スキルパラドックス
ここ十年間で存在が確認されている、『集中力』という力をもった子供たち。彼らの人数は地球上で確認されているだけでも数百万人いると言われ、日本でも約二十五万人の集中力保持者、『天才』と呼ばれる者たちがいる。そんな『天才』になるために、学を積もうとする子供たちが住む離れ大島がある。そこを訪れる子供たちは年間十万人にも上るが、『天才』になれるものは、年間一万人以下と十%にも満たない。さらにその『才能』にはさまざまな物があるが、世界のおよそ八割ほどが単純な才能しか開花できなかった、能力者もいる。ものを浮かす能力やテレパシーの二種類がほとんどで、この二つ以外が『中位集中力』と規格外である『上位集中力』に分かれている。天才になれるものは親兄弟が優秀であったりする場合が多く、遺伝によるものが多いと言われている。また、集中力はあまり解明できておらず、発生条件が『学力』によるものであること以外わかっていない。そんな学社会の中で、この僕こと地島広人は『秀才』としては、この学術島で他の追随を許さないほどずば抜けているらしく、異端のデュアルコセントの持ち主で、二つの集中力がどちらも上位集中力である。そのためか僕はさまざまな組織で検査をされたが、集中力の発生条件は分からず、なぜ二つも集中力があるのかもわからなかった。そして、研究組織の熱が冷め、安穏とした日々を送っていた僕は、ある朝イノシシに乗った女の子に出会った。聞けば彼女は霊長類以外の動物を操る能力があるらしく、そのせいで前の僕とはちがい、とある研究所から命を狙われているのだという。ひょんなことからこの娘を助けてしまった僕は、安穏の日々から非日常の戦いの日々に巻き込まれていく。