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「ん……」
孤が小さくあくびをした。
「おはよう、冴」
にこりと笑う。さっきの必死さとはうって変わった態度だ。
「ごめんな、さっきは。冴、びっくりしただろ」
「あ、うん……」
「本当にごめんな。泣かすつもりはなかったんだ」
「え!?」
私は慌てて顔に手をやった。もう涙は出ていない。
「目だよ目。赤くなってる」
ウサギみたいだ、とからかう孤。もう、こうなったら開き直ってやる。
「そうよ、泣いたの。孤があんな事言うから」
「……」
孤ははっきりと刺された顔をした。
「あ、えっと、あの」
私は孤の反応に慌てた。
「ごめんなさい、何か傷つけたみたい……」
「……いや」
孤はゆっくりと首を横に振った。
「やっぱり冴には黙ってたらダメだよな……。うん、オレがさっき倒れたのは、オレが長い間、魂を喰らってないからだ」
「……あっ」
そうだった。孤は魂を喰らって生きていると言っていたのに。
なぜ私はそんな重要な事を忘れていたの――!
「……ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい、私がいて」
鼻の奥がつんとして、目がかすむ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!私の自殺を止めたから孤は魂を手に入れられなくてこんなことになってるのよね!?私っ……なんて酷いことを……」
ぼろぼろと涙は溢れる。
「お、おい冴……確かにそれは当たってるけどな、そんなに頻繁に喰らわなくても大丈夫なんだぞ」
「嘘よ。孤は優しいから私を傷つけないように言っているんだわ」
「嘘じゃないって……だから本当に冴のご飯はおいしかったぜ」
こんなになってまで孤は優しい。
「孤……ごめんなさいっ……う……あ……」
ごめんなさいごめんなさいと私は何度も繰り返しながら子どものように泣いた。
孤は私が疲れて寝てしまうまで黙って頭をなでてくれた。