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儚き流星

作者: 本郷 真琴

現代文明を拒否する青年の物語である。本当の愛とは人間の絆を読者に考えて欲しい



儚き流星


 冬も終わりに近づき、時折暖かくなる日も多くなってきた。今は二月の上旬である。やわらかな木漏れ日が、天地を覆っていた。小野寺真弓は、泊りがけで伊豆に職場の同僚と三人で温泉旅行に来ていた。鄙びた温泉旅館は、静寂さを漂わせ、真弓は安らぎに包まれていた。

 真弓はなにげなく部屋の窓から外を眺めていると、一人の自転車に乗った青年が目に留まった。

 彼女は魅入られたように下に降りて行って、旅館の外に出た。初対面で少し気が引けたのだが、思い切って話しかけた。その青年に興味以上の感情が湧き上がってくるのを抑えきれなかった。

 「お疲れのところ申し訳ありません。いきなり失礼かとは思いますが、貴方は地元の方ですか?私、小野寺真弓ともうします。東京から遊びに来ているんです。」

 青年は日に焼けた肌に綺麗な白い歯を見せて、

 「いいえ、横浜から来ました。私は、斉藤良太といいます。はじめまして。」

 青年は少しぶっきらぼうに答えた。真弓は少しはにかんだ表情ではあるが、誠実そうな良太に好感を持った。良太は極めてシンプルな格好をしていた。髪を短く刈り上げ、服装は膝丈の短パンに、白いTシャツを無造作に着て、真っ青なスニーカーを履いていた。

 「大変でしたわね。」

 真弓はねぎらうように言った。

 「今時、珍しくありませんよ。日本全国を自転車で、周っている人もたくさんいますよ。」

 真弓はもっとこの青年と話がしたかった。瞳がとても澄んでいて、その瞳で見つめられると、吸い込まれそうだ。真弓は何とかして話を続けたいと思い、

 「ここには何日か滞在するんですか?」

 「はい、二、三日、逗留しようとおもっています。」

 真弓は心の中で快さいを叫んだ。

 「私、お友達と三人で来ているの。もし良かったら、後で私達の部屋に遊びに来ない?」

 良太は少し戸惑った。初めて会った人達と一体何を話せばいいのだろうか。良太は気が重くなった。真弓はそんな良太の逡巡を見て、一気にたたみ掛けた。

 「あのうもしお嫌でなければアドレスを交換しませんか。ご迷惑かしら。」

 良太は知り合ったばかりの異性にアド交換を要求してきた真弓に、ためらいと警戒感にとらわれた。良太はおもいきって本当のことを言おうと思った。

 「僕ケータイ電話を持ってないんです。本当なんです。貴方が嫌だからといって、嘘を言っている訳ではないんです。」

 真弓は驚いて、ケータイを持っていないと言った、良太の言葉を信用すべきなのかと懐疑的な思いがした。

 「私達の部屋の名前は、楓という部屋よ。是非遊びに着て下さい。」

 良太はますます気が重くなったが、真弓の真剣な眼差しを見て彼女を信じる気になりかけた。

「それじゃあご飯食べてお風呂入ってさっぱりしたら、あそびにゆきます。」

 真弓は良太の誠実な態度に再び好感を持った。そして念を押すよううに

 「四人で宴会やりましょうよ。」

彼女は事も無げに言った。真弓は少し無理を言ったような気もしたが、こういう草食系の人には、こちらから強くでてみても、いいような気がした。

 良太は、真弓の穏やかな雰囲気に安堵感を覚え

 「実は,テレビもパソコンも車も持っていないんです。」

 真弓は訝しげに

 「お家に帰ったら、何をなさっているんですか。」

 真弓はますます良太への関心が高まった。

 「部屋には、ギターと電子ピアノそれに大型のオーディオシステムがあって、レコードをいっぱい持っています。ショパン、バッハそれにベートーベンのピアノ曲を良く聴いています。自分でピアノやギターも弾きます。読書も好きで、神田の古本屋巡りをします。」

 「お仕事は何をなさっているの。」

 真弓は我ながら俗っぽい問いだと思いながら、尋ねた。

 「大学を卒業した後、某大手商社に就職したんだけど、すぐに辞めてしまい、一年間放浪して、今は中堅の本屋で働いています。」

 真弓は驚きを隠せず、良太の澄んだ目を見つめながら、

 「そうだったの。何があったのかはわからないけど、五菱商事ならOLの憧れの的よ。どうして?もったいないわ。」

 良太はそれには答えず、

 「僕って、自然と対話したり同化するのが好きなんです。例えば、樹と話をしたり、こうやって自転車で小旅行したり、そうやって生活することで、自分の精神の平衡を保っているんです。」

 真弓は良太に改めて驚きを覚えた。

 「私にはとても出来ない生活だわ。なんだかとっても素敵。さっき読書が好きとおっしゃっていましたけど、普段はどんな本を読むの?」

 良太は少し考えて、

 「トルストイとかドストエフスキー、後ドイツ文学も好きでゲーテ、ヘッセ、シラーやハイネが好きです。」

 真弓には良太がただの文学青年には見えなかった。現にこうして、横浜から遊びに来ている。良太の中には自分とは全く違った哲学を持っている。真弓はそんな良太にますます興味を抱いた。良太の淡々とした話し方の中に、独特の個性と思慮深い眼差しに、急速に魅かれて行くのを感じた。


 その夜、真弓はぐっすり眠りこけている友人二人を置き去りにして、海辺を散策した。良太は結局来なかった。真弓は胸が高鳴ってなかなか寝付けなかった。良太の澄んだ目が脳裏に焼きついていて離れなかった。最新のツールを無視する良太、芸術や文学を愛する良太、とてもミステリアスでロマンティックに思えた。

 其の時偶然良太と出会った。真弓は胸がときめいた。

 「散歩ですか?」

 良太はぶっきらぼうに尋ねた。

どう見たって散歩じゃない。もっと気の利いたことを言えないのかしらこの人、真弓は少し腹立たしく感じた。

「今は冬の星座がとても綺麗なんだ。冬の大三角って知っています?」

良太は真弓に尋ねた。

 真弓は中学の時、理科の授業を想起したが、詳しいことはわからなかった。

 「オリオン座のベテルギウスと大犬座のシリウス、子犬座のプロキオン、それらを線で結ぶと三角形になるんだ。」

 良平は星の方向を指で示しながら説明を続けた。

 「星座は古代ギリシャの時代に、羊飼いが空を見ながら星が形どるパターンを見つけて、星座としてそれに名前をつけたのが由来しているらしい。星座の名前は動物の名前だったり、ギリシャ神話の神々の名前もおおいんだ。オリオンは巨人で美男の狩人で、ヒュエリウスかポセイドンの子で、女神のアルテミスを陵辱しようとして、女神の放った蠍に刺されて星となったんだ。それ以来オリオンは星になったさそりに追われているんだ。オリオン座と地球との距離は千五百光年あるんだけど、ベテルギウスが大変な事になっているみたいで、爆発の兆候が見られるんだ。」

