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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寝ても醒めても終わらない〜この世界がハメツに進むまで〜

作者: 神茅 朱琳


朝目が覚める


夜になれば目を閉じで眠りにつく


それが当たり前の世界


私に来ることを願います



シェルリ・ログスタは、16歳となった。自分の感覚では倍の年齢を、生きている気がする。寝ている間に他の世界にいるとかそういう次元じゃない。寝たはずなのに、寝ていないのだ。寝た瞬間同じ日がもう1日来る。夜布団に入るそれだけで同じ日が来るのだ。正確に言えば、その日が終わると朝がくる。

朝→夜(現実) 夜→朝(夢の中でもう1日)

これが生まれてから16年同じことをしている私の夢と現実の世界。

寝るという行為をしたことのないこの身体は、日に日に弱っていることだけは間違いない。

人間眠らないと身体は休まらない。それが当たり前のことだ。


「お嬢様。おはようございます」


これは現実だったのか、夢だったかと少し試行を巡らせる。

あぁこれは現実だったはず


「おはよう、メリ。今日の予定は?」


テキパキと私の身支度を整えるメリを横目に予定を聞く。


「本日は、婚約者の侯爵様との面会があります」


そういえば婚約者いたなとか考える。グラン侯爵は、今年侯爵位を継いだ私より2歳年上の男性だ。グラン侯爵は、私のことを何とも思っていないことを知っている。そしてグラン侯爵の弟が、世界を破滅に導く人間だと言うことを13歳の夢で分かった。同じ日を繰り返すはずが、13歳の誕生日の夢だけは違った。その夢では未来を経験した。グラン侯爵の弟がどんな理由か分からないが、世界を破滅させた。あの世界は、人が泣き喚く阿鼻叫喚だけでなく、人が魔物へと変わり、その魔物が親しい人を喰い殺すという世界だった。

現実になるかは分からない。それでも二度繰り返す世界が本当のことだということを知っている。

私が何をすれば良いか分からない。2度繰り返す世界で、正しい世界だけを現実と全ての人間が覚えている。ただそれだけだ。


「そうですか。では本日は動きやすい髪形でお願いします」

「何故ですか?」

「あまり纏めてしまうと、本日体調が優れないのでまたグラン侯爵様の前で粗相をしてしまうかもしれません」


以前髪を纏め上げ、キッチリとした格好のときにグラン侯爵の前で気絶したのだ。

この気絶は何故か夢の世界では、起こさなかったにも関わらず、先に起きた現実世界が本当の話となっていた。何が正解なのか私にも、分からない世界だということで間違いない。




