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ょぅι゛ょとはちみつ

2号と4号メイン・・・他。


 ウサル2号と4号の朝は早い。


 ていうか、ぶっちゃけ俺たちには睡眠が必要無いんで、早いもへったくれもないんだけどな。


 常にミミルと共に居るウサル、撮影役である3号はほとんどミミルから離れる事がないのに対して、2号はショタジジイや骨との連絡役、そして4号と組んでの冒険者稼業とけっこう忙しい。


 ショタジジイの方はそれなりに時間の概念があるのだが、骨の方は死後の生活が長過ぎたせいか、時間感覚がけっこうおかしくなっていて、夜中や早朝と言っても油断は出来ない。あっちも睡眠不要だしな(そのくせ何故か居眠りはするのだ。ご丁寧に鼻ちょうちんまで出して)。


 ドアの前に4号、窓のそばに2号というのがミミルの安らかな眠りを守る俺らのスタイルである。魔王程度なら撃退出来る気がする。


 ミミルが起きると着替えを用意するのは2号の仕事。

 朝一でのアマンダの抱きしめ攻撃から救出するのは最近は4号の仕事になっている。


 ミミルの朝食が済むと、週に3回くらいの割合で冒険者ギルドへ。

 ミミルの見送りを受けて足取りも軽い・・・2号に足は無いけどな!


 冒険者ギルドに入ると他の冒険者たちが挨拶してくるのに返事をしながら依頼のボードの前に。


 「おはようございます、2号さん、4号さん。今日も討伐ですの?」

 「無ければ無い方が有り難いんだけどねぇ、この町がそれだけ安全ってことだから。」


 話しかけてきた「お嬢」と呼ばれる高価そうな装備を身に付けた女性冒険者と会話。

 どこぞの貴族の娘という噂を本人は否定しているが、話し方や所作で「いいトコ」の出だというのはバレバレだ。

 最初に食堂で見かけた時には、あまりに綺麗な食べ方をするもんで、「こっちにも正式な食事のマナーとかあるんだなぁ」と驚いたものだ。


 2号が会話をしている後ろでは4号が謎のマッスルポージング。

 初っ端にやったら何故かそれ以降も期待されている節があったのでやっている内に、やらないと「もしかして4号さん機嫌が悪いんじゃ」などと不安にかられる人間が続出したので、会話の受け答えの様な形でポーズを変えている。


 「私は今日は移動の都合もあるのでお届けものの仕事を受けましたの。また、ご一緒に仕事を出来ると嬉しいですわね、それでは、私はこの辺で。」

 「ああ、まあ、気楽に誘ってくれると嬉しいな、それじゃあな。」


 2、3回ほど組んで仕事をしたことがあるが、テンプレ的なお嬢とは違って、戦闘やらなんやらで汚れることは厭わないし、高慢な態度で対人トラブルを起こしたりする事も無い、一緒に仕事をしやすい相手だ。

 美人だということで一緒に仕事をしたがるヤツも多いが、2号と4号のことを気に入っているのか向こうから良く声をかけてきてくれる。


 「2号の兄貴、今度一緒にダンジョン行きましょうぜ!」

 下っ端口調で語りかけてきたのはネズミの獣人のリッキーだ。

 一文字違ったら大惨事なトコだったが、これならセーフだろう。


 こちらの世界の獣人は、動物を直立させて、若干人間に体型を近づけた様な姿をしていて、何の獣人かで、かなりの体格の差がある。

 ネズミの獣人の場合、体が小さい者が多く、冒険者の場合はスカウトか魔術師のクラスになるのが普通だ。

 リッキーの場合はスカウト、それも戦闘はあまり得意でなく、罠や宝箱の鍵の解除などをメインに行うタイプ。

 一緒に冒険してくれる者が居ないと稼げないスタイルなので、下っ端口調も彼なりの処世術なのだろう。

 ダンジョンなどでは2号と4号のタッグだと、罠などは漢解除なので物理的なものは平気だが、酸やガスなどだとダメージを食らうこともある(まあダメージゼロじゃないってだけで、深刻なダメージでは無いんだが)。


