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ょぅι゛ょと川下り

他の作品を助走にしてなんとか書きました



 「ほぇえ、がるばしゃんしゅごいでしゅ!」


 両手で持った斧を木に打ち込むガルバン。

 大昔の野球漫画のスカウトが目の色を変えて契約を迫りそうな美しくも力強いフォームである。こう、主人公のピッチャーのライバルとなる巨漢系ホームランバッターとして出てきそうじゃね?


 Vの字に切り込み、その頂点に斧を入れ、更に深いVの字を刻む。

 大して力を入れているように見えないのにどんどんと深く切っていくので、しっかりとした木なのにまるで発泡スチロール製のおもちゃに見える。


 天然で体が固いオーガなんかでもあっさりと切り払いそうだ、冒険者たちがスカウトしたがるのも分かるな。


 今日はまたガルバンのところに遊びに来ている。

 「がるばんしゃんが、おしごとしてるところみてみたいでしゅ!」とのミミルのリクエストでこうして木を斬っているところを子どもたちと見ているのだ。


 いつも通り、シルバーくんもニシャちゃんもいっしょ。

 「すげぇ!」

 「しゅごいでしゅ!」

 二人も目を丸くしている。


 危ないのでガルバンより斜面の高い位置で、こっそりウサルが3人には腰紐をつけて、飛び出したり動き回ったりしないよう気をつけている。


 「倒れるぞ!」


 声とメキメキという破砕音が同時に聞こえ、地面と空気が同時に震える。

 ニシャちゃんは耳を押さえて目を塞いでしゃがみこんでしまっている。

 シルバーくんは毛が逆立っている。

 ミミルは目をキラキラさせて手をぶんぶんさせている。


 ミミルは肝が太いよな?

 俺ですら生の迫力に結構びびったのに・・・。

 表情も顔色も変えてないけどな?

 なんせ顔が無いからな!


 ガルバンは枝を払いに斧を切り株に打ちつけると腰の鉈(剣鉈ってヤツか?)を抜いて歩いていく。

 ナイフとか剣鉈とかって男の子の憧れっていうか、実際に使う機会が無くてもなんか欲しくなるよな?


 ガルバンの剣鉈はかなりいいもので、枝とかガツガツ切り払っている。

 ガルバン自身の腕や慣れもあるみたいだけどな。

 俺は自分の体の変形の方が使い勝手がいいからあれだけど、4号なんかはガルバンの動作が参考になるんじゃねえかな?


 いつもはガルバン一人で斬った木を運んでいるらしいが、今日は4号が手伝う。


 ミミルとニシャちゃんは手をつないでトコトコと歩き、シルバーくんはどっかの忍者犬の様に立ち並ぶ木を蹴りつけて空中を走っている。


 ガルバンの炭焼き小屋に戻ったら今日もお昼ご飯。

 今日は骨付き肉のローストというシルバーくんの大好物だ。

 パンと餅の合わさった様な焼くと膨れるパンが今日の主食。

 焼く前には硬いのに焼くともっちりふわふわになる旅のお供の定番。

 アマンダにかなり余分に持たされたので、ガルバンの当座の食事にもなる。

 これに更に野菜たっぷりのミネストローネがある。

 バランスのいい食事だな、実に。


 「おぃしいねぇ」とミミルもニコニコ。

 手と口の周りを骨付き肉のあぶらでギトギトにしているが、ニシャちゃんも似たようなものだし、シルバーくんはバリバリと骨ごと食べている。

 「ほね、くわないのか?」と不思議そうにしているが、普通の人間は揚げた魚の骨とかを除けば骨は食わない。


 イヌルもバリバリ食ってるが、イヌルの場合、亀の甲羅とか、ドラゴンの鱗とかでも齧って食いそうだからなぁ。

 物理的に齧れるものならなんでも食うんじゃね?

 それを「おいしい」と感じるかどうかは分からんが。


 食後は子どもたちはウサルベッドでお昼寝。

 ガルバンも食後のお茶でまったり。

 さっきまで木を斬っていたのも、別に今日中にやらなければいけない仕事という訳ではなく、子どもたちのリクエストに応えての行為だからな。

 川まで水汲みに行ったついでに洗濯をしたりとか、周囲の木の様子を見に行ったり、病気や死に掛けの木を処置として斬ったり、注文に合わせて良さそうな木を見繕ったりとか、常に木を切り倒してるばかりではないのだ、ガルバンも。


 ガルバンが出入りする森の中には熊や狼などの危険な生き物も人間を襲うこともあるモンスターも住んでは居るが、互いに不干渉というか消極的友好状態にあるらしい。

 むしろガルバンの仕事に関わってくるのは鳥や蜂の類で、状況によっては目をつけていた木を諦めざるを得ないこともあるのだとか。

 無理矢理なら力押しでガルバンはなんとかなってしまうのだろうが、争いごとを避けてこういう暮らしをしている人間だしな、譲れることは譲ってしまうのだ。

 いいよな、こういう暮らしも。


 ま、俺の場合はミミルが一番だからな、個人的趣向とかあんま関係無いけど。

 さてさて、まだミミルたちが起きるまでには時間がありそうだし、おめざの果物でも冷やしておくかね?




