第18話 王女と王妃
「エレファス、しかし人の世とは面倒なものだな。」
「何かお困りですか、王女様。」
「まさしくその王女様よ。
エレファス、我が王女と呼ばれることに疑問はないか?」
「いえ特に。バーリもそうお呼びしていましたので。」
「すまぬ、説明が足りなかったな。
実はそこが問題なのだ。
我は前の王の娘ではない。
今の王の嫁、つまり正しくは王妃なのだ。」
「ではどうして皆が王女様と呼ぶのですか。」
「それが面倒な話なのだ。
戦乱の世では、王家は代々魔法の力で国を守ってきた。
しかし、平和な世ではその力はほとんど必要ない。
現在の王家には魔法の使い手はいないが、今までは誰も問題にしなかった。
立派な治世をしていたしな。
昔は魔法を使える王はいたが、必要ないので継承がされなかったのだ。
ところが、ここに来て北の蛮族どもが我が国を攻撃してきた。
するとな、やはり王家には魔法で国を守る力が必要だ、魔法の才を持つ家系が本来の王にふさわしいとか一部の者が言い出したのだ。
そしてついには、我のことを勝手に王女と呼び始めた。
最初は一握りの者だけだったが、今では皆がそう呼ぶ、王女様とな。
しかし、それではおかしなことになってしまう。
別の国の王女を迎えたなら分からぬでもないが。」
「それは困ったことに。
それで、王様はどうお考えなのでしょうか。」
「そう、まさしくそれよ。
先日王に聞いてみた、そのことについてどう思うかとな。
するとな、エレファスどう言ったと思う。」
「うーん、分かりません。」
「それがな、こう答えたのだ。
そんな小さな事どうでも良い。
好きなようにさせておけ。
お前がいてくれればそれで良い。
それに、予も好きだぞ、その呼び方。
ふふ、我が麗しの王女様。心から愛している。
とな。」
「さすがは王様、完璧なお答え。
器の大きさとやさしいお人柄が伝わってきます。」
「ははは、困り事ではなく、のろけ話になったな。
よし、そこの路地を右に。
しましまのかわいい奴に注意してな。」
〜パオーン〜
エレファスは、そんな日がずっと続くことをただ願っていたのだった。




