう予定だ。

 どちらも新年早々から忙しく、店から離れられない状態。

 まあ、ミミルの顔を見れば元気百倍、疲れも吹っ飛ぶだろ?

 ミミルや他の子供たちが、この町で楽しく、安全に暮らせているそのかなりの部分はこの二人のお陰だしな。

 ミミル自身も二人に会うことは嬉しいようだし……ガーデオの場合はおいしいケーキ、田中さんの場合は駄菓子とアニメの比重も大きいんだけどな?

 まあ、そういう部分があるんで、俺もウサルたちに対するほどは嫉妬心を抱かずに済む。


 いや、この世のどんな宝よりも価値が高いのがミミルの笑顔だぞ?

 それを直接向けられる相手に嫉妬心を抱かずには居られないだろ?

 まあ、表情に出したりしないけどな、俺は大人だから……ってか、そもそも俺本体には顔が無いんだがな。


 ガーデオの店に着くと新年早々の大入り満員、てか、この町、こんなに若い女が居たんだなってくらい女性だらけだ。


 魔法少女たちもコスチュームを着けたままエプロンをしてウェイトレスをしている。

 そのまま、ガーデオの前のカウンター席に案内される。


 こいつ、ミミルが来るってんで認識阻害の魔法でこのスペース確保してやがったな!

 自分の真正面のカウンター席。

 そうまでしてミミルの笑顔とケーキを食べている時の幸せそうな顔を独占したいのか!?

 あー、したいわな。

 人として当然の欲求だ。

 俺だって機会があればそうする。


 この世で一番独占する機会が多いのがウサルだっていうのが、俺の分身への嫉妬心を掻き立てて止まないんだがな?


 今日のケーキは真っ赤なイチゴショート。

 頬に手を当てて体をくねらせる様に、ケーキの喜びを表しているミミル。

 ガーデオにしろアマンダにしろ、こういう形でミミルを喜ばせることが出来る人間は本当に羨ましい。

 俺だとシャーベットくらいしか作れないからなぁ……。

 だからこそ、ミミルを守ることにかけては誰にも譲れないぞ?

 あ、2個目食べるんだミミル、う、ウサルにあーんだと!

 くそっ、今度近所の子供集めてパンチ大会開いてやる!




 ◆

 ◆




 田中さんのお店も子供たちでいっぱいだ。

 店内に収まりきらず、店の前の道路ではベーゴマ対決が繰り広げられている。

 お母さんたちがお店の奥では子供たちの世話をしながらお茶を飲んでお喋り。

 お茶は田中さんからのサービスのようだ。

 

「はい、ミミルちゃんお年玉!」

「ほねしゃん、これはなんでしゅか?」

 お年玉だと……、そう言えば前世で貰えなくなった時の悲しみの記憶はなんか残っているぞ?

「新年にいい子にあげる特別なお小遣いだよ」

「ミミルいいこでしゅか? おこじゅかい……うしゃるたーん、ほねしゃんにおこじゅかいもらいましたー♪」

 嬉しそうにニコニコとウサルに報告するミミル。

 3号にこっそりとポチ袋になるものを買いに行かせよう。

 ウサルたちからもお年玉をあげないとな!


 田中さんはお店にやってくる子供たちにもお年玉をあげている。

 お母さんたちが飲んでいるお茶も決して安いものではないし、完全に赤字だろ、この店!


 趣味で生きられる余裕のある人生(二回目)というのも中々に羨ましい境遇だ。


 まあ、ミミルのそばにいつも居られる俺たち以上に羨ましがられる境遇なんてのはこの世に存在しないんだがな!

 

  


なんとか続きが書けました

内心が荒むとこの話はかけないのでメンタルケア必須なのです^^;

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