 ◆

 ◆



 ガルバンの家を後にした俺たちは川沿いを上流へと向かって歩いている。

 合体ウサルによるラフト川下りを行うためだ。

 足元には石がゴロゴロしているので歩きづらいため、シルバーくん以外のミミルとニシャちゃんは4号の両肩に並んで座っている。

 それぞれの腕で二人を支える4号はずっと肩より上に腕がある状態で、これは人間ならばなかなかの苦行なのだが、形態を人間に似せているだけの4号にとっては特に問題無い。

 それどころかずっと逆立ちだろうが、歩く代わりにバック転で移動しようが消耗は普通に歩くのと全く変わらない。

 元が不定形だからな!


 適当な場所でまず4号と2号の冒険者ペアでラフト本体に変形。

 3号、ウサル、本体(ミミルの髪こと俺)でそれぞれライフジャケットになり、ラフト本体とも紐で接続。

 万が一ひっくり返ろうが、瞬時に空を飛ぶ時にやったみたいな透明の球の内側に子どもたちを保護出来るようにしている。

 最初から球の内側に入れてしまった方が安全と言えば安全だが、水しぶきやら川面からの風やらを肌に感じてこその川下りだろう。

 過保護は保護対象が認識出来ないレベルでやるのが至高だ。

 気付かれて当人に嫌がられるなど愚の骨頂。

 笑顔を守る為の行為で笑顔を曇らせちゃダメだろ?


 普通のラフトと違って川岸で乗ったら、そのまま自ら動いて川に入っていくのがウサル印のラフト。

 船に限らず乗り物は乗り降りも結構危ないからな。

 

 勢いが出過ぎてしまった時は見えない様に水中で岩や川底に触手を伸ばして勢いを抑えながら、川下りが始まった。

 シルバーくんは自分で動くのが好きなので、こうした乗り物でじっとしているというのは非常に苦手なのだが、お友達と一緒の体験ということでここは我慢してもらいたい。

 ニシャちゃんはミミルに掴まりながらラフトの移動によって変わっていく景色を楽しんでいる。

 ミミルは時々水の中に手を入れてみたり、ラフトの中で立ち上がろうとしてみたりと意外と危なっかしい。

 アマンダや冒険者たちが見ていたらハラハラし通しで気が休まらないだろう。

 でも、みんなニコニコだ。


 「ミミルちゃん、あっちあっち」

 「しかしゃんでしゅ!」

 「おお、おいしそうだな!」

 シルバーくんは食欲直結思考だなぁ・・・。

 ま、男の子、しかも狼だから仕方ないか。

 前世じゃ貴重な肉食系男子(意味が違うってか)?


 

 

 ◆

 ◆




 楽しい川下りの時間も終わり、ラフトはそのまま車(っぽい這いずるもの)に変形して陸路を町へと進んでいる。

 飛び出しかけては捕まって、飛び出しかけては捕まってを繰り返してたんでシルバーくんはぐったりしている。

 空中を何歩か駆けられるんだよねぇ、シルバーくんは。

 お父さんは空も飛べるし瞬間移動も出来るらしいから、その程度は出来ても不思議じゃないんだろうけど、遊びに連れてく時は大変だよな。


 ミミルとニシャちゃんもお互いが寄りかかるような形で寝ている。

 

 「今日はどうもありがとうございました」

 「あ、クレアさん、そちらは仕事帰りですか?」

 「はい、近場の討伐でそのまま現地解散でしたので」

 

 シルバーくんはそのままお母さんに背負われて家に。

 ニシャちゃんは今日もお泊りコースかな?

 ミミルの様子とニシャちゃんの家の都合によっては、ニシャちゃんの家に逆にお泊りに行くパターンでもいいかもしれない。

 ガーデオや俺らの成果で、最近はこの辺に危険な奴らとか居ないし、二人がはしゃぎ過ぎるとか以外では迷惑はかけないだろう。


 「こんばんわ~! ニシャちゃんご帰還です」

 「いつも済みませんねぇ」


 さーて、ニシャちゃんもミミルもまだ目を覚まさないし、今日はこのままお別れかな?

 はしゃぎ過ぎて疲れちゃったみたいだな。

 それだけ楽しかったってことだろうし、いいことだ。


 宿が近付きいい匂いがしてくるとミミルのまぶたがピクピクと動く。

 

 「ただいまー!」


 


書きかけ放置で季節が過ぎて

書き始めた時点では川下りにいい時期だったんですけどねぇ(;´∀`)

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