 真弓は良太の説明聞いて鮮烈な感動を覚えた。

 「そうだとすれば、もうベテルギウスはなくなっているかもしれないわね。」

 真弓は軽くため息をついた。

 「ところで良太さんはどうしてケータイを持っていないの?もっと詳しくしりたいわ。」

 良太はうんざりしながらも

 「ケータイって、なんの前触れもなく突然メッセージがやってくる。あれって本当に戸惑うよ。文明が進んでいるように見えて、文化は逆に退行しているかもしれない。それである日、川に投げ捨てたんだ。」

 真弓は少し意地悪をいいたくなり、

 「ふーん、貴方くらいの年齢でお仕事もしている人が、今時ケータイも持たないなんてよっぽどの変人か現代文化を拒否しているとしか思えないわ。」

 良平は困ったように

 「僕はそれほど変人でもないし、新しい物を退ける守旧派でもないよ。要するに肌に合わないんだ。ケータイって確かに便利なツールだけど、今に世界を破滅しそうなきがするよ。」

 良太の精神は何か別のもので充足されているのであろう。外界からの事物を拒絶しているのではなく、きっと自然との対話の中で精神の平衡を保っているようにみえる。

 「でも仕事から帰ってきて、淋しくなったり人恋しくなったりした時に、突然友人や恋人からメールがきたら、わくわくしない?私の友人にはお風呂にはいる時も、ケータイを話さないそうよ。」

 良太は反駁する。

 「僕はただ、人とのコミュニケーションが嫌いな訳ではないよ。飲みに言って音楽や本のことに就いて話し合ったり、自然と対話したりもするよ。ケータイと言う物は会議をしていても寝ていても、突然鳴り出す。ケータイに支配されている感覚が恐ろしいんだ。」

 真弓は現代にこんな普通な青年が、ケータイを持っていないことに驚きと懐かしさを感じた。真弓が小さい頃、親がケータイをもたせてくれなかったが、それで不自由さを感じたことはなかった。私もケータイに支配されているかも。


 翌朝真弓が目を覚ますと、友人の京香


と彩音がはしたなく浴衣の裾が乱れていて、朝っぱらから酒を飲んでいた。

 「あなたたち何してるの?こんな時間からお酒なんかのんで。」

 二人は声を揃えて、

 「私達は旅行に来ているのよ。旅行って非日常の世界じゃない。朝からお酒くらい飲んだって構わないじゃない。」

 さあ真弓も一献どう?」

 「私はいらない。散歩してくる。」

 真弓は良太に会えることを期待して旅館を出た。

 良太は釣りに興じていた。真弓はむくむくと良太への関心が湧き上がってきて、良太に吸い寄せられるように近づいていった。

 「何してるの?」

 真弓はいかにも偶然出会ったかのように切り出した。

 「見ての通りさ。猫でも釣っているようにみえる?」

 真弓は吹き出しそうになるのを堪えながら、

 「そうね、貴方なら猫でも釣れそうね。でもこんなところに魚なんているの?もしかして太公望のつもり?」

 「太公望!君はなかなか的を得た事を言うな。釣り糸を垂れながら、これからどうしようか考えていたんだ。」

 「まさか海とお話でもしてたんじゃないでしょうね。」

 「うん、話しかけているんだけど、なかなか答えてくれない。海は沈黙を守る。母なる海大いなる海、生命は皆海からやってきた。」

 「そうよね。子宮にも水が入っているものね。」

 「人類は、もっと海の研究をすべきだ。物凄い資源が眠っているに違いない。」

 「海水ってどうして塩分が含まれているのかしら?」

 「きっとそれは海の水が飲めると、人類が飲み干して地球が破滅してしまうからかもしれない。」

 真弓は会話をさえぎるように、唐突に尋ねた。

 「良太さんって彼女とか恋人っているの?」

 どきどきしながら真弓は返答を待った。

 「もちろんこんな風な人間だから、変人扱いされて女という女は寄ってこない。」


「女性と付き合ったことはないの?」

 「中学高校と三年間付き合ってた女の子が居た。」

 「今でも忘れられないの?」

 

良太は無言で釣り糸を見ていた。

 「貴方って化石みたいな人だわ。今時そんな純愛物語って本当に珍しいわ。私良太さんの恋人に立候補しちゃおうかな。」

 良太は返答にきゅうした。

  「おいおい知り合ってまだ二日目だよ、そんなこと言われてもこまるよ。真弓さんってどう見ても普通のOLさんていう感じだし、とっても素敵で誰とでも寝るような女性に見えない。昨日も言った通りケータイ持ってないし、収入も驚くほど少ない。しょっちゅう仕事を休んでは自転車で旅行している。」

 「貴方のそう言うところがすきなのよ。見栄を張るのでもなくケータイも持っていない。貴方も誰とでも寝るような男性ではなく、過去の純愛にすがって生きている。」

 「別に過去の事に拘っているのではなくて、面倒くさいんだ。自然と対話することで生きる意味を見出してるんだ。」

 「まさか貴方、仙人にでもなる気?今時はやらないわよ。もっと現実を直視しなきゃ。生きてゆくのに働くのは当たり前のことだけど、貴方みたいな生き方もいいかもしれない。でも現実の社会にも幸福と平安はあるわ。神の国は今を生きているわたしたちのなかにあるのよ。」

 「君はクリスチャンかい?」

 「いいえだけど、イエス キリストもお釈迦様もきっと同じ事を言っているとおもうのよ。どんな宗教も死んだ後に天国に行けると言っているけど、天国はこの世の中に自分で見つけ出すものだと思うわ。どんどん人の中に入って行くべきよ。音楽を聴いたり、本を読んだり自然と触れ合うのもいいけど、どんなに歪な社会でも皆で良い社会を創りあげることが出来ると思うの。結局人って、人間との関係性を絶ってしまうと良いことはないわ。


 旅館のおばさんがさざえの塩焼きを二人に持ってきた。

 「お客さん釣れますか?」

 「見てのとおりです。」

 「こんな所にろくな魚なんていやしませんよ。」

 真弓はびっくりして

 「貴方、えさも附けていないじゃない。」

 おばさんはあきれて

 「最近太公望が増えてるのよね。」

 つられて真弓も笑い出した。

 おばさんは良太を弁護するように

 「いいのよ、ここは都会の生活に疲れた心を癒す所なの。ゆっくりしていけばいいのよ。今は大変な時代で自殺者が年間三万人もいるから。たまには息抜きもしなくちゃ。」

 「この人ったら年中息抜きをしているみたい。」

 真弓はそう言うと、二人は笑い出した。

 

 その夜、真弓、良太、京かと彩音で麻雀卓をかこんだ。三人ともケータイの電源を切った。おばさんがおにぎりを作って持ってきてくれた。賑やかな麻雀になった。良太が彩音のオープンリーチに振り込んだ時は大爆笑だった。

