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第5話 港の長老の昔話

今日もパルは、風車をクルクル回転魔法で回していた。

港にあるすごく大きな風車だ。


「パルちゃん。この風車は町で一番でかいから大変だろう。」

「ニコさん。初めて見た時はびっくりしたけど、もうコツを掴んだから全然大丈夫ですよ。」

「はははっ。頼もしいのう。終わったら事務所に寄ってくれ。かみさんのレモネードが冷えてるぞ。」

「わっ。嬉しい!ミラさんのレモネード大好き!」


パルは港の事務所で、港の長老ニコさんとレモネードを飲みながらお話タイムだ。


「パルちゃんの回転魔法を見ていると、亡き王女様を思い出すのう。」

「王女様?」


「随分昔、パルちゃんが生まれた頃かの。北の野蛮な奴らの侵略を回転魔法で食い止め、命をかけて国を守った女神様で国の英雄だ。」


「回転魔法で国を救ったの。」


「王女様は、王が戦死した後、十万の敵を前に戦車エレファスで自ら出陣し、何と雲を回転させたんじゃ。」


「ええっ。そんなこと出来るの。」


「そう。王女様はそれをやったのだ。

その日は暗雲が立ち込めておった。

雲は水の塊。

王女様は、何と小さな小さな水一滴一滴に魔法をかけて、雲を回転させ、竜巻や強風、そして落雷を十万の敵に見舞ってやったのだ。敵は鎧や槍に雷は落ちるは、突風で戦車は倒れるは、馬は逃げ出すはの大混乱。ほうほうのていで逃げ出したそうな。」


「すごい!水の一滴一滴に魔法なんて。」


「だがな、王女様はさすがに体力気力を使い果たし、よろめいたところに何とか生き残った敵が数本の矢を放ったのだ。

その一本が王女様の胸に刺さり、無念の最後となった。」


「王女様は、息を引き取る前にこう言ったそうだ。」

「もはや王の後を継ぐものは誰もいない。これからは、民が力を合わせて国を守るのだ。みんなで良き国を作ってくれ。」



「そして、今の共和国になったのだ。

王制は終わったが、昔を知る国民は、今もみんな王女様に感謝している。

そして永遠に王女様を愛しているのだ。」


「パルちゃんの回転魔法を見ていたら、亡き王女様を少し思い出してしまったわ。」


「すごい王女様だね。水の一滴一滴を回転させ、命をかけて国民を守ったなんて。

ありがとうございます。王女様。」


「そう言えば、王女様はまだ姫様の頃、国内を見て回りこの町にも立ち寄ったらしい。そして、いたくこの最南端の町が気に入ったとか。

暖かい気候、美しい海と小麦畑、暖かい人々に心惹かれて、いつかここに住んでみたいとおっしゃったとか。」


「本当っ!嬉しいな。

王女様もこの町を気に入ってくれたんだね。私もこの町が大好き。」


「おっと。長話になってしまったわ。

暗くなる前に帰さんとシルに叱られるわ。

今日は届いたばかりのレモンを持ってってくれ。採れたてで美味しいぞ。」


「ありがとう。とっても美味しそう。

お母さんもお父さんもレモネード大好き。

ニコさん、素敵なお話も楽しかったです。」


パルはレモンがいっぱい入った袋を背負って家路につく。


「すごいなあ、王女様。

雲の水一滴一滴に魔法をかけるなんて。

今の私じゃ全然無理だなぁ。

まあ、一歩ずつ頑張るしかないか。」


パルは、お母さんにレモンを早く見せたくて、小走りで帰ったのだった。










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