 宝箱などは完全にお手上げだ。

 一度、強引に異次元収納に宝箱を収納して、ダンジョン外に持ち出せない筈の宝箱を持ち出して開けて貰って以来、リッキーは「兄貴」と呼んで良く話しかけてくるようになった。


 「そうだな、あんまり遠くないトコだったらいいぞ。依頼受ける前に話しかけてくれれば、じゃなきゃ、俺らの泊まってる宿に言伝頼んでもいいしな。」

 「兄貴たちが居れば相当深いトコ潜れますからねぇ。腕によりかけて情報当たってみます。」

 「うん、楽しみにしてる。」

 「任せといてください!」


 さて、今日はどの依頼を受けるかな?




 ◆

 ◆




 今日の依頼で受け取った報酬の蜂蜜。

 瓶で3つ貰って、一つはアマンダに渡し、一つはショタジジイの所へ持っていく予定。

 残りの一つはミミルへのお土産だ。


 その蜂蜜をたっぷりとかけたハニートーストで、ミミルはほっぺたをベタベタにしながらも「おいしーね!」と嬉しそう。

 食事と一緒に甘いものというのは大人にはちょっと抵抗感があるが、ミミルは全然平気で、貰ってすぐに待ちきれずにトーストを焼いてもらってそれにかけて食べているのだ。


 「お土産ありがとうね。これ、あれでしょ、紅玉蜂の蜜でしょ? 買うと高いのよね。」

 アマンダの言う様に、今回の討伐対象は民家近くに巣を作ってしまった紅玉蜂。モンスターに分類されるだけあって、通常の蜂よりサイズも大きく(スズメ蜂どころかスズメよりデカい)、巣のほうも当然大きい。

 普通なら煙で燻したり、魔法を使える者が対応したりするが、2号と4号の場合は正面から飛んでる蜂を粉砕した上で、2号が変形して巣を覆いながら残った蜂を駆逐、それを4号が担ぎ下ろすという力技で依頼を達成した。

 報酬は本来現金だったのだが、交渉の末、現物で獲得した。


「いつもお世話になってますし。お菓子じゃなくても隠し味とか風味付けに使えますしね。」

 「俺らにも恩恵があるってこったな!」

 コルシオが珍しくアルコールが入っているのか、陽気に会話に絡んでくる。

 「我輩も蜂蜜は好きですが、それを食べて嬉しそうにしているミミルちゃんの方がもっと好きですね~!」

 骨と一緒に飲んでたのかよ。


 「「ミミルちゃん可愛いー!」」


 あーあー、酔っ払いどもめ・・・。




 ◆

 ◆



 「せっかくいい蜂蜜を貰ったからね、マフィンを焼いてみた。」

 ここでもショタジジイとの会話はもっぱら2号の役目。

 4号は元の形状だと暑苦し過ぎるんで、色合いだけ変えたウサルスタイル。

 冒険者関連の時以外で人が多く集まる場所ではこの形状を取ることもある。

 ここだと4号の基本スタイルでは営業妨害だしな。


 今日は喫茶店は定休日ではなく、お裾分けのついでにミミルにケーキを、といった感じで訪れたため、他のお客さんもかなり居る。

 そうしたお客さんたちの分まで、マフィンを提供しているのは、流石に金の為に店を開いているのではないガーデオならではだろう。


 既にケーキとか食べてるお客さんは平気なのかと少し気になったが、「甘いものは別腹」なんだな、ほとんどのお客さんが嬉しそうにお店からのサービスを堪能している。


 「はちしゃんはしゅごいでしゅね~、こんなにおいしいみちゅをあちゅめるんでしゅから~!」

 蜂が花の蜜を集めてそれが蜂蜜になるという説明をガーデオから聞いて、ミミルが蜂に感心している。

 魔法に限らず、色々なことを絵日記のやり取りや日常の会話でこうしてミミルに教えてくれる。

 流石に八百年生きてきて、その内けっこうな時間を人にものを教える事に費やしてきた人間は違うな。


 それは感謝してるんだが、その手に持ってるローブはなんだ?

