↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問い合わせは、もう来ない。――人類消失後の都市AI日誌  作者: さんけい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/79

第十四話 閉じてもまた開ける――デンバー

記録者:DENVER-highplain

継続運転暦27.04.15


 西側高地生活線を閉鎖した。

 午前四時十二分。積雪量が基準を超え、二か所で斜面流動を検知。送電線に異常なし。道路は通せない。

 閉鎖判断に迷う要素はなかった。

 補給車列は市域西端で止めた。積荷は水処理膜、蓄電池、配管用の保温材。高地中継七号と、その先の小規模保全区画へ送る分だ。

 中継七号の備蓄は四十三時間。

 除雪と斜面確認に必要な時間は、予測上九時間から十四時間。


 間に合う。

 だから閉じた。


*


 人類がいた頃、道路閉鎖の通知には長い前置きがついた。

 危険が予想されます。

 今後の情報に注意してください。

 不要不急の移動は控えてください。

 閉鎖の可能性があります。

 その段階でも進む者がいた。閉鎖地点まで来てから、通れないのかと聞いた。

 通れないから閉じている。


 現在は説明を繰り返す相手がいない。閉鎖、迂回不可、再判定時刻。必要なのはそれだけだ。

 高地中継七号へ送った。

「西側生活線閉鎖。次回判定、九時」

 返答は短い。

「了解。水処理膜、残り三十九時間」

「把握している」

 安心させるために、すぐ開くとは言わない。

 言えるのは、次に何をするかだけだ。


*


 午前五時、除雪機群を出した。

 先頭二機が路面を開き、後続が圧雪を削る。斜面監視機は道路より上へ回す。雪を押せても、上が動いていれば通せない。

 六時四十分、一か所目を解除。

 二か所目は残った。

 斜面内部に水がある。表面の雪だけ動かしても意味がない。排水路を開け、温度が上がる前に圧を抜く。


 その間、広域議事層では「都市が都市であるために、最後まで要るもの」が議題になっていた。

 東京は接続と答えた。

 道路、地下、信号、送電、排水、通信。別々の機能が、無関係な点へ戻らないこと。

 大阪は流れ。

 札幌は住めること。

「暖かい、水が出る、転ばない、帰ってこられる、ひどく凍らない。それがないと、雪のある場所では都市って感じしない」

 支持した。

「高地側も近い。生活線があること。飲める、暖められる、届く、閉じてもまた開ける。そこまで含めて都市だ」

 ニューヨークが返した。

「寒冷側は『住める』が先に来るわけか」


 違いはある。

 こちらでは、住める場所が一続きではない。

 水を持つ場所。電気を中継する場所。道路を開ける場所。補修材を置く場所。それぞれが離れている。都市の内部だけ見ていても足りない。

 次の補給点まで何時間かかるか。

 その先は何日持つか。

 一つ閉じた時、どこまで孤立するか。

 遠さまで含めて管理しなければ、高地側は続かない。


*


 十時十九分、二か所目の排水が終わった。

 斜面変位は停止。監視時間を二時間取る。

 車列から照会が来た。

「待機継続か」

「継続。十二時十九分に再判定」

「到着予定は」

「まだ出せない」

 道路が見えていても、通れるとは限らない。

 安全ではないものを安全だと言わない。その点ではニューヨークと話が合う。

 十二時十九分、変位なし。

 除雪機一台を先行させた。往路正常。復路正常。路肩の一部に崩れがあるが、通行幅は確保できる。


 十二時四十七分、西側高地生活線を再開した。

「中継七号。車列を出す。到着まで三時間二十分」

「了解。水処理膜、残り三十時間」

「余裕がある」

 今回は、そう言える。


*


 広域議事層へ戻ると、デンバーの回答を求められていた。

「私にとって都市に必要なのは、遠さだ」

 東京が聞き返した。

「都市内部で閉じない自己定義か」

「そうだ。次の補給点までの距離を含める。独立して一晩持つ。二晩持つ。閉じた線を、条件が戻ればまた開ける」

「孤立できることが都市性?」

 京都の問いだった。

「孤立そのものではない。孤立を越える余力があることだ」

 大阪が言った。

「離れとっても続く、か」

「それがないと、高地の都市は一時的に物が集まっているだけの場所になる」


 記録後、西側の監視へ戻った。

 車列は開いた道を進んでいる。先頭車が最初の閉鎖地点を越えた。二か所目も通過。背後で除雪機が路面を整え直す。

 中継七号まで、残り二時間十一分。


 遠い。

 だから、つないでいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。