第16話 エレファスの作戦
パルはエレファスの言葉を伝え終わると、ふらふらと木の台に倒れるようにもたれかかった。
「パルちゃん。」
チルがあわてて駆け寄りパルを支えた。
テオが叫んだ。
「パルが大変だ!」
その声を聞き、あわててバーリが外のはしごを上り上がってきた。父ハンスとニコが続く。
「パル、父さんだ、パル、大丈夫か?」
ハンスが愛する娘を支えた。
「お父さん、大丈夫、でもちょっと疲れた。
眠いよ。お父さん。」
「バーリ殿、娘は大丈夫でしょうか?」
「急激な魔力の消耗による体力低下、つまりは疲労だ。
心配いらぬ。しばらく休ませてあげてくれ。」
その時、突然パルが目を閉じたまま口を開いた。
「バーリ、お前に伝えることがある。」
「お前、エレファスか。」
「初めてだな。こうやって話すのは。
この子にはすまないが、声を借りて話す。」
「最後って、お前何を考えてるんだ。」
「さすがは我が友。察しがいいな。
俺の魔力計を見ろ。とうに限界を超えている。」
「お前、魔力が最大容量を超えているぞ。」
「分かっている。
俺はこれから海に入り奴らを待つ。
そして明日朝、奴らが港に入った頃合いで全解放する。」
「そんなことをしたら、お前大爆発するぞ。」
「分かっている。
いろいろ考えたが、それしかないんだ。
町のみんなを遠くに避難させてくれ。
爆発の後、奴らの生き残りが陸に上がってくるかも知れん。
それは兵士達に頼みたい。
槍と縄をたくさん用意して、そいつらをとっ捕まえてくれ。
バーリ、せっかく用意してくれた新しい装備が無駄になって悪かったな。
でも俺は、王女様が素晴らしいと言ってくれた、このままの姿で旅立ちたいんだ。
それから町のみんな、港を壊すことになってすまない。
他に方法が無いんだ。」
「さあ、みんなを遠く高いところへ。
かつてない大波が港を襲うだろう。
それから、この優しく、懐かしい魔力の波動をもつ美しい娘。
これ以上言うまい。
心から感謝している。
おかげで、思う存分暴れられる。
彼女には、俺からプレゼントをしておいた。
気に入ってくれればいいが。
王女様の魔力回路を少しばかりな。
ああ、これで、やっと王女様にまたお仕えすることができる。
ふっ、素晴らしい土産話もあるしな。
我が友バーリ、お別れだ。
お前が俺に与えてくれた全てに感謝している。」
「エレファス、俺を一緒に、、」
「ははっ、足手まといにしかならん。
お前など、空気が無くては朝までもたん。
まだまだ働いてくれ。
さあ、ハッチから外へ。
下の扉を開けておく。
みんなに感謝を、この国と国民に感謝を。
この美しい世界に感謝を。
みんなの幸せを祈っている。」
全員がエレファスの外に出ると、扉が閉まりその痕跡も消えていった。
エレファスの外で待っていたシルが、涙でぐしゃぐしゃになりながら娘を抱きしめた。
「お母さん。眠いよ、家に帰りたい。」
「そうだね。帰ってゆっくりお眠り。」
〜パオーン〜パオーン〜
やさしく、少し寂しけな声が別れを告げるかのように港にただ響いていた。




