第25話 テオからの報告
「なな、なんと、パール姫がすでに出生の秘密を知っているだと!」
「はい。今回の北の蛮族の襲来に際して、姫はエレファスに触れました。
そこで、エレファスを通して全てを知ったようです。
まあ、ある程度予感はあったようですが。
回転魔法の使い手など、この世界に滅多におりませんし。」
「そ、それで、姫様の反応は、ひどく動揺などしておらんか?」
「それが、、特に。
ああ、そうなのか、、。って感じで、極めて冷静に受け止めていらっしゃいます。
王女様を深く敬愛しながら、育ててくれた父母も変わらず愛し続けると。」
テオは急ぎ都に戻り、祖父と父に、ここ一連の出来事を詳しく報告していた。
祖父の体調は快方に向かっており、ソファーに座って話している。
「それで、パール姫はこれからどうしたいと?」
「結論から言うと、何もしないで良いとのことです。
秘密を知っても、このまま変わらず、育ててくれた父母の娘として、あの町で暮らすとのことです。」
「田舎の貧乏暮らしのままで良いと、、。」
「はい、そうしたいとの話です。
都から迎えが来ても、絶対に行かないと仰っていました。
もし無理やり連れていくなら、回転魔法でぶっ飛ばすとまで、まあ、これは多分冗談だと思いますが。」
「それから、何があっても戦争に魔法は絶対に使わないと。
ただし、戦争をしない為、止める為、平和の為なら、回転魔法で共和国に協力するお気持はあるようです。」
「平和の為に回転魔法を使う、、そんなことが出来ると?
今まで聞いたことないぞ。」
「パール姫は、敵とて同じ人間、必ずできるはずだと。
その為なら、エレファスに乗る覚悟もあるようです。」
「エレファスは、港で大爆発をして粉々になり、今は存在しないのでは。」
「いえ、今、バーリが残骸を集め、エレファスの復活を準備しています。
バーリ曰く、どうも新しいエレファスは空を飛べるらしいです。」
「空を飛ぶ、、、だと。
バーリは、本当にそんなことが出来ると?」
「はい、彼には自信があるようです。
まあ、それもパール姫の回転魔法あっての話ですが。」
「父上、何とも、予想を超えた展開ですが、パール姫の意向に反して都にお連れするのは無理かと。」
「確かに、今パール姫の存在を知っているのは、わが家とパール姫を育てた父母、親友とバーリのみ。
いろいろと世話になっている山の長老も、そこまでのことは知らん。
存在が公にならぬ方が、姫の安全に繋がるのは確かなこと。
それに姫の存在を知れば、その魔法を戦争に、、等と言い出す都合のいい輩もいるやも知れぬ。
そして、それは姫の気持ちに最も相反すること。」
「エレファスに乗ったパール姫を見て、王女様の面影を感じた者もいるようだが。」
「それはただの噂話。
王女様に想いをはせる者達の夢、願いとして、噂はただの噂として、いずれ消えゆくことでしょう。
問題にはならないかと。」
「話はわかった!
テオ、いろいろご苦労だった。
準備を始める前にその話を聞けて本当に良かった。
パール姫を、王家の成人である16歳になる春に、都へお迎えする話は取りやめる。
迎えは出さん。
パール姫の高速回転魔法で、遥か彼方にぶっ飛ばされてはかなわんしな。」
「はい!それが良いかと。」
「しかし、姫様、誠に欲の無いお方よ。
都に戻れば、豪華な屋敷で、きらびやかで優雅な暮らしも出来ように。
まあ、王女様もそんな方だった。
飾らず、気さくで、優しく、しかして気高く美しく、細かいことは気にしない方だった。
王女様によく似ておられるわ。」
「父上、王家のあざの話は?」
「わしには、真実がどうなのか皆目分からんのだ。
ただの伝聞に過ぎぬのかも知れぬ。
ただ、遠い昔、大きく激しい戦いで、かつてない大魔法をふるう王の勇姿にそれが鮮やかに現れたと。
そして、最初にそれがうっすらと姿を現したのが16の時なのだと。
しかし、王様や王女様の姿にそれを見た者は誰もおらん。
つまりは、それが真実か、どんなものなのか誰も知らんのだ。
パール姫にそれが現れるかどうか誰も分からない。
いずれにしても、ただの田舎娘として平和に暮らす分には、問題になることではなかろう。」
「話は分かった。テオ、引き続きパール姫の学友として、姫をその命をかけてお守りするのだ。
助けが必要なら、すぐに連絡せよ。
わが鷹を使ってな。」
「しかし、わしも体が許せば、今のパール姫に一目お会いしたいものだが、、。
姫をあの町にお連れするため、ひたすら暗い夜道を、馬車を引いて走り続けてからもう16年か。
あの時はとにかく必死じゃった。
あの夫婦にも、頭を下げて礼をせねばならんしな。
年月の過ぎるのは何と早いことか。」
「父上、お元気になれば、一人の旅人としてあの町へ再び訪れ、美しきパール姫にお会いする事が出来るやも知れません。」
「そうだな。
この人生の終わりに、姫様にお会いする事ができたら、、、何と素晴らしいことか。
あの美しい海、黄金の麦畑、山裾に広がるぶどう畑、暖かい気候、心優しき人々。
王女様がこよなく愛した町でな。」




