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想いが伝わったのもつかの間、孤は倒れる回数が多くなった。

前は3週間に1回だったのが、1週間に1回、3日に1回、そして毎日。

私は幸せな時間の終わりを感じていた。

ふとしたことで泣くようになった。

孤は少し困ったような顔をするけど、いつも優しく抱きしめていてくれる。

今日もちょっとしたことで泣いてしまった。

いつものように孤は優しく私を抱きしめていてくれた。

私が泣くのが収まると、孤は私の髪を撫でながら口を開いた。

「なぁ、冴」

「……なあに?」

「オレ、考えたんだ。……これからのこと」

私は耳を疑った。

「これからのこと?……だって、だって孤はもう……!」

声を詰まらせた私を安心させるように、孤はぽんぽんと私の背中を叩いた。

「そうだ、これからのことだよ。でな、冴。オレと」


――旅に出ないか。


「え……?」

一瞬、孤の言ったことが理解できなかった。

「なんかな、昔きいたことがあるんだ。人間の世界と妖精の世界の間には、永遠の生のある場所があるって。そこを探して、2人で暮らせたらなって思うんだ」

「でも、そこを探す前にもし孤が……!」

私は必死に涙をこらえた。

「まぁ、その時はその時だな。でもな冴、1つだけ分かってほしいことがある」

孤は私の頬を両手で挟んだ。

「オレは、冴がどれだけ死にたいと思ってても、オレは冴に死んで欲しくない。生きている方が死ぬよりも何倍も辛いけど、オレは冴に生きてて欲しい。それで、オレと一緒にいてほしい。これはオレの勝手なわがままだけど、正直な気持ちだ」

どう?と訊かれて私はのどから震える声を押し出した。

「私だって……孤に死んで欲しくないの。孤だって今苦しんでる……だから、私も生きる苦しみに耐える。……探しましょう、一緒に。そのセカイを」

「冴……」

孤は今まで見た中で、一番素敵な笑顔を浮かべた。

その笑顔がだんだん近づいて、ついには、


唇が重なった。


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