ょぅι゛ょとすべり台
番外編ではない本編です
カチカチカチカチ・・・・・・。
カッチカッチカッチカチ・・・・・・。
カチカチカチカチカチカカカカカカカカカカ・・・。
非常に五月蠅い。
まあ、かつての日本でも一斉を風靡したものだから、初めて見るこの国の子どもにはウケるのは分かる。
分かるんだが、やはり五月蠅い。
「骨」こと田中さんの駄菓子屋は、駄菓子だけでなく色々なオモチャも売っている。
ベーゴマやらメンコやらビー玉やら、どれもこれも見習い職人たちの練習作である。
作らなければ腕は上がらない。
かといって売れないものを作っても仕方が無い。
部分的な手伝いや、見て盗むだけでは限界がある。
そんな中で出されたこの安価なオモチャ製作という仕事。
腕の立つ職人がやるには単価が安過ぎるが、見習いが空いた時間で行う分には素材も無駄にならず、わずかとはいえ収入が見込める。
親方衆などとも話を詰めて見習いやら独立前の職人の仕事として、田中さんから発注されている。
そんな中で登場したこのオモチャ。
それがアメリカン・クラッカーである。
田中さんの駄菓子屋を訪れる子どもたちに爆発的に流行している。
ファンタジーならではの要素としては、球部分が「雷石」という雷の精霊力を含んだ石で作られている点。
もちろん、魔術の媒介になったり、武器に付与する様な高純度の雷石だと高価だが、このオモチャに使われているのは力の含有量が少ない「クズ雷石」と呼ばれるゲームで言えばハズレ素材。
含まれている力が少ないことが逆にオモチャには向いていて、球同士がぶつかり合うと小さな稲光が走る。
暗いところでやると綺麗なんで、夜やって家の人に怒られてる子もけっこう居るらしい。
人にぶつかってもちょっとピリっと来る程度。
球が体にぶつかる方がよっぽど痛い。
これは石の加工職人見習いだけでなく、採掘系の若葉マーク冒険者の救済措置ともなっている。
ゲームなどでも採掘系の駆け出しは必要経費と収入のバランスからマゾ要素が高いが、現実であるこの世界でも似た様な事情で採取7採掘3とか、採取のついでに良さそうなトコがあれば採掘とかで、採掘を必要とする素材は鉱山などのきちんとした産業採掘以外ではなかなか行われていない。
採掘系の冒険者が育つことは、町の職人衆にしてみればプラスになると、親しくなった職人の親方との雑談と言うか愚痴聞きというかで聞かされた田中さんが俺やガーデオと話をして、親方衆の協力の下完成させたのがファンタジー版アメリカン・クラッカー、田中さんの命名による「サンダー・クラッカー」なのだ。
これでクズ素材でも収入ゼロということは無くなったので、荷物に余裕があったり、護衛や討伐の帰路のついでなどで運試し的に採掘を行う冒険者が増えている。
中級やらベテランのその系統に全く経験の無い連中も話の種にやってたりするので、田中さんのところでは少しクズ雷石がダブつき気味だが、それを使ってガーデオがなにやら実験とかもしているらしく、また両者とも金銭的には余裕がありまくっているので、問題はないらしい。
もちろん、ミミルもやっているが手と一緒に体まで上下にゆすってしまっていてあんまり上手く出来ているとは言い難い。
しかしながら、本人は凄く楽しげで「うしゃるたん、みてみて!」とカチカチやっている。
でも、日本で記録の映像を見た時も思ったけど、俺はとしてはこれがなんで楽しいのか、良く分からないんだよなぁ。
◆
◆
「ふわぁ・・・おっきいおうちでしゅね、うしゃるたん。」
「おっきいおうちだにぇミミルちゃん。」
「すげえ、でけえな!」
「おやしきっていうんだよ!」
「おにわのおはながきれいだねぇ!」
ここ数日、雨が降り続いてようやくの晴れ。
いつもは駄菓子屋でアニメを見ている子どもたちも流石に「お外で遊びたい!」となる。
だがしかし、数人ずつ分かれて遊ぶならともかく、全員揃って遊ぶとなると場所が無い。
困った時のガーデオだのみ。
「ガーデオえもん、何か魔法の道具でなんとかしてよ!」とばかりに頼むと「しょうがないなぁ・・・」とポケットからひみつ道具・・・ではなく鍵を出して来た。
「僕の家が店とは別にあるから、そこの庭を使っていいよ!」という話。
そうして子どもたちを引き連れてやってきたのだが・・・どう見ても大豪邸、お屋敷です。
でけえよ!
「僕の家」なんてレベルじゃねーよ!
「イらっしゃいまセ、主人より話はうかがっておりまス!」
ゴーレムが出迎えてくれたが何で○ムなんだよ!
確かにリック・○ムは「スカート付き」って言われてたけどさ!
エプロンとヘッドドレス付けた○ムなんて、誰得だよ!
