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親友との日常

 大学についた僕は一時限目の講義に出て、三時限目の講義後にある例の約束?に頭を悩ませていた。

「どうすればいいんだよ…彼女は助けたいけど、さすがに同棲はまずいよ……」

 先ほど決意したばかりなのに無駄なことに悩みをはせていた。

 そんな時、 」

「どうしたんだ広人!同性ってなにがだ?」

 僕は有の声に慌ててごまかした。

「いや、なんでもないよ!個人的な話だから」

 そこに正輝が声をあげた。

「同性……昨日の話ではないか?有よ…」

「昨日の恋人の話か!?……まさか広人おまえ、そうなのか!?」

 ……彼女と居る所見られてたのか!?どうしよう……

「っち、ちがうよ!勘違いだ!」

 有は怪しむような目をこちらに向け、

「…広…人?なんだその慌てよう…」

「だってあれはただ一緒にいただけだし、確かに手は繋いでたけど…」

 有は慌てるように身を引き、正輝は眉を少しひそめた。

「手をつないでいただと!?そこまで広人は進んでいたのか……」

「そうだな……我たちの知らないうちに広がそんなことになっていたとは…」

 やはりそんなに慌てられるか…彼女は見た目は中学……おほん、若く見えるからな、みんな僕がロリコンの気があるのかと思ってるのか…それにしても、さっきの悪寒はなんだったんだろう。

「いや、確かに小さくみえるけど、知っているだろうけど、あの娘も大学生だよ」

「大学生で、小さくて、って……おまえ、ショタかよ!?ホモだけでも引くのに…ちょっとそれは……」

「……へ?ショタ?ロリじゃなくて?」

「男の子が好きな場合はショタって言うんだよ」

「男の子が好きってなんのこと?」

「……はあ?さっきからお前が言ってるじゃないか同性がどうのって」

 ?……っ!…同棲を有たちは同性って言ってたのか!?そりゃ話が通じないわけだ

「僕が言ってたのは、同性じゃなくて、同棲だよ!一緒に住むほう!」

 それを聞いた有たちは警戒の色を顔から消し、それとは別の興味の顔を浮ばせた。

「同棲ってなんだよ?広人は彼女はいないけど、同棲相手がいるのか?」

 少し涙目で僕にしがみついてくる有。

「いないよ!さっきのは兄の話だよ!」

「なんだ……家族の話かよ」

 ……拝啓兄上様、私は自分の窮地を救うためにあなたを話題にして嘘をついてしまいました。申し訳ございません。

 僕は心の中で故郷に残る兄に向って懺悔をした。

「それにしても、今日は英語の後ドイツ語で、そのあとお前だけ、地域風土だっけ…めんどくさそうだな。広人は地理が得意だから、専門科目いいかもしれないけど、オレだったらめんどくさくて、スッポカしてるな」

「まあ、有は学部ちがうからな……」

 有は大学は同じでも学部が違い、文理学部の物理科に籍を置いている。ちなみに僕は文学部地理学科で、正輝は文学部歴史科に籍を置いている。有と一緒になるのは共通科目だけである。