 記憶のどっかに引っかかってる、白地に赤のフード付き。

 「ウサ耳はジャスティス!」と言わんばかりに、これもウサ耳付きか?

 ジジイ、自重しろ!



 ◆

 ◆



 

 ミミルの私物(主に服)も増えてきたし、2号と4号の冒険者稼業での収入も安定してきたので、この町で家でも買おうかとアマンダに相談したところ、この世の終わりが来たような顔をされた。


 あまりにも哀れだったので、撤回。

 色々と話し合いの末、今泊まっている部屋の内装や家具を自由に変えて構わないという賃貸マンションとかに近い契約に変更した。

 食事代とかもまとめての毎月の支払いで、取り敢えずは3年分は前払いしたという形にするらしい。

 なんか、3年過ぎても請求してこない気がするけどな。


 そんな話の中で、そういえばアマンダって元・冒険者だったんだよな、とその辺について聞いてみた。


 「結局、上から三つ目くらいのクラスまでは上がったんだけどね。どうしても出来ないことがあって、その頃母さんが急に病で倒れたりして、それを言い訳にリタイアしたって形。」

 「どうしても出来ないことって?」

 「モンスターって言っても子どもは可愛かったりするのよ! でも、討伐依頼とかだと、そういった子どもも含めて全部退治しなきゃいけないの! 大きくなれば周囲に被害を出すっていうのは分かってるわ。でも可愛いと思う、思ってしまうものを手にかけられる?」

 「あー、うん、そりゃキツイよね。」

 「パーティのメンバーはそういう時は自分に任せればいい、って言うけど、それも違うでしょ? 結局、私には向いてなかったってことなのよね。」

 「そんなアマンダにいい言葉を教えよう・・・『可愛いは正義!』」

 「『可愛いは正義!』?」

 「理屈だの道理だの関係ないんだよ、問答無用の正義なんだから。」

 「そっか・・・なら仕方ないわね。」

 「うん、仕方ないね。」


 ちなみに現役時代のアマンダのスタイルは、補助に魔法を用いた剣士スタイルだったそうだ。

 正統派というか王道だな。

 窒息攻撃のせいで武闘家かと思った。




 ◆

 ◆



 

 「できました~、うしゃるたん!」

 光を変形させる練習、ついにミミルが目指していた形の変形を成功させた。

 白い光のウサル、目は赤い光。

 本当、この子はウサルが大好きだな。

 日ごろからどれだけウサルを見ているのか良く分かる出来だ。

 「うわぁ、すごいね、ミミル。ぼくそっくりだ!」

 「えへへ・・・うごかしてみましゅね!」

 ぴょっこんぴょっこんと、実際のウサルの動きよりはややゆっくりめだが、実に見事に動きまで再現している。お手玉の時もそうだったが、感覚的な魔法操作は天才と言って良いんじゃね?


 可愛いだけでなく、魔法まで天才とは本当、俺の宿主は凄いなぁ。


 「ミミルちゃーん! そりぇ、ミミルちゃんのまほう?」

 「うん、しょうだよー! じょうじゅでしょ、うしゃるたんだよ!」

 「しょっくりだにぇー、しゅごいしゅごい!」

 遊びに来たニシャちゃんも、驚きつつも喜んでる。

 「まりょくのおててのれんしゅうをしたらうまくできるようになったのー!」

 「にゃらわたしもれんしゅうしよっと!」

 「うん、がんばろー!」


 

 いつまでもミミルと仲良くしてあげてね、ニシャちゃん。





憎らしいのや怖いのや気持ち悪いのは倒せても、可愛いのは厳しいですよねぇ

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