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「すぅ……すぅ……」

ことん、と冴の頭がオレの肩にもたせかけられる。

「困ったな……」

オレは途方に暮れて呟いた。

女の子を泣かせてしまった。

しかも冴を。

「もっと冴は甘えたっていいのに」

そう、今のように。

環境のせいもあったのかもしれないが、もう少し甘えたっていいと思う。

「ま、オレの方がおかしいのかもしれないけどな」

1人で苦笑いする。

考えてみると、一族の中で今までに人間の魂を取ってくるのをためらった者はいなかった。

人間と会ってない者が1人もいないはずはないし。

そのうえオレは人間に入れ込んで一緒に暮らしてるっていうんだから

「重症だよなあ……」

「……ふぁ?」

呟いた声が大きかったらしい。冴がうっすらと目を開けた。

「孤、どこか痛いの?」

「ちげーよ、大丈夫だ」

「そっか……ねぇ孤」

声に応えて冴を振り向くと、肩にもたれたままの冴が、思わずたじろいでしまうほど近くで真摯な瞳を向けていた。

「孤は死んじゃだめよ。もし死んじゃいそうになったら、私の魂を喰らって」

「おい、そんなことしたら冴が……」

冴はふるふると首を横に振った。

「私は死に損ないよ。死に損ないの魂を喰らうのをためらわないで。私は孤に生きていて欲しいの」

だって私は、と言って冴は大きく息を吸った。

「言うな。それ以上」

オレは冴の言葉を遮った。

冴が傷ついた顔をする。

「やめろ。そんなこと言わないでくれよ冴。そんな自分を粗末にするようなことをオレは冴にオレのために言って欲しくない。オレだって」


――冴が好きだから。


オレの言葉に冴は驚いて一瞬目をみはった。大きく見開かれた目がみるみるうるむ。

「ずるい……孤。私だって好きなのに孤のために何もさせてくれないなんて。孤ばっかりずるいわ……ずるいのよ……っ。私だって……私だって孤に何かしたいの……」

オレのシャツのすそを掴み、だだっ子のように泣きじゃくる冴をオレはそっと抱きしめた。冴が泣き止むまでオレはずっと抱きしめていた。


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