「ようこそおいで下さいました、グラン侯爵様」

「今日は、気絶するなよ」

「はい。侯爵様に迷惑をかけぬように気をつけます」


侯爵のが少し怪訝な顔をしたような気がするが、口答えしたことに対することだと思うことにした。

テラスでお茶を飲みながら、会話を進める。

いつも1時間程度で侯爵様は帰る。今日もそうだと思っていた。


「侯爵様は、この頃忙しいという話をお聞きしましたが、大丈夫でしょうか?」

「私が婚約者に会う暇がない、甲斐性なしと言いたいのか?」

「えっ?」


始めての言い返しに驚き言い淀んでしまう。


「貴女はいつもそうだ。私のことを思う振りをして私が貴女のことを心配しているのも考えもしない」

「どういう…」

「そのままの意味です」

「ではどうすれば良いと?」


少し怒気をはらんだ言い方となる。


「はぁ。今日はもう帰ります」

「えっ?」


そのままグラン侯爵は、何も言うことなく帰って行く。

そのまま彼と二度と会うことがなくなるとは思いもしなかった。

グラン侯爵は、馬車での帰り道暴漢に襲われ帰らぬ人となった。その知らせが入ったのは、夕方のことだった。

私は、泣くことはなかった。否泣けなかったが正しい。


「お嬢様。明日葬式となるそうです。早めにおやすみ下さいませ」


侍女の言葉に小さく頷くと、早めに床に入る。


目を閉じた瞬間。ふと目から冷たいものが流れた気がしたが、もう一度目を開けることはなかった。


「お嬢様。おはようございます」


また同じ日だった。今回は同じで良かったと涙が零れそうだったが、涙の変わりに小さな咳がこぼれた。


「本日はグラン侯爵様との面会ですが、体調大丈夫でしょうか?いつもよりも具合が悪そうです」


ここで、グラン侯爵との面会を拒否すればグラン侯爵が暴漢に襲われることはないかもしれない。

そう思うと同時に私以外の人は、同じような行動をすることを思い出す。そう考えると、グラン侯爵は、確実に一度屋敷に来る。そのまま帰る方が危険なのだ。


「大丈夫です。せっかくグラン侯爵様がいらっしゃるのですから、少し軽めの格好で負担になるないようにすれば良いかと」

「分かりました。侯爵様も久しぶりにお嬢様に会えるのですから、楽しみにされてるはずですから」

「えっ?」

「えっ?」

「侯爵様は、別に楽しみにしているとは思いませんが?」

「お嬢様?何故そのようなことを」

「態度を見る限りですが」


あの冷たい態度を見て何を勘違いできるのか分からない。


「侯爵様がお嬢様を見る目はとても穏やかで、微笑ましいので…」

「そんな」


そういう目で見られた気は一度もしなかったのに、どういうことだろう。


コンコン


「グラン侯爵様がお目見えです」

「はい」


すぐに身なりを整え応接間へと足を進める。


「兄さんは、言葉が足らないんだよ」

「そうでもない」

「そういうとこだって」


何故か2人分の声に頭に?を浮かべながら、ノックをして部屋に足を踏み入れる。


「お待たせいたしました。グラン侯爵様」


顔をあげるとグラン侯爵とその弟が立っていた。


「急に弟まで押しかけてすまない」

「いえ。どうされたのですか?」

「弟が貴女を見てみたいと言うことを聞かず」

「兄さん!……初めましてグランの弟、シランと言います」

「初めましてシラン様」


シラン様もいたことでいつもよりも話が盛り上がり、前回とは違い2時間後にグラン侯爵様とシラン様は帰って行った。


その日は何も知らせがないまま、私が床につくことになった。


「お嬢様。おはようございます」


いつもと同じセリフのため、どちらが正解になったのか分からない。


「今日は、シラン様の誕生日パーティーに呼ばれたのですよね?早めに準備をしなければ!」


これは、夢が現実になったようだ。


「そうでしたね。早めに準備をしましょう」


夜に向けて準備をしているときだった。その訃報が届いたのは………


「グラン侯爵様が?」


あの時回避したはずなのに、何故?殺された?


「本日のパーティーは中止です。侯爵様の葬式となるそうです」


理由が分からない。

それでも黒いドレスに身を包み侯爵家に向う。侯爵家では、すぐに中に案内される。執事に案内され、侯爵様の下に震える足を叱咤しながら、近づく。侯爵様は、眠っているかのようだ。


「何故兄さんがこんな目にあったと思う?」


いきなりの声かけに、ピクッと反応する。


「何で助けようとしなかった?」


助ける?私はこんなことになっているのを知らなかったのに?


「知らないはずないよね?僕が昨日運命変えたんだから」

「えっ?」

「兄さんがいない世界なんていらないんだ」

「そう言われても私には何も」

「出来なくないよね?だから………」


私の視界は真っ暗になった。


「お嬢様。おはようございます」

「今日は、シラン様のパーティーだったよね?」

「えっ?お嬢様から先に予定を言われるなんて久しぶりですね。そうです!早めに準備しなければ」

「侯爵様の家に今から行きます」

「えっ?」

「出かけの格好でお願い」

「ですが………」


準備を早急に済ませると侯爵家に一報を入れ、侯爵家へ急ぐ。


「急に来るとは、どうしたんだ?シランには、夜に呼ばれていただろう?」


侯爵様の顔を見ると安堵の涙が流れる。生きてた。侯爵様が生きてた。


「シェルリ嬢?」


グラン侯爵様の慌てた顔初めて見た。

グラン侯爵の慌てふためく姿を見てやっと落ち着いた。


「侯爵様?本日出かける予定はありますか?」

「シランの誕生日プレゼントを買いに行く予定です」

「私もご一緒してよろしいでしょうか?」

「シェルリ嬢も?ですが……」


言い淀む姿に、嫌われていたことを思い出す。


「私がご一緒するのが気が向かないのでしたら……」

「そうじゃない!そうじゃないんだ。君の体調のことを言ってる」

「体調?」


思いがけない言葉に、首を傾げる。


「私の体調は大丈夫ですが?」

「なら一緒に行かないか?」

「よろしいのですか?」

「シェルリ嬢さえよければ」

「喜んで!」


私の言葉に柔らかく微笑むグラン侯爵様に、顔が熱くなるのが分かる。


「シェルリ嬢?熱が??」

「いえ。大丈夫です!そういうことではないので」


その後2人でシラン様のプレゼントを選ぶと侯爵家に戻る。侯爵家に戻ると、部屋に案内されパーティーの準備をされる。グラン侯爵様の瞳と同じ海のような澄んだ色のドレスを着た姿が鏡に映る。


「すごい」

「シェルリ嬢。いやシェルリすごく綺麗だ」


後ろでグラン侯爵様が私と同じ揃いの紳士服を着て立っていた。


「グラン侯爵様もとてもカッコイイです」


私の言葉に侯爵様が後ろを向く。また不快な思いをさせてしまったと思ったが、すぐに侯爵様が手を差し伸べてくれる。


「行こうか」

「はい」


シラン様の誕生日パーティーは、豪華だった。しかし何事もなく終わった。



風に当たりたいとテラスに足を向けると先客がいた。


「ちゃんと前を向けたみたいだね」

「シラン様?」

「兄さんがいなくならなかったから良かったよ。兄さんがいなくなったら、世界がどうなるか分からなかったからね」


その笑顔に、ぞっとした。

あの夢を正夢にしないために、私はグラン侯爵様と生き続けないといけない。

世界を進めるために、そして私が生きるために。


この夢と現実がいつまで続くか分からない。


でも夢が現実になった瞬間。


私が少し変わるのが分かった気がした。


どうして繰り返すのか分からない。



それでも



この世界がハメツに進まないための方法を私が見つけないといけない。



シリーズにしても良かったのですが、1日過ぎると夢か現実かどちらが本当の世界になっていくという構成が少し難しくプロット作ってからにしようかと思います。

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