 「オープンリーチに振り込んだ人を初めて見たわ。」

 彩音は笑い転げながらハンカチで涙を拭いた。

 「こんな楽しいマージャンは初めてよ。」

 京香も笑みを浮かべて良太をチラッと見た。

 「俺も初めてだ」

 良太はぼそっと言った。また場が盛り上がった。

 トップは凄腕の京香で、良太はもちろんラスだった。」

  彩音は

 「ラスの人には罰ゲームっていう約束よね。」

 「私トップだから罰ゲームの内容をきめていい?」

 ちょっと考えて京香は、

 「良太君が真弓にプロポーズするのってどう?。」

 「罰ゲームなんだから、そんな大事なことを良太君に言わせるのは失礼よ。」

 彩音は異論を唱えた。

  「そうねぇー、なんとかしてこの二人くっつけたいんだけど、何か良い方法はないかしら。」

 京香は途方にくれたように呟いた。

 彩音も不安そうに、

 「良太君はケータイ持っていないからアド交換も出来ないし、まさか貴方固定電話も持っていないなんて言わないでしょうね。」

 「それくらい持ってるよ。だけど、、、」

 「だけど何よ。」

 彩音が問い詰めるように言った。

 「電話番号を覚えていないんだ。」

 さすがに三人共、あきれてものも言えなかった。

  「どこまですっとぼけてんのよ。いいかげんにしなさいよ」京香はわざと渋面を作り

 「それなら住所を書いて真弓に渡しなさい。まさか自分の住所くらい覚えているわよね。」

 真弓の目は真剣だった。良太はメモ用紙に自分の住所を書き、真弓に手渡した。

  京香はなんとか話をまとめたかった。

 「貴方みたいな人には真弓みたいなしっかりした女性が必要なのよ。今夜は二人きりにしてあげる。真弓と良太君は一緒にお泊りしなさい。」

 二人ははにかんで、黙り込んでしまった。

 「俺、横浜に帰ろうかな。」

 良太は呟いた。

 「何言ってんのよ。真夜中に自転車で帰るの?お酒もだいぶ飲んでるし、男でしょ。度胸決めなさい!」

 京香は凄んだ。真弓にはこの瞬間がとても長く感じられた。

 「明日の朝帰ることにする。」

 「もう知らないわ。勝手にしなさい。」

 京香はそのまま横たわった。今にも眠りそうだった。

 結局その夜は四人で雑魚寝した。朝の6時に良太は本当に帰った。それにしても女という生き物は凄い。良太は若い女性三人に囲まれて眠るに眠れず、まんじりとも出来なかった。彩音の歯軋りにはまいった。京香の寝言も凄かった。男の名前を叫び、馬鹿野郎おまえなんか死んでしまえと罵っていた。真弓も寝付けないことは分かっていた。


 いつものように夜の十時過ぎに帰宅すると、一通の手紙が郵便受けに届いていた。差出人は小野寺真弓と書いてある。良太は胸の高鳴りを抑えながら、恐る恐る 封を開けた。封筒は淡いピンク色でシンプルなものだった。書体は平安時代の女手みたいだった。良平は面食らった。しかし達筆であることには間違いない。

 「拝啓

 その後お元気でお過ごしでしょうか。あれから貴方と別れてから一月が経とうとしています。あの日の朝、貴方が帰って行ったのを私は知っています。どうして一声かけてくれなかったのですか。黙って行ってしまうなんてあまりにも酷過ぎます。でもこの手紙届くか心配です。貴方ったらあの調子ですもの。

 でもあの二日間は私にとって記念日になるくらい楽しい時間でした。貴方の一挙手一投足が、私には新鮮でした。貴方が時折見せる少年のような目の輝きがとても印象深かったです。今度私の車でドライブに行きませんか。私の知っている都会の穴場に連れて行ってあげます。お返事お待ちしています。」

かしこ

      

                                小野寺真弓

 

 良太の本心はもう二度と真弓とは会うことはないだろうと思っていたのだが、まさか本当に彼女が手紙を書いてくれるなんて思ってもみなかった。しかも物凄い達筆である。良太は考えた。真弓とドライブに行ってもいいと思った。まだ真弓には恋愛感情と呼べるものはなかったが、少し茶色がかっていて澄んだ瞳が印象深かった。良太は早速、返事を書くことにした。住所は上北沢と書いてあった。

 「前略

 真弓様。お手紙ありがとうございます。デートのお誘いをお受けします。ドライブに是非連れて行ってください。それと、ぼくの家に遊びに来ませんか。音楽を聴いたり、本を見せてあげたいんです。そうすることで僕のことを分かって貰えるかなって思って。ご存知とは思いますが、ぼくはクラッシックが好きです。本の方は歴史が好きで、平安時代から明治初期の文献もけっこう揃っています。

 僕は手紙の方が、思ったこともうまく表現出来るし、うまく想いが伝わるような気がして、こうゆうふうに書簡の往復がとても心地良いです。

 会う日なんですけど、水曜日が僕の定休日なんです。真弓さんは平日は休めますか?もしよろしければご都合を教えてください。」

敬具

                                  

                                斉藤良太


 良太は真弓からの誘いを受けてくれた。真弓は手紙を書いていると自然と良太のことが鮮明に浮かび上がってきた。ケータイだとこうはいかない。確かに話はすぐにまとまるが、メールのやりとりはなんとも味気ない。自分で字を書いたほうが真弓も楽しくなってきた。良太がとても愛おしくなってきた。愛を何時間もあたためて手紙で伝える。古典的だが彼女にとって手紙のやり取りにかかる時間はそれほど長く感じなかった。


 数日後真弓から手紙が届いた。

 「早速のお返事、うれしく思います。貴方のことだから間違って届かなかったらどうしようと思い少し不安でした。冗談はさておき、私は良太さんに会えればどこだっていいんです。例え嵐が丘に出てくるような寒風吹きすさぶ、陸の孤島でも。そうね、初めてのデートで失礼かもしれないけど、貴方のお家に行ってもいいかしら。貴方がいきなり変なことをするような人ではないことは分かっているつもりよ。だってあの夜も二人だけになる機会はいくらでもありました。貴方が眠れないのも、私には分かっていました。そして貴方がどんな音楽を聴いたり、本を持っているかとても興味あるわ。今度の水曜日に遊びに行ってもいいかしら?私も一人暮らしなんだけど夜も出歩かず家に一人で居ます。いつも貴方を思っています。貴方の様子が映像にように脳裏に浮かびます。」


                           真弓より


 良太は真弓の愛の告白に逡巡した。彼女の自分を見つめる眼差しを思い、だんだんと愛しさがこみ上げてきた。すぐに良太は返事をしたためた。

「君恋し初春の風に文み届く見えぬ香りに待ちこがりけむ

  貴女との出会いはとても新鮮で、驚きでいっぱいです。こういうふうな手紙のやり取りはメールと違って、とても自然に貴女の心に入り込めるし、僕も素直に貴女の想いを受け入れることが出来ました。僕の中で貴女という存在が、大きく膨らんできました。今度の水曜日の午前十時に元住吉の駅で待ってます。」

