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ょぅι゛ょと寄生生物

残酷な表現、暴力、死などの描写があります

そうした表現を好まれない方はお読みにならないでください

 デスゲームで寄生プレイをした挙句、「おそらく主人公奮起のイベントとして扱われるんだろうなぁ」って感じの安全地帯である街中にモンスター大発生、低レベルプレイヤー&NPC死にまくりの最中、誰かが落とした食糧アイテムを踏ん付けて滑って転んで巨大モンスターに踏まれて死んだ。


 いや、寄生って言っても友達に誘われての知識も無いままの初プレイでデスゲーム発生、友達はログインしておらず、親切なβプレイヤーにスタート地点で誘われてって流れだからな?

 特殊なスキルやクラスになるなんて主役限定の出来事も無く、魔法も含めた遠距離攻撃にはかなりのプレイヤースキルが必要になるなんて知識も無しに「狩りをして、自分で皮細工作って」なんてプレイをしようかと思ってのキャラクターメイクが、プレイヤースキルの低さで「結果として」使えないキャラになっちゃっただけなんだ。


 まあ、ともかくブラフでもジョークでもなく、本当にデスゲームだった結果、完全に死亡。


 気付けば赤ん坊・・・・・・になってなかった。

 グチャグチャのドロドロ・・・これは密かに強キャラルートのスライム転生か?

 ・・・とも思ったがそれも違う。


 俺は不定形寄生生物に転生していた。

 誰の仕業か知らんが、皮肉がきき過ぎだろ!

 寄生プレイヤーが寄生生物に転生とか!


 別段、生きていくだけなら寄生しなくても生きてはいける。

 しかしながら、記憶と自我がどんどんと薄れていくのだ。


 最初は「やっぱ強い相手に寄生して楽して暮らしたいよな」とか思ってたんだが、「俺、右手、失敗」とかになりそうな予感がしまくって、強そうなおそらくモンスターだろうなって熊っぽい生き物とか、角の無い不細工な鬼みたいなモンスターとかスルーした。


 いや、怖いし・・・・・・。


 現状、劣化スライムだよ?


 これがア○トムとかの融合捕食生物なら襲いまくるけどさ。

 寄生をする段階で、この体かなり無防備になるんだよ。

 それこそ、人間の子どもでも殺せるくらいに。


 熊も冬眠中とかならなんとかなったかもしれないけど(モンスターの場合、冬眠するのかという疑問はあるが)、活動中とかウザがられて軽く叩かれただけでも死ぬよ?


 ただ、もう時間の猶予が無い。

 卒業した小学校や住んでた町の名前とか忘れたし・・・。


 百歩譲って記憶はいいとしても、自我を失って「かゆ・・・うま・・・」レベルになっちゃったら、生きてく意味が無いだろ!?


 そんな俺の鼻に・・・じゃねえや、今の体は鼻が無いんだった。

 ともかく臭って来たのは、何かが燃える臭いだった。




 ◆

 ◆



 人間だ。


 いや、正確には「人間だった」モノだ。


 黒コゲになったモノにカラスに似た鳥がたかっている。


 仰向けに死ぬとカラスに目玉を食われるんだっけ?

 読んでた小説にそんな描写があったな。

 「仰向けには死ぬまい」とか思うシーン。


 こりゃ全滅か?

 

 戦争なんだか、盗賊の略奪なんだか分からないが、酷いもんだ。

 モンスターも怖いけど、人間の方がもっと怖いよな。

 大人も子どもも老人も女性も関係ない。

 斬られた首や手なども転がっている。


 人間の体だったら吐きまくってるだろうな。

 

 寄生対象とかそんなん抜きにして、誰か生きていてくれねえか?

 死体ばっかで頭がおかしくなりそうだ・・・・・・脳みそ無いけど・・・ってかどこだよ、俺の頭って。


 この先は村の共同井戸か・・・。

 炎から逃れて来たのか焼死体は少ないが、その分斬られた死体は多い。

 抱えた子どもごと突き殺された母親も居る。

 子どもの方は無事かとも思ったがダメだった。


 水音?

 井戸の中に誰か居るのか?


