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急速に薄れていく孤の手のぬくもりを感じて、私は深い喪失感に襲われた。

孤は行ってしまったんだ、1人で。

私を置いて。

ぼうっと孤の胸の辺りが光はじめた。

何か白い球体のようなものが胸から出てきた。

「これが……魂……?」

私が手を伸ばして孤の魂を掴もうとした時、

「その魂で何をなさるおつもりですの?」

横から突然見知らぬ手にかっさらわれた。

私は弾かれたようにその手の人物を見上げた。

まるでオーケストラの楽器演奏者のような豪奢な黒いドレスを纏った女は、口元に静かな笑みを湛えて私を見た。

「何をって……私は孤と一緒にいたい。ただそれだけよ」

「まぁ、お若いこと」

くすくすと女は笑った。

「何がおかしいのよ?」

けんか腰になった私が睨み付けると、女は口元から笑みを消して私に向かいあった。

「感傷に浸るのも程々になさいな、お嬢さん――いえ、冴さん。わたくしは孤の母です」

なんだって?

「わたくしは、ずっと孤が帰ってこないのを心配して人間界をずっと見てましたのよ。そう、あなた達をね」

声に静かな怒気が満ちた。

「孤が帰ってこないのも、今孤が死んだのも、全て貴女のせいじゃありませんの。あら、違うとは言わせませんわよ?この目で見たのですから」

私は何も言えない。

「そんな貴女が被害者ヅラをしているのを見ていると、わたくし、とても嫌な気分になりますの。はっきり言ってしまうと、不快ですわ。この魂を貴女から奪ったのは、貴女への報復と、母としての悲しみからですの」

お分かり?と母親は凄絶に笑った。


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