 良太は真弓との出会いがきっかけで今までの暮らしに波が押し寄せてくるような気がした。


 約束の日に真弓は間違いなくやってきた。駅前にある小さなスーパーで、食材と甲州産のワインを買った。

「これでお昼ご飯を作ってあげる。まさか調理用具は持っていないなんていわないでしょうね。」

 真弓はいたずらっぽく笑って言った。真弓は良太を見ると、なんとなくからかいたくなえるのであった。

 「食事は朝と晩は自分で作るよ。一通りの道具や調味料は揃っているよ。」

 「そう安心したわ。てっきり外食で済ましているのかとおもっていたわ。」

 二人は駅から歩いてすぐの、良太の小奇麗なマンションに入って行った。部屋はきちんとかたずいていて、ごみもきちんと分別されていた。

 「あら、素敵なお部屋じゃない。こういうシンプルな部屋っていいわ。ちょっと殺風景だけど、とてもいい感じ。」

 あわてて良太はスヌーピーのぬいぐるみを押入れに放り込んだ。

 「あら、隠さなくてもいいのよ・別に悪い趣味じゃないわ。」

 くすっと真弓は笑った。良太はとりつくろうように

 「こっちの部屋が寝室兼書斎兼音楽倉庫なんだ。」

 その部屋には電子ピアノがあり、ギターが立てかけてありレコードと本の山だった。そこだけ何かキラキラとしていた。

 「何か聴かせてよ」

 良太はショパンのレコードをかけた。美しい旋律が流れてきた。

 「私、この曲知っているわ。雨だれでしょ。」

 「うんプレリュードの中ではポピュラーな曲だよね。メロディーがとても繊細で、雨との対話が聞こえてくるようだね。」

 「貴方の感性は独特だわ。雨ともお話出来るの?」

 「自然の方が語りかけてくるんだ。作曲家や指揮者は自然と対話していたと

思う。ゲーテの詩だってそうだよ。野薔薇っていう詩読んだことあるよね。」

 「シューベルトの歌曲にもなっているわよね。ゲーテの詩を歌にした曲も多いわね。」

 「ゲーテはきっと花とお話していたんだよ。詩を読んだら良く分かるんだ。」

 真弓は正直言って、この間の良太の恋歌に全身がしびれてしまった。この人はきっと独自の感性をもっている。とても澄みきっていて清浄だわ。

 

 真弓はお昼ご飯の支度を始めた。調理器具は揃っていてきちんと整頓されている。良太の意外な一面を見た。良太はベートーベンのラストソナタを弾いている。荘重で重厚だ。彼の弾いているソナタに合わせてつい口ずさんでしまう。良太は一人で居る時こうやってすごしているのだろうか?そんな良太に愛おしさを感じていた。真弓はまだ一回目のデートだが、ある覚悟をしていた。替えの下着や服をバッグに忍ばせてきた。あの夜、良太はぐっすり眠っている二人を置いて、自分を連れ出すことも簡単に出来たはずだが、それもしなかった。良太は私の気持ちは十分、わかっていたはずだ.真弓は良太と一夜を供にしたかった。

 料理が出来上がった。鴨の蒸し焼きと、ほうれんそうとごぼうのサラダ、それになめこと豆腐のお味噌汁。食卓にはいちりんの薔薇をさした、花瓶が置かれていた。真弓が良太の好みそうなアンティークな物を買ってきたのだった。

 「素敵な花瓶だね。」

 「貴方に買ってきたのよ。」

 「どうもありがとう。それにこの薔薇も淡いピンク色で、部屋が明るくなった感じがするよ。」

 二人は

伊豆の旅行の話をしながら食事を楽しんだ。ささやかだけれど、二人は食事と一緒に幸せをかみしめた。

 良太は提案した。

 「自転車で多摩川まで行かない?自転車二台持ってるから、真弓さんにはママチャリを貸してあげる。」

 「それもいいわね。行きましょうよ。」

 良太は慣れた道を通り、

少し自転車を走らせると、丸子橋がすぐ近くに見えた。堤防を歩きながら二人は暖かい春のそよ風にあたり、初夏を思わせるような日差しを浴びた。良太は犬とフリスビーのキャッチングを楽しんでいた。その犬はとても賢そうな犬だった。良太さん、犬とも会話出来るのかしら。犬の主人はだまって楽しそうに良太と犬を見ていた。

 3時も過ぎた頃、良平は真弓に尋ねた。

 「そろそろ帰ろうか。犬と遊んで少しお腹すいた。駅前の中華レストランで夕飯ご馳走してあげる。」

 真弓は空腹を感じてなかったが、自転車をこいだらお腹が空くのではないかと思いうなずいた。

 早めの夕食をとって、良太のアパートに戻った。真弓は朝から考えていたことを口にした。

 「ねえ、今夜泊まってもいい?」

 「うんいいよ。」

 良平の答えはあまりにもあっけなっかた。真弓はほほを赤らめてじっと良太を見つめた。


 夕方になって良太はギターを弾きだした。ソルの月光だった。月が浮かんでいて、今にも落ちてきそうだった。真弓はなんて静かで叙情的な曲なんだろうと思った。ギターの音は鳴り止み、静寂が訪れた。それは決して重苦しいものではなく、{月光}の余韻が残っていて心地よい静謐でもあった。時間がこの部屋の中で止まっているようで、不自然さは微塵も無かった。良太は静寂を打ち破るように、

 「ワインを飲もうよ。」

と言った。良太は手慣れた手付きでワインの栓を開けて、二人分のワイングラスに注いだ。おつまみはチーズとソーセージで皿に並べて、真弓に勧めた。甲州ワインはさらっとしていて口当たりの良い白ワインだった。

 良太はショパンのノクターンのアルバムをかけた。真弓はこの切羽詰った状況で自然と良太に問いを投げかけた。

 「本当にテレビも新聞も無いのね。社会とか政治や経済に興味ないの?」

 「実際に政治家や財界人でも、きちんと政治や経済のことを分かっている人

はごく一部の人だと思うよ。商店街のおじさんやおばさん達のほうがよっぽど分かっているんじゃないかな。このままだと今の放送局は潰れてしまう所も出てくるよ、きっと。ケーブルテレビやCS放送を見てる人が増えてるらしい。この不況だし、広告収入も激減していると思うよ。ラジオをたまに聞くんだ。全く社会から逃避してる訳じゃないよ。ラジオのニュースの解説のほうが興味深いよ。」

 時計を見ると十一時をまわっていた。

 「俺そろそろ休むよ。」

 彼女は何かを期待した。

 「真弓さんは僕のベッドで寝るといいよ。」

 「良太さんはどこで寝るの?」

 「居間のソファーで寝るよ。男物でよければ袖を通してないパジャマがあるからそれ着てねるといいよ。」

 真弓の期待は外れた。

 しばらくすると良太の規則正しい寝息が聞こえてきたが、真弓は全く眠れなかった。良太がうらめしく思われ、寝ようとすればするほど寝付けなかった。伊豆の眠れない長い夜を思い出した。