 俺は這いずり、井戸の中へと身を躍らせた。



 ◆

 ◆



 井戸の中に居たのは女の子だった。

 意識を失い、心拍は徐々に弱くなっていて、あと少し遅ければ手遅れだったろう。

 

 おそらく長かったであろう髪に火が着いたのだろう。

 頭から目元にかけては酷い火傷となっていた。


 この世界にこんな変な生き物として転生したのが、この子を助ける為だったとしたら、デスゲームで無駄死にしたのも、記憶をボロボロとこぼしながら彷徨ったのも許せる。

 俺は女の子への寄生を開始した。


 

 ◆

 ◆



 寄生のプロセスのひとつである同化を行いながら、火傷を負った顔と目を修復する。

 この修復と落ちている生命活動の活性化の為、本体の3分の1を失うこととなった。

 完全に消滅したわけではなく、俺の制御下を離れ女の子の体の一部となったのだ。

 寄生本体は耳を含めた頭の表面と髪の毛に擬態する。

 

 宿主を得て、俺は強化された。

 力も強くなり、体を変形、変質出来る様になった。

 その機能の一部を使って、女の子の髪に擬態した体を腕の形状に変化させ、井戸の外へと女の子の体を引き上げる。

 体から四つの足の様な形状を出し、その足の間に体を薄く広げてハンモック状にすると女の子を横たえる。


 一回薄くすっぽりと包むと、服や体に残った水分を吸収。

 細いストロー状にして口から胃袋まで伸ばし、水を送り込む。


 このままここに居るのは俺の精神的にも、女の子のメンタルケア的にも良くない。

 俺は四本の足を使って廃墟と化した村の外へと歩き出した。



 ◆

 ◆



 森の中へ移動した俺は女の子が目を覚ました時に外が見えずパニクる事態が発生することを回避しつつ、眠ったままの彼女本体を守るべく、無駄に高度なテクニックを使って網戸状にテントの様な構造を作り上げながら、周囲の木の実や虫、小動物などそれこそ手当たり次第に細い触手を伸ばして栄養を吸収し、同化部分を通じて本体へと栄養を送り続けた。

 

 同時に食べられそうな果物を確保したり、目を覚ました時用のテクニックを磨いたりと、この世界に来て初めて充実した時間を過ごしていた。


 お、そろそろ目が開きそうだ。


 俺は準備を整え、彼女が目を覚ますのを待った。



 ◆

 ◆



 「やあ、僕の名前はウサル、君の名前はなんて言うの?」


 女の子の前でこの為に作った「分身」を跳ねさせる。


 ある程度知識や経験のある年齢だったら「俺は寄生生物で体を修復出来る機能があるから死にかけてたお前を助けてやったんだぞ」などと恩を着せて主導権を握れただろうが、相手はまだまだ小さな女の子である。

 理解出来ないどころか、怖がったりパニックで泣き喚いたりするかもしれない。


 そう考えた俺は俺本体とは別に女の子とコミュニケーションを取るためのマスコット的な存在を生み出せないかと考えた。


 最初は本体から気付かれない程度の細さで繋がった有線式で、肩や頭の上に乗って会話する形にしようかと考えていたのだが、色々と試すうちにしばらくの間であれば本体から切り離しても動かせることに気付き、女の子が寝ている間に練習をしていたのだ。


 形状はウサ耳スライムといった感じの白い体に赤い目のマシュマロの質感を持ったものにした。

 これならば危害を加える存在には見えないだろう。

 そうしてなんとか記憶に残っていた自分の名前「マサル」と「ウサギ」を組み合わせて「ウサル」と名乗ったのだった。


 「僕」口調が気持ち悪いって?

 この外見で「俺」とか違和感ありまくりだ。

 これから友好的な交流を持とうとしている相手に警戒心を持たれる喋り方をしてどうする!?

 

 俺はウサルを介して女の子とコミュニケーションを開始した。



 ◆

 ◆



 幸いにしてというか、痛ましいことにというか、名前などのごく一部をのぞいて女の子は記憶を失っていた。


 何かを思い出そうとすると怖かったという気持ちが膨らんでしまい涙をにじませるのである。

 その度にウサルで風船みたいに膨れて浮いて(やってみたら出来た)みたり、飛び跳ねては大きく跳ねすぎてベチャっと潰れて失敗した様に見せてみたりして、なんとか気をそらすことに成功した。


 「そっか、君の名前はミミルというんだね。よろしくね。」


 「あい、よろしくおねがいしましゅ、うしゃるたん。」


 おおお・・・・・・これだよこれ、天然の「たん」付け呼び。

 「~ちゃん」とうまく発音出来ないゆえの「~たん」呼び。

 オタの「○○たん」は邪道、これこそが王道だろ!


