人見知りの主人公はマズイ
マヒルが目を覚ますと木造の天井がまず目に入った。次に横を見るとイルナインが寝ていた。
力がうまく入らない体を無理やり起こして辺りを見回すとそこは見知った和室で、思わず声が出た。
「ここ、フウジュくんの家だ……」
すると障子が勢いよく開き、眠そうな顔をのぞかせた少年は「起きたんだ」と一言。
「フウジュくん、久しぶり! って、そういえばあのタヌキ妖魔は!?」
少年はゆっくり答えようとマヒルの横にあぐらで座った。
彼の見た目は腰まで伸びるサラサラの白髪に黄色い瞳。服装は黒いパーカーの上から、背面に大きな朱色の蝶模様があしらわれた白い羽織を羽織り、下には紺のジーンズという具合だ。
そんな彼がボソボソと説明を始める。
「あの妖魔はタヌキじゃなくてイタチ。俺が封印して、倒れてたマヒルとそっちの人をここまで運んだ」
「そっか、封印ね……。ってあれAクラスだよ!? フウジュくんが封印術使えるのは知ってたけどあんなに強い妖魔を……!」
興奮するマヒルの両肩にフウジュが手を置き、「落ち着け」となだめる。
そこへ申し訳なさそうな声が。
「あ〜、マヒル? そのイケメンくん誰??」
イルナインが目を覚ましたことに気付いたマヒルは慌てて紹介をする。
「イルナイン先輩、こちら私の幼馴染のフウジュくんです。私たちをAクラス妖魔から助けて……って、あれ?」
振り返るとさっきまでいたはずのフウジュの姿が消えていた。
「アタシが起きた瞬間障子の裏に隠れちゃったけど、彼……」とイルナインが指をさす。
たしかにフウジュは障子の影から顔を赤くして覗いている。そして先ほどの寝起き声よりさらに小さくマヒルに呟いた。
「俺、ダメなんだ。知らん人と話すの……」
マヒルは不思議に思った。昔のフウジュは人見知りなどではなかったはず。
しかしそれは今一番気になることではなかった。マヒルが一番気にしていること、それはフウジュの紹介が途中で終わってしまったこと。
「というわけで改めまして、こちら覇紋封樹くんです!」
「「いや人見知りのくだり無視!?」」思わずフウジュとイルナインがハモる。
その後もマヒルはかまわずフウジュの紹介を続けた。
それによると、フウジュとは小学生時代に近所ということでよく遊んでいたらしい。2人が中学生に上がる直前にマヒルが対魔の才能を見いだされ、対魔養成学校に入学したのを期にそこから2人が18歳になった今まで会わずにいたという。
その話を聞いてイルナインが一言。
「まさかマヒル憧れのフーたんに助けてもらえるとは! マっっっジでありがとう!!」
これに腕をバタバタさせてマヒルが「あー!紹介終わり!! 話題を変えましょう!!?」とお茶を濁す。
フウジュは頬を赤くして「フーたん……」と初めてあだ名を付けられたような照れ様を見せている。「マヒル憧れの」の部分は頭に残っていないようだ。
そして話題は今後のマヒルたちがどうするのかというものに移っていく。
イルナインはスマホを取り出していくつかメッセージを送るとマヒルの方に向きなおった。
「とりま学校の方に、実習中にAクラスが出たことは報告したけどアタシとマヒルはほぼ確で呼び出し。ワンチャンだけどフーたんにも来てもらわんとかも」
この言葉にフウジュはボソボソと応える。
「いや、俺は人がたくさんいる所はちょっと……」
「そっか〜。まぁ命の恩人無理に連れてくこともできんし、かといってアタシらじゃ報告に穴あるかもだしな〜」
「う〜ん」と少し唸ってイルナインは提案した。
「そしたらアタシがここで必要そうなこと質問してくから答えてくれると嬉しいかも♪」
「ま、まぁそれなら」
「サンキュ〜、じゃあまず1つ目! ぶっちゃけフーたんAクラス、つまり意思がある妖魔見んの初めてじゃないっしょ?」
驚きの一問目にマヒルがフウジュの回答を待つ。
フウジュはひと呼吸置いて答える。
「1年くらい前から、喋る妖が出てくるようになった」
「対魔養成学校まで情報来なかったのはフーたんが封印してたからってことか」
これにフウジュが黙って頷き、イルナインは質問を続ける。
「それじゃ2つ目! なんでアタシたちがピンチのときにタイミングよく来れたん??」
フウジュはもともと伏し目がちだったのがさらに下を向いて押し黙った。が、何を思ったか急に立ち上がって窓の外に目をやる。その目には欠けた月が映っている。
そして彼は何かを決意したように息を吸い、言葉を紡ぐ。
「俺、知ってたんだ。マヒルとイルナイン……さん達が妖と接触すること」