 真弓は朝方に眠った。目を覚ますと6時を過ぎていた。テーブルの上には置手紙があった。

 「おはよう。よく眠れた?朝食を用意しておいたから食べていってね。鍵は郵便受けに入れておいて下さい。またお会いしたいです。」


                              良太


 真弓は週末に京香と彩音に会った。

 「男の人の部屋に泊まって何もなかったの?あなた達何やってんのよ。」

 京香がなじるように言った。

 「良太君ってまさか男が好きな訳じゃないでしょうね。」彩音が、笑みを浮かべて言った。

 「あなた達結局、手も握ってないの?キスもしてないの?」

 京香は真弓を問い詰めた。

  「ええそうよ。なにもなかったわ。」

 「真弓はそれでいいの?」

 真弓は突然、スヌーピーのぬいぐるみを思い出し、吹き出しそうになった。

 「何にやにやしてるのよ、気持ち悪い。何があったか全部白状しなさい。」

 「本当になにもないってば。彼には不思議な魅力があるのよ。とにかく純粋なの。あの人の心の中には憎悪も嫉妬もないわ。それにとても大人の男の人よ。」

 「それって、本当の愛もないんじゃないかしら。女性と自分の部屋に泊まって、指一本触れないなんて生きる天然記念物よ。私、良太君のこと誘惑してもいい?」

 いたずらっぽく京香は言った。

 「今度いつ会うの?」

 今度は彩音まで興味を抱いてるようだった。

 「彼、休暇とって来週から北海道に行くんだって。」

 真弓は何か不安を感じ、胸騒ぎを覚えた。


 しばらく、良太に手紙を書いても電話をかけても、音信不通であった。

 {何やっているんだろうあの人、連絡もよこさないで。子供がトンボとりにでもいった

みたいで、どうしているのかしら。}

 真弓は心配しながらも、良太のことを激しく想った。

 

 あくる朝、良太からの絵葉書が届いた。はがきの写真には羊蹄山を背景にした洞爺湖が鮮明に写っていた。

 「ごぶさたしてます。今、旭川にいます。明日は旭岳に登ろうと思ってます。旭岳

は北海道で一番高い山です。大雪山連峰の中心にあり、海抜2千2百9十メートルあります。」


 天界に威容発する大雪は果て無き明日を想い知るらむ


真弓は本能的に心配した。旭川のどこに泊まっているのだろう。寝袋にでも入って、野宿でもしているに違いない。旭川は寒い所だと聞いている。真弓の心配は杞憂に終わればいいと想った。


 数日後北海道警察から連絡があって、すぐに旭川に来て欲しいとのことだった。旭岳に登った良太が下山予定日になっても戻って来ないという。良太の持ち物の中に、真弓の連絡先が書いてあるメモがあったので、とりあえず真弓に連絡したとのことであった。

 今夜の最終便にはまだ間に合いそうだった。とるものもとりあえず、急いで羽田にむかった。なんとか旭川行きの便に乗ることができた。旭川までのフライトがとても長く感じ

られた。真弓はひたすら無事を祈った。どうしようもなく切なさがこみ上げてきて、涙がはらはらと零れ落ちた。 

 キャビンアテンダントが

 「どうかなさいましたか?ご気分でも悪くなされましたか?」

 真弓はハンカチで、涙を抑えながら、

 「いいえ、大丈夫です。なんでもないんです。」

 「もし何かあったら、いつでも声をかけてくださいね。」

 飛行機は着陸態勢に入った。もうすぐ良太に会える。真弓は確信した。

 タクシーで旭川市内の警察署に向かった。担当の山中という警察官に面会を申し入れた。間もなく山中がやってきた。

 「斉藤良太さんの身寄りの方ですか?」

 「はい、小野寺真弓と申します。」

 「おととい斉藤さんが、下山しないので捜索したのですが、斉藤さんのものと思われる持ち物が発見されたんです。確認していただけませんか。」 リュックの中にはさいとうさんの健康保険証と、伊豆でとって貰った二人の写真があった。

 山中は極めて事務的な口調で

「悪天候の為、捜索は打ち切りました。」

「なんとか良太を探してください。お願いですから。」

 真弓は泣き崩れた。

 「私一人でも捜します。どうやって旭岳まで行ったらいいにですか?今から捜しにゆきます。」

 「無理です。この悪天候で貴女まで行方不明になったら、また捜す手間隙がかかるんですよ。斉藤さんの無事をいのるしかありません。」

 真弓は良太がきっと生きていると思った。そして、真弓はいつのまにか気を失った。


 

 気が付くと、個室のベッドの中だった。その部屋は鉄格子がついていて、何故か水洗トイレがある。ドアを開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない。

 真弓は記憶を辿ってみた。何があったのか全く覚えていない。カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。今、朝?それとも夕方?真弓は混乱していて昨日の事が思い出せなかった。ここはどこ?何故こんなところに閉じ込められてるの?すると、かすかに消毒液の匂いがした。もしかして病院かしら。真弓は昨日のことを懸命に思い出そうとした。頭がぼーっとする。真弓はまた眠りに付いた。

 「小野寺さん、気分はいかがですか?」

 白衣を着た若い看護士が、鍵を開けて入ってきた。

 「私はどうしてここに居るんですか?」

 真弓は訝るようにそのナースに尋ねた。

 「貴女、昨夜大量の農薬を飲んでこの病院に運び込まれたのよ。」 

 そう言えば思い当たるふしがあった。

 「お母様が先ほどみえて、着替えと洗面道具をもってきたのよ。」

 「お母さんは帰ったの?」

 真弓は不安そうに尋ねた。

 「今日のところは帰ってもらったわ。先生がまだ安静にしていたほうがいいとおっしゃって、また明日来るそうですよ。」

 真弓は少し安堵した。看護師は胃を洗浄して、一晩点滴をうったらしい。まだはきけがする。真弓は近くにあった洗面器におもいきり吐いた。胃液しか出てこなかった。看護師がやさしく背中をさすってくれて、どうにか吐き気が収まった。

 「何かありましたらブザーを鳴らしてください。」

 看護師は点滴の袋を取り出して、

 「もう一回点滴するわね。顔色もだいぶ良くなってきたわ。」

 真弓はどうして農薬なんか飲んだのか見当がつかなかった。真弓は懸命に記憶を辿った。昨夜はもう生きるのが嫌になって、大量の農薬を飲んだんだっけ。やわらかな冬の木漏れ日の中で真弓は眠りについた。 

 

 気が付くと、看護師が、

 「面会のかたが見えましたよ。」

 と微笑んで言った。

 真弓はようやく思い出した。良太の遭難でショックをうけてやっとの思いで東京に戻り、大量の農薬を飲んだのを思い出した。絶望してその行為に及んだのであった。

 陽炎の中からその人はやって来た。はっと気が付くと、なんと良太だった。

 「良太さん?!」

 「心配かけてすまなかった。悪天候で道に迷った時に、真弓の声が聞こえたんだ。そっちのほうに歩いて行ったら、小川が流れていてその水を飲みながら、その小川をつたって下山したんだ。その小川の川幅がだんだん広くなってきてなんとか山を降りることが出来たんだ。」