「機械が好きだからな!構造とかみてるだけで、よだれ出てくるぜ!」

「……人の好きな物は人それぞれだからな…かくいう我も、歴史だけあれば娯楽はいらぬな」

三者三様好きなことのために講義を受けているが、興味のない共通科目は同じモノをとるこ  とにしたのだ。

「それにしてもドイツ語の読みってローマ字読みに似 てるよな」

「そうだな。下手したら英語よりも意味わかるよね」

「…我は異国の言葉自体苦手なのだが…」

ダメだ…この話題は正輝に部が悪い。話が続かない…

「…そうだ!なんか正輝の知ってる偉人伝とかで動物と会話する少女の話をってどんなやつだっけ?」

僕は苦し紛れに思い出した話題を正輝に聞いた。

「そうだな…旧東濃地区の伝承なんだが、動物と会話ができる女の子がいたらしい。その子は自然と動物が好きで、いつも図鑑や書物を漁り、動植物に対する知識を深めていったらしい。そんなときに動物と会話できるようになり、女の子は喜んだそうだ…。しかし、いつの地代も人は自分にないものを疎むからな…。女の子例外ではな かった。女の子は同年代の多くに嫉妬され無視された。やがて、女の子は大好きな両親以外では動物としか話さなくなった。そんな女の子の噂はたちまち隣町に 伝わり、女の子を研究しようとしたものたちがいた。その者たちは少女に君の力が必要で、その力は人々の役に立つと言われ、彼女は虐められてもなお、人間の ことが好きだった。しかし、女の子の研究をはじめた人間たちは彼女に対して、今では非合法の薬剤の投与や人体実験の数々を行った。そんなことをされた女の子 はまだ、その者たちを信じ、協力を続けた。研究者たちは自分達の技術で解明できない彼女を人間の劣化品と罵った。彼女はそれでも協力した。しかし、研究者 たちは彼女に君はもう要らないという言葉を突きつけた。彼女は自分が必要とされていないことに絶望し、人間を信用しなくなってしまった。研究者から逃げた 彼女は命からがら、山の中をさまよい動物たちと生活した。彼女が居なくなってから1年がたとうとしたとき、彼女の父親はイノシシ狩りをしていた。そんな 時、茂みで音がしたため、イノシシだと思った彼女の父親は猟銃でその場所を撃ったそうだ。しかし、茂みから出てきたのは研究者に連れていかれた少女だった。少女に銃弾は当たらなかったが、少女は愛する父親に撃たれたことによって深い悲しみを覚え、人里から離れ、さらに山奥に隠れてしまった。それ からまた数ヶ月が経ち、少女は最後の愛し、信頼できる人間である母親のもとに向かい、狩りで父親がいないところを狙い、自分の家に向かった。彼女は家の前 につき、母親に向かいただいまと口にし、玄関を開けた。しかし、そこには自分の妹のような小さな子と母親が目を丸くしてこちらを見ていた。彼女も自分の居 場所にやっと帰ってこれたと涙を流しながした。しかし、一年近くの間で少女の風貌は前のそれとは違いすぎていた。少女が感傷に浸っていると母親は彼女を山 賊かなにかと勘違いしてしまい、父親の予備の猟銃を手に取り、引き金を引いた。猟銃の扱いに慣れていなかった母親の弾丸は彼女には当たらなかったが彼女の心を砕くには充分であった。彼女は玄関を飛び出ると山の中に戻ろうとした。しかし、彼女の父親が自宅の銃声に気付いてか、自宅近くに来ていた。そして、自宅の玄関から転がるように出てきた姿の変わってしまった少女に向かい引き金を引いた。その弾丸は彼女を貫いた。彼女はその場で涙を流した。最も愛し、信用していた人間を失うと同時に、最も信じ、頼りにしていた人間によって命を失った。って、やつであったか?これは物語ならどれだけよかったか……実際に昔起きていたことだからな…あまり好きではない…」

 正輝は少女に対する同情からか俯いた。

「ごめん正輝…そうとは知らず無神経だった」

「い や、いいんだ。彼女の悲しみを一人でも多くの人に知ってもらえれば、その悲しみを知った人間は他の人…最低でも自分の子供に対しては冷たく接しなくなると 我は思っておるのでな…」

正輝は感慨深そうにそう語る。

「……確かにな。そういえば、動物と会話とまではいかないにしても、動物を意のままに動かせる『集中力』を持っている『天才』がいるらしいぜ!」

……!絶対生見さんのことだ…ちょっと、情報を聞き出してみるか。

「その『天才』って、人間とかも操れたりするの?」

 有は冗談を言うなと言わんばかりに鼻で笑った。

「そんな『集中力』あってたまるか!人間を思いのままに動かせるならオレがほしいぐらいだ。第一、そんなものがあったらこの世は終わりだよ。ホントにあるかもわからない『集中力』が三種類あることぐらい知ってるだろう?一つは、人間の精神や体を操る【人間操作系】。二つ目は地殻や火山などの地形を操る【地殻操作系】。三つ目は気温や天候を操る【気候操作系】。この三種類は地球のパワーバランスを崩してしまうから、『異端』と呼ばれてるのぐらい知ってるだろ?おまえは当事者というか、唯一の地殻操作系の『天才』なんだから!」

 ……『天才』か…友人と呼べるこの二人にも言っていないことはたくさんあるもんな…

 少し自己嫌悪に陥る僕は思わず下を向いてしまう。その様子を見ていた有は、

「…っま、まあ、逆に考えればこの世界でおまえに並ぶものがいないっていうのはいいことじゃねえか」

「ああ、別に大丈夫だよ。ただやっぱり、他の人から見ると僕って恐いか?」

 それを聞いた正輝と有は頬を膨らませ噴き出した。

「ぷははは!そんな訳ないだろ。おまえがそんな奴じゃないことぐらいわかってるぞ」

「……クス…我も有に同意だな。広が恐いわけがない。広を信用しているからな」

……少し気持ちが和らいだ気がする。

「まあ、『異端』のおまえならではの悩みはあるんだろうが、自分一人でなにもできなくなったら言えよ!」

「… 我も自分のできる範囲で助力するぞ…」

「ありがとう…」

……この二人には迷惑をかけないようにしなければ。僕は決意を硬くするように拳を握りしめた。


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