14
「!?」
重なった、と思った時、すでに孤の手が私の頬から離れていて、孤は後ろに倒れた。
「孤……孤っ!」
私は必死に孤を呼んだ。
今まで倒れてきた時とは違い、明らかに呼吸が早くなっている。
「孤!孤ってば!死なないでよ……!」
動かしてはいけないとは思うものの、孤を揺さぶってしまう。
半狂乱になって名前を呼ぶ声が届いたかのように、孤は目を開いた。
「冴……ごめん……オレ、もうダメみたいだ……」
「な……なんでよ……今、一緒に生きようって言ったのに!永遠の生のあるセカイを探すはずだったのに……!ひどいわ孤!」
頭では分かっているのに。もう孤を失うって分かってるのに。
どうしても諦めたくない自分がいる。
「イヤよ!孤、死んじゃイヤっ!私が死ねないようにしておいて自分は死んじゃうの!?ずるいわよ!孤はわがままだわ!」
どうでもいいことばっかり言って。引き止められる訳がないのに。
「孤ってば、ねぇ孤……!」
口元に小さく笑みを浮かべたまま、孤は黙って私の叫びを聞いていた。
「ありがとう……冴。そんなにオレのことを思っててくれて……」
「やめて、そんなこと言わないで!」
もう自分が何を言っているのかわからない。
「お願いだから……私を残して死なないで……」
孤は重そうに手を持ち上げた。私の頭をなでる。
「それはできないな、冴……でも冴、許してくれ……。オレは、孤独の孤と書いてともって読む名前の通り、友達が今までいなかった、ましてや大切な人なんていなかった……」
だから。
「自分勝手だけど冴だけは失いたくないんだ……よ……」
私の頭をなでていた手が、ぱたりと床に落ちた。
ゼイゼイという荒い息。
「孤…孤っ……!」
私はその手をしっかりと握りしめた。
孤はそんな私を見て、小さく微笑んだ後、静かに目を閉じた。
――じゃあな、冴。生きてくれよ。