 「真弓は衝撃と喜びで胸がいっぱいになった。そして良太をおもいきり抱きしめて、

 「もうどこにも行かないで。ずっと私の傍に居てちょうだい。」

 良太は真弓を優しく抱きしめてそっと口づけをした。真弓は泣きながら、良太に身を任せ、暖かくやわらかな冬の木漏れ日はふたりを包み込んだ。
































 良太の職場には、佐々木葵という事務員が居た。良太は特に意識したことはなかったが、他の女子社員とは一風かわっていた。同僚とも話もせず、お昼ご飯もデスクの上で一人でお弁当を食べている。

 良太は葵と本の整理をしていた。彼女は必要な言葉以外発せず、的確に仕事をこなしていった。 

 作業も終わった頃、葵が初めて女としての言葉を発した。

 「あのう今晩なにか予定はありますか?」

 葵は今にも消え入りそうな声で聞いた。

 良太は躊躇いつつも、

 「家に帰っても音楽を聴いてぼーっとしているだけだよ。特にこれといった用事もないんだ。よかったら、ご飯でも食べに行こうか。」

 葵はこっくりとうなずいた。

 良太は以前行ったことがある、南青山のイタリアンレストランに葵を連れて行った。簡素な料理を提供する店だったが、味は悪くない。良太は前菜とスープ、パスタとピザ、それに鰊の蒸し焼きを注文した。葵も良太と同じものを頼んだ。そしてその店のハウスワインをボトルで頼んだ。まず二人で乾杯した。

 「今日は有難う。おかげで助かったよ。」

 良太は葵に謝意を口にした。

 「貴方は仕事をとてもきちんとこなす人なのね。感心したわ。」

 良太はあんな仕事なら誰でも出来ると思った。

 「実は貴方に興味を持ったのはケータイ電話を持っていないということなの。社内でも有名よ。緊急のときはどうするの?」

 やれやれ、またケータイの話かとうんざりして

「固定電話で充分なんだ。昔は持っていたけど、ある日川に捨てたよ。」

「私もケータイ持っているけど、普段は必要ないし、私メールが苦手なの。行き違いになってトラブルが起きたり、メール返す返さないでもめたこともあったの。確かに便利だけど、迷惑することも多いわね。」

 葵がこんなに言葉をはっしたのは初めてだ。少し酔いがまわってきたのかもしれない。葵は料理を美味しそうにほうばりながら、

「良太さんてどこかミステリアスだわ。他の人にはない独特の心を貴方はもっているわ。良太さん女子社員のうわさになってるのよ。」

 葵はこうして見ると、なかなかチャーミングだ。瞳も黒く澄んでいるし、体型も悪くない。脚も綺麗だ。デザートに二人はプリンを注文した。デザートを食べながら、葵は

「もう一軒だけ付き合ってくれませんか。お話を聞いてもらいたいんです。」

 良太は黙ってうなずいた。

 支払いを済ませた後、二人は店を出てタクシーをつかまえた。車の中で、葵は

「ごちそうさまでした。次のお店の支払いは私がしますから。まさか貴方は女性にはお金を払わせないなんていう、ウルトラファシストじゃないでしょうね。」

「対等な関係を保つ為にはそのほうがいいかもしれない。」

 葵は反駁するように、

 「そいうことじゃなくて、私も独立している一人の人間としてよ。」


 タクシーは自由が丘に向かっていた。店はショットバーらしい。葵が先導するように店に入っていった。店のマスターが、

 「こんばんは葵ちゃん。久しぶりだね。男連れかい、珍しいね。」

 葵は軽く会釈して、

 「一月に一回くらいここに来るの。なかなか良いお店でしょう。」

 良太はうなずいて

 「落ち着いてすごせそうなお店だね。」

 マスターが

 「葵ちゃんハイボールかい?」

 「うん、いただくわ。」

 「お客さんは?」

 「バーボンの水割りを」

 二人は飲み物を口にしていたが、口を開かなかった。きまずい沈黙ではなく、とても良い雰囲気を漂わせていた。

 葵はその空気を打ち破るように

 「実は私ね、心の病を持っているのよ。今まで誰にも打ち明けなかったんだけど、いつか貴方には言いたかったの。いつかこんな日が来ると思っていたのよ。」 

 良太は言葉を選びながら、

 「今時、珍しい病気でもないでしょう。君は優秀な社員だし、普通に生活を送っているじゃないか。だけど、精神的にきつい時はあるのかな?」

 葵は我が意をえたりとばかりに、

 「そうやっぱりしんどいわよ。時々ぼーっとして上司に注意されることがよくあるの。多分薬の副作用だと思うの。寝る前に、相当強いお薬をのんでるのよ。精神安定剤なんだけど、朝なんかもうろうとして、壁やドアに体をよくぶつけるわ。4週間に一回、カウンセリングを受けてお薬をもらっているのよ。」

 「ちっとも病気には見えないけどな。しっかり仕事もこなしているように見えるけど。」

 葵はまくし立てるように言った。

「最近はいいお薬が出てきて、精神病でも普通に社会生活を送れる人も増えてきているの。私の場合は家族が早く気づいて、心療内科に連れて行ってくれたの。短大の2年の時、丁度夏休みで、母と秋田のおばあちゃんの家にいって転地療養したの。お姉ちゃんが、お母さんから私の様子を聞いて病院に行ってくれたの。それで薬を秋田まで送ってもらったわ。最初は本当にわけが分からなかったわ。別な次元に居るみたいで、歩いていてもふわふわして、突然泣き出したりしたり、物を手当たり次第に窓から放り投げたりして、本当に家族に迷惑をかけたわ。」

 葵はうっすらと涙をうかべていた。マスターは何事もなかったように、空のグラスをさげて、

 「葵ちゃん、もう一杯のむかい?」

 「おねがいするわ。」

 「本当はお酒とと薬は合わないのは当たり前なんだけど、飲みすぎなければ大丈夫だと先生も言っていたわ。」

 マスターは黙って葵にドライマティーニをだした。

 「兄さんも、のむかい?」

 「バレンタインを」

 葵は照れくさそうに、

 「良太さんはお付き合いしている人いるの?」 

 真弓を思い浮かべた。旭川で遭難した時の彼女との事を鮮明に思い出した。あの時の真弓の涙でくしゃくしゃになった顔、彼女とは何もなかったが、家に来て掃除をしてくれたり食事をつくってくれる。

 「あ、やっぱりいるんだ。良太さんてわかりやすいのね。女の私から誘ったんだから、私の意図は分かっているでしょうね。でもいいの。お食事してちょっぴりお酒を飲んでお話が出来れば。統合失調症の私だって、人を好きになる権利はあるわ。お付き合いしてって言ってる訳じゃないの。貴方のことは好きだけれど、貴方の気持ちも尊重したいの。だけど私は真剣よ。このまま貴方に抱かれてもいいと思っているのよ。あら、私少し酔ったかしら。」

