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「な、何よ……誰か隠れてるんでしょ?それで私が死に損なったのを笑ってるんでしょ?こんなオモチャで馬鹿にして――ふ、ふざけないでッ!」

「誰も隠れてないし、笑ってもいない。もちろんふざけてもいない。……ごめんな、邪魔して。お前の見た通り、オレは妖精だ」

「……う、嘘よ!妖精なんているわけないもの!」

パニックになって喚く私に、妖精と名乗ったその少年は深々と一礼した。

「死ぬのを邪魔したのは謝る。だけどとりあえず、落ち着いてくれ。オレだって、なんでこうなったのか分からないんだ」

「……わ、わからない、ですって!?人1人死ぬのを邪魔して、分からないですって?」

「……ああ」

少年は本当に申し訳なさそうな顔で頷いた。

「いいわ。いいわよ、こうなったらどうせ死のうと思ってたんだし、この茶番劇に付き合ってあげるわ。あなたの言葉も信じてあげる」

「本当か?ありがとう」

少年はまた深々と頭を下げた。

私ははっとした。

――ありがとう。ありがとうなんて言われたのはいつだったろう。そんなこと――ありがとうなんて言われたら、私は、

「泣いちゃうじゃない……ばか」

……せっかく張った見栄も、死のうとした想いも。

――ありがとう。

この一言だけでこんなに楽になれるだなんて思わなかった。

「えっ……お、おい」

焦ったような声が聞こえたが、私はもうどうでもよかった。

見知らぬ少年に泣くところを見られてもいいと思った。

「ごめん……今だけは、」

――今だけは、泣かせて。

熱い液体がとめどなく私の目から溢れて頬を伝った。

嗚咽が漏れる。


私は、子供のように泣きじゃくった。

少年は何も言わなかった。


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