 「ミミルちゃんはちょっと怪我をしていたから僕が魔法で治してあげたんだよ。ミミルちゃんがいい子だからね、僕の魔法で髪や目の色も変えられる様にしてあげたんだ。どんな色でも変えられるし髪の格好も自由自在だよ!?」


 これは苦肉の策だ。

 というのも髪も目も失われていたため、本来の色が分からないのだ。


 村で見かけた死体に多かった茶髪に茶色い目に取り合えずはしておいたが、それが彼女本来の色と同じなのかは分からない。

 そこで「魔法で色を変えられるよ」と言って、希望する色にしてしまうことで誤魔化そうとしているのだ。


 「うしゃるたんとおしょろいがいい!」


 白く長く真っ直ぐな髪、赤い目にした。

 髪を引っ張って自分で見て色を見て目を輝かせたが、その小さな手でペタペタと頭をさぐって悲しそうな目をした。


 「おみみ・・・・・・。」


 期待には応えなくてはならない。

 ふわふわの髪と同じ様な柔らかい白い毛の生えた垂れウサ耳が追加された。


 くそっ! なんでデジカメが無いんだ!

 スマホでも可。

 これは永久保存すべき光景だろ!


 「えへへ」と自分のウサ耳を触っては嬉しそうに笑うミミル。

 「どうです、うちの宿主ですよ! 世界一可愛いでしょう!」と大声で叫びたい。


 「可愛いね、よく似合ってるよ」とウサルに言わせると、頬に手を当てて体をくねらせて照れる。

 人間の体を持っていたら、血を吐き悶えながら転がり回ったであろう。


 まあ、こんなほのぼの光景なんだが、村での大量の死に誘われたのか、大小様々なモンスターが森の中を移動しているのだ、実は。


 かなり遠くまで今の俺は知覚出来る様になっているのだが、遠くのものはスルーし、近寄ってくるものは周囲に張り巡らせた俺自身で始末している。


 なんかゲームみたいなトコがあるんだな、と思ったのはこちらに近寄ってきた毒を持ってるっぽい派手な色合いの蛇のモンスターを倒した時だった。

 最初に寄生を完了した時の様な、力が増し、出来ることが増えた感覚がその蛇を倒すと同時にやってきたのだ。

 ・・・これはいいね、実に。

 ミミルをもっと確実に守れるようになる。


 さて、この寄生体の体になって、人間の時にあった様な「食欲、睡眠欲、性欲」は無くなったが、寄生前から感じていた「生きていたい」という「生存欲」と、寄生してから生じた「宿主を守らなければ!」という「庇護欲」は思春期の青少年の性欲以上に強い。

 決して俺がロリコンだからじゃねーぞ!?


 宿主であるミミルに被害を及ぼす「可能性」があるだけで殺戮を躊躇わずに行えるほどだ。

 もうね「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!」が簡単に出来ちゃう。

 覚悟も何も要りやしない。


 こうしている間も見えないほど細く、そして何者にも破壊されないほど強く(当社比2.3倍)した俺の体自身で「結界」と呼んでいいくらいの防御網を構築中だ。

 触れれば触れた事に気付かないまま体を切断する。


 それでも動ける生命力の高い相手は注射器の針の様な作りをした棘を刺し、中から溶かして吸収していく。


 スライムなんだか粘菌なんだか分からないヤツとの死闘を繰り広げながらも、そ知らぬ顔でウサルを動かしミミルと遊ぶ。

 確保しておいた果物の中でも「これぞ至宝!」と思えるものをプレゼントすると、一口食べた途端とろけるような笑顔を浮かべるミミル。

 世のお父さんお母さんたちが、子どものために頑張れる気持ちが分かった。

 へとへとに疲れようが笑顔ひとつで吹っ飛ぶ。


 そうこうする内にまたレベルアップした感覚が襲ってきた。


 なんか巨大(肥大)化出来る様になった。

 現状十倍以上のサイズ。

 プロセスはよく分からないが、サイ○人が大猿になるみたいなもんだ。

 あれに「質量が~」とか「物理的な加重が~」とか言うヤツ居ないだろ?


 出来ちゃうんだから仕方が無い。


 お腹が膨れて眠くなったミミルが目をぐしぐしとこすっている。


 「僕がクッションになってあげるよ! ミミルは少し眠ったら? 起きたらまた遊ぼ?」


 「おやしゅみなしゃい、うしゃるたん・・・。」


 巨大化したウサルに埋もれる様に少し体を丸めて「ふわふわだぁ」と微笑みながら目をつぶるミミル。


 さーて、宿主(ょぅι゛ょ)の眠りを守るだけの簡単なお仕事の開始ですよ・・・!





本人も主人公も気付いてませんが、寄生生物の経験値は宿主にも入りますので、第一話終了時点で宿主の強さは一般成人男性を上回っています

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