 葵が真弓との関係を見通しているかのように思えた。真弓とは肉体関係こそないが、精神の深いところで結びついている。真弓とは堅い絆で結ばれていた。良太の想いは複雑だった。葵と真弓との間で気持ちが揺れていた。葵の少女のような純粋で一途なひたむきな想い。優しく包み込むような真弓の聖母のような慈しみと愛情。葵は心の病という十字架を背負って、懸命にいきている。メンタルなハンディを持った、葵には自分がそばに居て、できるだけのことはしたいと思った。だが自分にいったい何が出来るのだろう。良太は自分が葵にとって安心できる存在になりたかった。真弓の事を考えると、葵には深く関わる事は出来ないと思った。真弓の存在が心の中に大きなウエイトを占めていた。純粋に愛を告白してきた葵。良太は自分がどこに行こうとしているのか迷妄しているのを感じた。


 マンションに帰ると真弓が来ていて、部屋は綺麗に片付いていた。

 「遅かったのね。ご飯どうします?」

 「いや今日は食べてきたんだ。」

 「会社の人と?」

 「そうだよ。」

 良太はそっけなく答えた。

 「ちょっと怪しい。香水の香りがするわ。」

 「そうかな。」

 「あっひっかかった。香水の匂いなんかしないわよ。会社の女の子?」

 良太は特に隠すこともないと思い、

 「ああ」

 とだけ言った。

 「たまにはいいでしょう。つきあいもあると思うし。」

 それ以上真弓は何も言わずに、ベートーヴェンのテンペストをかけた。あのまま別れて良かったと思った。葵の瞳、真っ直ぐな視線を思い出すし、ちょっと残念かなと思っていると、真弓は、

 「少し飲んできたようね。よっぽど素敵な女の子だったの?」

 「ちょっと相談したいことが有ると言って、、、」

 「でもいいわ。まだ十時前だし。酔いが覚めたらお風呂は入る?それにしても遅くなるんだったら連絡くらいくれてもいいのに。そういえば電話持ってないものね。」

 真弓はくすくす笑った。良太はケータイを持っていないことに、つくづく感謝した。真弓にはデートの現場が見えているのかもしれないと思った。女という生き物が怖く感じた。

 良太は葵の病気の話しをした。

「統合失調症ってどういう病気?」

 「三大精神病の一つで、妄想とか幻聴や自傷他害行為をしたり、わけの分からないことを言ったり、なかなか厄介な病気よ。」

「でも今はいい薬が出来て、普通に社会生活を送れるひとも、大勢いるそうだよ。」

「そうねでも、差別や偏見はいまだにあるわよね。」


 良太がお風呂から上がると、ビールとグラスが枝豆と一緒に用意されていた。

 「たまには二人でのまない?若い女の子にはまけたくないわ。」

 真弓はグラスにビールを注ぎ、乾杯した。今日何度目の乾杯だろう。

 「貴方、最近の若い女の子には気を付けるのよ。何かおきてからじゃ遅いのよ。」

 良太は葵はそんな娘にはとても見えなかった。


 真弓は不安な気持ちでいっぱいだった。良太が自分のもとを離れていってしまうのでわないかと。彼女の病名を聞いて同情するわけではなかったが、不安と同時に心配だった。統合失調症はやっかいだ。これからも薬をずっと飲み続けなければならないであろう。子供も生むことも難しいだろう。良太が葵の事を考えているのが、手に取るようにわかる。それを見ていると、真弓は泣きたくなった。ソファで寝ている良太を見ていると、思わず抱きしめたくなった。

 {良太さんどこにも行かないでね。

  私のそばから離れないでね。」

 真弓はそっと呟いた。


 翌朝出勤すると葵の姿はなかった。昨夜お酒を飲んで、体調を崩したのかと思って、良太は自分の行動を恥じた。

 昼休みに課長の山田が

 「斉藤君、お昼一緒に食べないか。」

 「はい、お供しますよ。」

 二人はサラリーマンやOLで、ごったがえすオフィス街を掻き分け、喫茶店に入った。

 山田がしょうが焼きき定食を注文した。良太は何も食べたくなかったが、とりあえずシーフードのパスタを注文した。山田が話を切り出した。

 「実は

、佐々木葵君のことなんだが、しばらく病気で休むことになったんだ。今朝、佐々木君のお母さんから連絡があった。彼女は心の病らしい。上のほうの連中に入社の時の面接で、本人が話したらしい。人事部の中には反対するものも居たが、今時珍しいお嬢さんだということと、普通に働けそうだという人事部長の判断で採用したらしいんだ。何か彼女から聞いているか?」

 良太は昨夜のことは話さなかった。

 「それで、どのくらい休むんですか?」

 「長くて2ヶ月くらいだとお母さんから伺った。その間はバイトか派遣で、佐々木君の穴埋めをしてもらうよ。正直言って彼女は仕事もできるし、ここのセクションをよく把握している。かなりの痛手だ。」

「俺は社に戻る。これは佐々木君のお母さんから伺った、病院の名前と住所だ。お母さんの話だと、2、3週間くらい入院するかもしれないと言っておられた。」

 やはり葵が体調を崩したのは仕事のストレスが原因らしい。良太は葵と連絡を取りたいと思った。昨夜自分の電話番号を聞かれて、教えてよかったと思った。真弓はちょっと嫌な感情を持つかもしれないが、葵の病気のことも知っているので、納得してくれるだろう。


 その晩、葵のお母さんから電話がかかってきた。幸いにも真弓はまだ来ていない。

「佐々木葵の母です。いつも娘がお世話になっています。今お時間大丈夫ですか?」

 良太は躊躇わずに、

「はい、大丈夫です。」

「ありがとうございます。お話は山田様から聞いているとは思いますが、葵が今朝、体調を崩して病院に連れて行ったんです。医者が少し休んだほうがいいと言われました。それで、今日の午後から入院しました。」

 良太は入院と聞いて少しショックを受け、

「申し訳ありません。昨日葵さんと酒を飲んだのが原因かもしれません。」

「いいえ、葵から話を聞いています。帰ってきたときもぜんぜん酔ってなかったし、とても楽しそうに貴方とのことを話してくれました。あんなに楽しそうに目を輝かせて話をするのは病気になって以来、初めてです。感謝こそすれ、貴方に責任はありません。」

 一瞬の沈黙の後、葵のお母さんが、

「あつかましいとは思いますが、もう少し葵が落ち着いたら、見舞ってやっていただけませんか。もう1、2週間くらいすれば落ち着くと思うんですけど、先生の許可がおりたら連絡致しますので、お願いできませんでしょうか。」

 すがるようなお母さんの声が胸にしみた。

「 もちろんOKです。葵さんが落ち着いたら、連絡してください。」

「ありがとうございます。無理言ってすみません。ごめんください。」

 良太は葵に手紙を書こうと思った。自分には好きな人がいてそのひとの事をとても愛していることを伝えなければならないかと思うと、気が重くなった。葵の愛の告白に対して、

どう受け止めたらいいのか心を痛めた。

 数日してから葵から手紙が届いた。 


 拝啓

 良太様

 私が入院してから一週間がたちました。心の中にはいつも貴方がいます。この間のデートは本当に夢のようでした。何より大好きな貴方と一緒の時間を過ごし、同じ空間にいれたことが、どれほど嬉しかったか。本当に有難う。病院の先生は2、3、週間もすれば良くなると言っていました。