「こんにちわ、僕はウサル。今日はお庭で遊ぶことを許していただいてありがとう。」
「こんにちわ!」
「こんにちゎ!」
「おじゃましまちゅ!」
「おじゃましましゅ!」
子どもたちが元気に挨拶するのを表情は無いものの穏やかな様子で迎え入れるゴーレム。
表情作れたらニコニコしてるんじゃないか、って雰囲気。
見慣れるとだんだんと違和感が無くなって来るのが怖いな、このゴーレム。
しぐさも女性っぽいし・・・。
男の子たちはさっそく探検に駆け出していってしまっている。
「オレいちばん!」
「オレにばん!」
「おまえビリな!」
木に登っちゃってるけど余所の家だぞ?
少しは遠慮しろよ!
「子ドもたちは元気でいいですネ!」
メイドゴーレムさんは微笑ましいものを見る口調だ。
少しくらいなら登ったりしても平気ってことかな?
女の子は花壇の花を見に行ったり、噴水を見たりしている。
ミミルとニシャちゃんはちょうちょを追いかけている。
シルバーくんは思い切り駆けずり回っている。
犬だというと怒るが、リードから放してもらった犬そのものだ。
まあ、みんな楽しそうだし、後でガーデオには礼を言っとかないとな。
・・・という訳で3号頑張れ!
◆
◆
ポツポツと屋敷の物珍しさも少しずつ消えて、少しまったりとしてきたところにウサル滑り台の登場!
普通の滑り台と違うのは滑り台自体の高さや勾配が変わって、自分で階段とか登らなくても滑り降りることが出来る点だ。
低いところまで滑り降りたらそこが高いところになって、そこからまた滑り降りるとまたそこが高くなってと、円形になっているから延々と滑り続けるなんてことも出来る。
一人で滑るのも何人かで前後に繋がってすべるのも良し。
小規模なジェットコースターもどきとも言える。
2号は体をロープ状に伸ばして縄跳び。
普通は回す役が二人必要だが、2号なら一人で出来るし、縄も必要ない。
4号は振り回したり、肩車したり、腕にしがみついたのを持ち上げたりと、大人の男性が子どもにやってあげる典型的な力技を見せている。
蹴ったり叩いたりと乱暴な子も居るが、モンスターですら平気な4号なら全然平気だ。
その後も2号と4号の合体技でブランコ型カルーセルをやってみたり、3体合体でトランポリンハウスになってみたり、普段大人しい子まで大はしゃぎだった。
ミミルもニシャちゃんやシルバーくん以外の子とも遊んでいて、ちょっとニシャちゃんがすねちゃう一幕もあったが、みんな仲良く楽しく過ごした。
空はまだまだ明るいものの結構時間が経ってしまったので今日はこれまで、みんなでメイドゴーレムに「お世話になりました」と元気に挨拶をして2号4号の合体ウサルバスに乗って屋敷を後にする。
みんなを送り届けて、中には寝てしまった子も居たのでウサルがおんぶしたりして親に渡して、宿に戻れば夕焼け。
ニシャちゃんを最後に送り届けようとしたが、なかなかニシャちゃんがミミルと離れたがらない。
ミミルべったりのニシャちゃんにしてみると、今日の他の子がいっぱい居る状況はミミルを取られてしまった様な気がしたのかもしれない。
けっきょくニシャちゃんのお母さんともお話をして、とりあえずミミルと夕食をとって、場合によってはお泊りということに。
とたんにニコニコになるニシャちゃん、現金な物である。
今日の夕食は羊に似たモンスターの肉のソテー。
外見はそっくりなのだが、サイズが象より大きい。
草食で大人しいモンスターなのだが、サイズがサイズだけあって、放置すると山の一つや二つは禿山にしてしまう為に討伐の対象であり、こうして食卓に並ぶことになる。
ミミルもニシャちゃんもフォークはそれなりに使えてもナイフは使えないので、気を利かせたアマンダが最初から食べやすいサイズに切ってくれている。
付け合せに野菜炒めっぽいものと、マッシュポテトが付いているため、ミミルやニシャちゃんだとパンを食べなくてもお腹いっぱいだ。
「おいしかったでしゅ、あまんだしゃん、ごちしょーしゃま!」
「ごちちょーしゃま!」
食後のホットミルクは今日はニシャちゃんの分もある。
まったりとお話をしながら食後のミルク。
この時間は冒険者たちにとってもミミルとのコミュニケーションタイムなので、3号は一緒の写真などを頼まれて忙しい。
今日はニシャちゃんとも一緒に写真に写りたがる者が多く、これがミミルだけとかならミミルを取られてニシャちゃんが機嫌を悪くしているところだったが、一緒の写真で自分にも「可愛いわねぇ」と言われたりでニシャちゃんも照れたり、笑ったりで忙しかった。
その後は部屋に戻って、お風呂に歯磨きで後は寝るだけ。
ミミルが絵日記を書いているのを見て「ミミルちゃんえがじょうずだにぇえ」とニシャちゃんも自分も絵日記を書いてみたそうにしていた。
ガーデオに言っとくか。
あのショタジジイならニシャちゃんの分も喜んで作るだろ?
長い滑り台とか滑り降りる時はいいんだけれど
滑る為に上まで行くのが結構大変でしたよねぇ