13
想いが伝わったのもつかの間、孤は倒れる回数が多くなった。
前は3週間に1回だったのが、1週間に1回、3日に1回、そして毎日。
私は幸せな時間の終わりを感じていた。
ふとしたことで泣くようになった。
孤は少し困ったような顔をするけど、いつも優しく抱きしめていてくれる。
今日もちょっとしたことで泣いてしまった。
いつものように孤は優しく私を抱きしめていてくれた。
私が泣くのが収まると、孤は私の髪を撫でながら口を開いた。
「なぁ、冴」
「……なあに?」
「オレ、考えたんだ。……これからのこと」
私は耳を疑った。
「これからのこと?……だって、だって孤はもう……!」
声を詰まらせた私を安心させるように、孤はぽんぽんと私の背中を叩いた。
「そうだ、これからのことだよ。でな、冴。オレと」
――旅に出ないか。
「え……?」
一瞬、孤の言ったことが理解できなかった。
「なんかな、昔きいたことがあるんだ。人間の世界と妖精の世界の間には、永遠の生のある場所があるって。そこを探して、2人で暮らせたらなって思うんだ」
「でも、そこを探す前にもし孤が……!」
私は必死に涙をこらえた。
「まぁ、その時はその時だな。でもな冴、1つだけ分かってほしいことがある」
孤は私の頬を両手で挟んだ。
「オレは、冴がどれだけ死にたいと思ってても、オレは冴に死んで欲しくない。生きている方が死ぬよりも何倍も辛いけど、オレは冴に生きてて欲しい。それで、オレと一緒にいてほしい。これはオレの勝手なわがままだけど、正直な気持ちだ」
どう?と訊かれて私はのどから震える声を押し出した。
「私だって……孤に死んで欲しくないの。孤だって今苦しんでる……だから、私も生きる苦しみに耐える。……探しましょう、一緒に。そのセカイを」
「冴……」
孤は今まで見た中で、一番素敵な笑顔を浮かべた。
その笑顔がだんだん近づいて、ついには、
唇が重なった。