 午前中は病院の周りを散策しています。ここは東京の西のはずれです。朝は小鳥のさえずりで目が覚めます。午後は手芸をしたり、昼寝をしたりしてゆったりと過ごしています。元気になってまた貴方と仕事を一緒にしたいです。


敬具

                

                                     葵

 葵は食欲がなく寝込んでいた。良太に一目会いたかったが、面会の許可がおりなかった。病室での時間はゆっくりとしかすすまなかった。葵は良太の彼女を思い浮かべた。良太が好きな人って、どんな人なんだろう。葵はどうしようもなくせつなかった。


 良太は葵の手紙を読んで少し安心した。うたた寝をしていると、真弓が部屋に入ってきて、

 「そんなところで寝てると風邪ひくわよ。今夜食事はどうするの?」

 「さっきパンを食べて済ませたよ。」

 「ご飯はしっかり食べないと駄目よ。」

 「君はいいのかい?」

 「私はあるもので適当にすませるわ。」

 台所からいい匂いがしてきた。良太はおもわずのぞきこむと、真弓はチャーハンを作っていた。

 「良太も食べる?」

 「美味しそうだな」

 「そう思って、多めに作ったのよ。一緒にたべましょうよ。」

 二人はテーブルをはさんで食べながら、

 「そういえば例のあの子どうしたの?」

 真弓は心配そうに聞いた。

 「入院したみたいだよ。山田課長から聞いたよ。」

 「そうなの、たいへんね。彼女の気持ちも考えると、心苦しいんだけど私に出来ることがあったら言ってちょうだい。私いい人ぶっている訳でもないし、偽善者でもないつもりよ。彼女が障害者だからと言って、見くだしている訳ではないわ。障害者という言葉も嫌だわ。それに貴方が苦しんでいるのを見てられないのよ。最初はただの小娘かとおもってたけど、他人事ではないような気がしてきたのよ。」

 「ありがとう。その気持ちだけで十分だよ。彼女にも家族がいるし大丈夫だよ。そのうちまた元気で働くことも出来ると思うよ。」

 真弓は突然、

 「これからドライブに行かない?富士の湖畔に行って星空を見るのよ。今ならどんな星座がみえるの?」

 「夏の大三角がまだみえるよ。富士に行けば流星も見えるかも。今夜は月も出てないしうってつけかも。」

 「たのしみだわ。」

 真弓は洗い物を済ませエプロンをはずすと、ケータイをテーブルに置き身支度を始めた。

 「ケータイ持っていかないの?」

 「二人の時間を邪魔されたくないもの。3、4時間くらいケータイなくたって、大丈夫よ。貴方の影響を受けたかも。」 

 彼女は嬉しそうに、髪にブラシを当て、

 「さあ出かけるわよ。星空を見に行くのよ。」

 と言って、おしいれから双眼鏡を出してきた。

 しばらく中央高速をとばし山中湖に着いた。真っ暗闇の中で、星が燦然と輝いていた。

 「天の川がみえる。凄いわ。あの天の川をはさんで見える、二つの明るい星はなに?」

 「こと座のベガとわし座のアルタイルだよ。ベガが織姫でアルタイルがひこ星なんだ。白鳥座と同じように、大神ゼウスが姿を変えたものなんだけど、美少年のガニメドをさらうためだったらしいよ。」

 「面白いわね。北の空に見えるWの形をした星座は?」

 「カシオペアだよ、今の時期は中天高くかかっているよね。北極星を探すのには北斗七星とカシオペアの位置でわかるんだよ。昔、夜の航海の時、船乗りはそれを見て目印にしたそうだよ。」

 真弓は暫らく静かに星空を眺めていたが突然、

 「流星よ!」

 と叫んだ。流星は一瞬またたき、すぐに消えていった。

 「私たちの人生も宇宙の歴史に比べれば、流れ星のようなものよね。一瞬だけ輝いてあっという間に消えてゆくのよ。だからこそ今を大切に生きなければならないわ。」

 良太は無言で星空を見上げ、葵のことを考えていた。葵にもこんな宇宙の神秘を見せてあげたかった。

 真弓は涙声で、

 「どこにも行かないでね。二度と私の前から消えないでちょうだい。」

 良太は愛しさがこみ上げ、真弓を抱きしめた。

 「もっと強く抱いて。」

 しばらく静寂の時が流れた。


 次の日の早朝に電話の音がけたたましく鳴った。葵のお母さんだった。

 「朝早く申し訳ありません。昨夜、葵は息をひきとりました。夜に高熱が出てそのまま逝ってしまいました。息をひきとる時、良太さんと言いました。」

 良太は受話器をおくと、壁に何度も頭を打ち付けた。慟哭して、

 「葵」

 と大声で叫んだ。昨日山中湖で見た流星は葵に違いないと思った。葵は天に帰ったのだ。

 良太は仕事を休み、病院に行った。霊安室で葵と対面した。葵の顔は透き通るように白かった。お母さんが、涙をそっと拭うと、一通の手紙を良太にそっと渡した。

 「さようなら良太さん。私はだんだん生きてゆく力が失われていくような気がします。貴方が私のびょうきを受け入れてくれて、普通の女性として接してくれたことに感謝しています。最初はどうしてこんな病気になったんだろう、なぜ何のために生まれてきたのだろうと、両親をうらんだこともありました。でも生まれて来てよかった。貴方に会えたのですから。貴方はしっかりと私の中に居ます。これからもずっと貴方と一緒です。貴方がこの手紙を読んでいる時はもう私はこの世に存在していないかもしれません。貴方に最期のお願いがあります。それは、貴方に私の志を受け継いで欲しいのです。そうすれば私は貴方と共に行き続けることが出来ると思います。貴方に会えたことを感謝します。」


                                  葵




 葵の葬儀が終わると、真弓は白い百合の花を飾り、黙って座っていた。

 大変だったわね、つかれていない?」

 いたわるように良太に尋ねた。

 「少し疲れたよ。でも人の一生ってなんなんだろう。葵はこれからという時に逝ってしまった。」

 「でも人は必ずこの世を去る時が来るわ。彼女は良太に出会えた事で納得して、逝ってしまったのかもしれないわ。」

 良太は葵の透きとおるような肌を想い浮かべた。


 「俺と結婚してくれないか。」

 良太は、決然と真弓に言った。真弓は涙を滲ませながら、

 「もちろんよ。葵さんの分まで貴方を愛します。」

 「新婚旅行は伊豆にしないか」

 良太はもう以前のように優柔不断ではなかった。葵との死別を乗り越えて良太は強くなったと真弓は感じた。

 「最初に出会った処ね。今度は一つのお布団で眠れるのね。」


 その夜、二人はベランダに出て、夜空を眺めていた。西の空に見たことのない星がかがやいていた。

 「あの星は新星かしら。」

 真弓は不思議そうに良太に問いかけた。

 「きっと葵だろう。天に帰ったんだよ。」

 「良太をずっと見守り続けるのよ。」

 晩秋の冷気を帯びた風が、二人を包むように流れていった。







                                               

                          完             

                                      

                                           






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